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転生悪魔の異世界革命~上級悪魔に転生した俺は、全てを憎み世界を破壊する~  作者: みなもと十華@書籍&コミック発売中


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第5話 淫乱

 王都デスザガートにあるアスモデウス伯爵家の邸宅。


 豪華な彫刻と精工なガラス細工に彩られているが、寝室は落ち着いた雰囲気で住みやすさを重視した造りになっている。


 地方に領地を持つアスモデウス伯爵家は、領主である父親が城で地方を治めており、アベルと数人の使用人だけが王都の邸宅に住んでいた。



 アベルが部屋でくつろいでいると、専属メイドのローラがやってきた。


「アベル様、お呼びでしょうか?」


 このローラというメイド。アベルの命令には何であっても絶対服従するようにと、伯爵家から仰せつかっている。

 つまり、そういうことだ。


 アベルはローラが苦手だった。

 子供の頃から世話をしてくれており、性格も申し分ない。仕事もきちんとこなしてくれる。

 ただ、強烈に女を感じさせる部分だけが苦手なのだ。


(くっ、あの父親め。余計なことをして……)


 ここでアベルは少しだけ試すようなことをする。


「ローラ、裸になってこっちに来るんだ」

「は、はい……」


 ローラは静かに服を脱ぎ始める。ずり落ちたメイド服から見える肩が、たまらなく色っぽい。


「い、いや待て、冗談だ。悪かった……」

「えっ……は、はい」


 ローラはホッとした表情をして、しなやかな体を包んでいるメイド服を整える。


 貴族の屋敷の男に専属メイドとして雇われるということは、往々にして夜伽よとぎの奉仕まで求められるものなのだ。非道な地方領主の中には、若い娘を集めてきては奴隷のように扱ったりしている者も多いと聞く。


 だが、アベルはローラに手を出してはいなかった。


 実のところ、彼は前世のイジメや女子から馬鹿にされたトラウマから、女性に多少の苦手意識があるのだ。

 まだアリサのような屈託のないタイプなら少しは話やすいのだが、ローラのような強烈に女を感じさせるタイプは苦手である。


 この専属メイド、眉目秀麗で品行方正に見えるのだが、アベルにとっては苦手意識が勝ってしまう。


 顔も立ち振る舞いも清楚なはずなのに、体の各パーツも仕草も声も全てが淫らに見えてしかたがないのだ。


 先ずは声。


(清楚で落ち着いていて良く通る声なのだが、まるで成人向け音声作品で、淫らなお姉さんが耳元で囁くような感じなのだ。あまりにも色っぽくて体の芯がゾクゾクするようなエロボイスで話すから困る)


 次に目。


(本当に清楚で優しそうな目をしているのに、何故か時々とても淫らで誘っているように見えて仕方がない。長いまつげが影のように伏し目がちに見え、まるで成人向け漫画の淫らな女教師キャラのような印象を人に与える)


 続けて眉。


(普段は美しい曲線を描く眉が、たまに困り眉のように淫らな表情になるのだ。淫具でも装着しているのかと勘違いするくらいに)


 そしてくちびる。


(少しだけ厚くポテッと柔らかそうで、綺麗な桃色をしている。まるで成人向け作品のセクシーな人妻キャラのようだ。まるでアレを舐るような、淫らな感じがしてどうしようもない)


 更にうなじ。


(普段はモブキャップで髪を上げており、白くて艶めかしいうなじがチラチラと見えるのだ。もはやそれは乙女の絶対聖域を惜しげも無く公開しているようなものである。たまに暑い日は、うっすらと汗をかいていたりして、もう完全に誘っているとしか思えない)


 最後に仕草。


(全ての動作が流麗で気品があり、礼儀正しく清楚なはずなのだが、もう語るまでも無く全ての動きがエロいのだ。荷物を持つ時にあげる吐息など、まさに行為中のそれと同じである)


 とにかくこのメイド、アベルにとってはエロの権化のような淫らさで苦手意識があるのだ。


 こんなエロくて意味深で美しいメイドに、四六時中世話をされ、何でも命令を聞くと言われているのだ。彼の精神的疲労が限界になってしまうのも仕方がない。



「アベル様……」


 主人がが黙ってしまったのを不安になったのか、ローラが話しかける。


「くっ、俺はどうしてしまったんだ。ローラの色香に惑わされるとは……」

「えっ、あの、アベル様?」

「あ、ああ、そうだった。明日の用意で……」


 アベルはいくつか用件を告げて、下がって休ませることにした。


「今日はもういいから、部屋に戻ってゆっくり休んでくれ」

「はい、アベル様、おやすみなさいませ」


 部屋を出て行こうとするローラの後ろ姿だが、尻やウエストのラインがメイド服にクッキリと浮かんでいる。

 そんな、完全に誘っているかのようなローラの後ろ姿にアベルは声をかけた。


「ローラ、もし俺が悪逆非道な伯爵子息だったらどうするつもりだったんだ?」


 最初不思議な顔をしたローラは、身なりを正し最高の笑顔を向けながら言う。


「アベル様は、とてもお優しい方です」


 もう一度だけ頭を下げてから部屋を出て行った。

 バタンッ――


「俺が優しい……」


 そう言ってから黙ったアベルが考える。


(そんなはずはない。確かに前世の俺は、優しく真面目で親切であろうとした。だが、その結果がアレだ!)


