第104話 指名依頼
俺とマリスは村を出た後、ガラルドの町に戻りギルドに報告した。村長からは分割支払いを承諾する旨を聞いたことも一緒に伝える。
「ご苦労だったな。しかしラミアが進化したという話は興味深いな」
「いやいや! 大変なことですよ! ただでさえ厄介なラミアが進化したなんてすぐに本部に伝えるべき案件です!」
話を聞いたギルドマスターが感心した素振りを見せていたが、隣で聞いていた受付嬢は顔色が変わり随分と慌てていた。二人の温度差が激しいな。
「えっと本部って何?」
話を聞いていたマリスが疑問を口にした。受付嬢が言っていたワードが気になったのだろう。
「冒険者ギルドには元締めとなる本部があるんだよ。ここは支部だからな」
ギルドマスターがマリスの疑問に答えた。確かに冒険者ギルドは他の町にもあったからな。それなりに巨大な組織だろうし総括する大元がいてもおかしくないだろう。
「へぇ、そうなんだね。その本部はどこにあるの?」
「本拠地は俺にもわからん」
「え? それなのにどうやって連絡を取るの?」
マリスは好奇心が旺盛なようだな。ギルドマスターが質問に答えるが逆に疑問が増えたようだ。
「本拠地は秘密にされているが王都には拠点の一つがある。本部への連絡はそこを通す形なんだよ」
「……何かやけにまどろっこしく感じるね」
マリスが頭を押さえながら考えを言った。確かに手順としては面倒にも思えるだろう。
「リョウガはどう思う?」
「冒険者ギルドみたいな組織なら本拠地を隠すのは仕方ないと言えるだろう。魔物や魔獣討伐だけでなく盗賊退治なんかもやっているぐらいだ。恨みを抱いている連中も多い。そういう連中に知られないよう用心するに越したことはないだろうからな」
ギルドマスターに聞かれたから思ったままを答えた。盗賊を例に出したが他にも敵は多いだろうからな。
「そのとおりだ。だがその弊害で本部とのやり取りには時間が掛かる。だからこそ支部がある程度しっかりしてないといけないわけだ。というわけで敢えて今回の件は報告しなくていいだろう」
「いいわけないでしょ! 寧ろ時間が掛かるからこそ早く手続きしてください!」
どうやら説明のドサクサに紛れて今回の件は支部だけの処理で済まそうとしたようだ。まぁそうは問屋が卸さなかったようだが。
「やれやれ事務仕事は苦手なんだがな。それはそうとしてラミアの件は村に調査隊を送るから報酬はそれが終わってからに成るがいいか?」
「問題ない」
「私も大丈夫よ」
しっかり成果を確認してから報酬が入るのはこれまで通りだからな。マリスも納得しているようだ。
「そうか、まぁできるだけ早く済むようにするさ。それとだ――一仕事終わったばかりのところ悪いが、実は二人に指名依頼が入っているんだ。それを受ける気はあるか?」
ラミアの件が落ち着いたところでギルドマスターが次の依頼について話してきた。しかし指名依頼か。わざわざ俺たちを指名するような依頼者がいるんだな――




