第100話 進化したラミアの力
「「さぁさぁどうしたんだい? さっきまでの威勢が感じられないよ!」」
二体に増えたラミアが休むことなく攻撃を繰り出してきた。元が一体だっただけに互いの連携はよく取れている。もしかしたら思考も共有しているのかもしれないな。
ラミアの言うように今は守りに集中しこいつらの動きを観察していた。パワーもスピードも確かに上がっていたが、やはり二体になると一体だった時に比べたらそれぞれの力は分散されてしまっている。
それでもそれぞれが進化前のラミアより能力が上なのは確かだ。進化後の成長がそれだけ著しいという事だろう。
とりあえず、一つ試してみるか。俺は攻撃の一瞬の隙をついて回し蹴りを放った。二体のラミアの胴体が両断され地面に転がった。
「くっ! こいつまだこんなに力が!」
「だけど無駄だよ!」
両断されたラミアの上半身から下半身が生えてきた。一方で下半身には変化がない。
「何だ? 今度は四つ子になるかと思ったがしないのか?」
「……数だけ増やせばいいってもんじゃないからね」
挑発したつもりだがラミアは意外と冷静に答えてきたな。ただこれでハッキリした。やはり数を増やせばそれぞれの力は弱まるのだろう。
それを理解しているからこそこれ以上数を増やすつもりはないってことか。
「私らの数は増えないけどねぇ面白いのを見せてやるよ」
俺がそう考えているともう一体のラミアが指をパチンッと鳴らした。すると残っていた二つの下半身がそれぞれ大蛇へと姿を変え俺に襲いかかってきた。
「言うほど面白くもない芸だな」
大蛇の動きはそこらで徘徊している獣と変わらない。対処するのも難しくはなかった。
二匹の大蛇の頭を掴み潰す。それで終わりだ。
「こんな小細工を見せて何がしたかったんだ?」
「フンッ、お前は私たちを舐めすぎだね」
ラミアが答えると同時に頭を潰したはずの大蛇が俺の体に巻き付いてきた。二匹の大蛇がグイグイと俺の体を締めつけてくる。
「そのまま全身の骨を砕いてしまいな!」
「それは無理だな」
大蛇に命じるラミアだが、力を込めて締めつけてきた大蛇を千切ってやった。俺からすればこの程度ロープに縛られているのと大して変わらない。
「チッ、可愛げのない餌だねぇ」
言ってラミアが顔を歪めた。やれやれ。俺はこいつらの中では腹を満たす餌確定ってわけか。しかし――千切られた筈の大蛇が再びつなぎ合わさり元の姿に戻ろうとしていた。
やはり、こいつら再生力が極端に上がっているな。ただ再生するだけではなく千切れた部分を大蛇に変えたりも出来るようだ。中々に多才だな。
「色々と試してみるか」
一つ思いつき、俺は息を大きく吸い込み大きく飛び退いた。
「「逃げる気かい!」」
俺の行為を見てラミアたちが量目を見開いて叫んだ。だが当然逃げるつもりなど毛頭ない。俺は大蛇とラミアをまとめて視界に収め口から炎を吐き出した。巨大な炎が大蛇とラミアを包み込む。
「「グウゥウゥウ! こんな真似まで出来るなんてねぇ!」」
ラミアの声が揃った。炎の中で大蛇はのたうち回っている。その内に黒く変色し大蛇は炭化していくがラミアはそうはいかなかった。
「鬱陶しい炎だね!」
今度はラミアが変色した息を吐き出した。一瞬にして紫煙があたりを包み込む。毒の息か――