 アベルの手に力が入り、爪が食い込んだ。


(俺は悟ったのだ! 優しかったり真面目なヤツは、悪いヤツらに付け入られ利用され搾取されるのだ! 散々利用されて使い捨てにされるのがオチだ! 俺は二度と同じ失敗はしない! 人の本性は悪だ! 俺は必ず上り詰めてやる! そして、クズ共を叩き潰してから人類を滅亡だ!)



 ◆ ◇ ◆



 翌日――――


 校外教練を行う日になった。チームに分かれて協力し、実戦さながらに戦術を駆使して競い合う訓練だ。


 いつものように淫らなメイドと一緒に登校しているアベルだが、静かに斜め後ろに控えているローラが気になってしかたがない。


(くそっ! 今日も一段と淫らだな! こんな清純そうな顔をしていながら、淫ら極まりない仕草や表情をするとは反則だ。清楚で清純……いや、違う! もう、姿かたちまで淫らそのものじゃないか! 俺は、一体どうすれば良いんだ……)


 今日も今日とて、淫らな専属メイドのことばかり考えていた。


「アベル様、どうかなさいましたか?」

「い、いや、何でもない」


(ううっ、ダメだ……。何て綺麗でよく通る美しい声なんだ。朝からそんな淫靡いんびな声を聞かされたら、校外教練に影響が出てしまうではないか! どうしてこの淫らなメイドは、そんなに俺を惑わせるんだ!)


 頭を抱えながら歩くアベルのもとに、アリサがやってきて肩を叩いた。


「アベル、おはようっす!」


 馴れ馴れしくアベルの顔を覗き込み、肩をペチペチと叩いている。気さくな性格をしているのだろう。


「ああ、おはよう。アリサは今日も元気だな」

「もちろんっす! 今日の校外教練は一緒に頑張るっすよ!」


 彼女が喋る度に、少し強調された制服の胸が揺れる。わざとではないのだろうが、彼女の距離が近くて、アベルに胸が当たりそうだ。


 ピキっ!


「ん? 何か後ろから凄まじい殺気がしたような?」


 アベルが振り返ると、淫らなメイドが静かに控えているだけだ。


「ん、気のせいか?」

「アベル、どうかしたっすか?」

「いや、何でもない」


 校門が見えたところで、アベルは振り返りローラの方を向いた。


「ローラ、もうここで良いから」

「はい、畏まりました」


 淫らなメイドは来た道を戻って行く。



 ◆ ◇ ◆



「これから校外教練を行う! それぞれ六人のチームを作り、外に整列して待機せよ!」

「「「はい!」」」


 ライラ教官の一声でチーム分けが始まった。このチーム分けで勝敗が決まるようなものだ。

 能力が高く連携も上手くいくチームを作らねばならない。


「アベル、一緒に組もうか」


 ニコラがビリーを連れアベルと合流した。二人は実力も申し分ない。これで男子は決まりだろう。


「私も入れて欲しいっす」


 アリサが女子をもう一人連れて近づいてきた。


「もしよろしければ、私も入れてくださらないかしら」


 アリサと一緒なのは、エレアノーラ・パイモンという女だ。名門パイモン家の伯爵令嬢で、名前にパイが付いているからかどうかは知らないが、胸が大きく魅力的な美女である。


「あと一人か……」


 アベルがそう呟きながら講堂を見回す。


 クラス中が、自分たちのチームに強い仲間を引き入れようと奔走している時、一人柱の陰に隠れて皆を見つめる少女がいた。

 サタナキアである。


「ううっ、何て残酷なんじゃ。クラスでチームを作れとか……コミュ障のワシには拷問のようじゃ。こんなの最後に一人あぶれて、教官に『誰かサタナキアちゃんを入れてあげて』とか『仕方ないから、先生と一緒に組むしかないか』とか屈辱的なことを言われるに決まっておる」


 そんなサタナキアをライラ教官が見つけ、近寄っていく。


「王女殿下、どうかなさいましたか?」

「ひゃん!」

「殿下、もしよろしければ、私と同じチームということで特別待遇と致しますが……」

「い、いや、大丈夫じゃ! ワシは……ほれ、あそこの者と組む予定じゃ!」


 想像通り教官と組まされそうになったサタナキアは、咄嗟にアベルのチームを指差してしまう。


「分かりました。お任せください」


 何かを勝手に察したライラ教官は、アベルのもとに向かう。


「おい、アベル候補生! 王女殿下が直々に貴様のチームを御指名だ! 無礼の無いように心がけろ!」

「はっ!」


 返事はしたものの、アベルには何が何やら分からない。


(何だ? どういう事だ? 王女が俺のチームを指名だと? もしかして、『石田三成三献茶』作戦が功を奏したのか!?)


「王女殿下直々の御指名、恐悦至極にございます」

「う、うむ、良きに計らえなのじゃ」


 アベルが恭しく挨拶すると、サタナキアもそれに合わせて時代劇っぽい喋りになる。しかし、内心ガクブルと緊張でどうにかなってしまいそうだった。


(ううう……選りに選って、何でこのお茶男と一緒になってしまうのじゃ……。また、腹がパンパンになるまで飲まされそうで怖いのじゃ。でも……向こうで威張っている怖い男のチームよりは、少しマシかもしれないのじゃ)


 サタナキアは、威張っているゲリベンストのチームとアベルを見比べながら、ホッと胸を撫でおろした。


 それぞれが様々な思惑を持ちながら、波乱の校外教練が始まろうとしていた――――



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