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妹勇者は魔王よりも兄に会いたい!  作者: 狼猫 ゆ狐
妹勇者はミランの風を感じます
27/29

傍観している者

 前回までのあらすじー!


 今代の勇者として選ばれたクテイ。手の甲に勇者紋が現れるのだが、それを国に申し出ることはなかった。旅に出てしまった兄を探す旅に出ることにしたのだ。


 そうして自分の身分を隠した旅をしていると、行き倒れのルキリヤに出会い、何だかんだで一緒に旅をすることになった。

 エルフと狼の獣人のハーフで才能に満ち溢れているのに、本を読んだりすることにはまり、ろくに修行をしてこなかったために弱いルキリヤ。クテイに修行をつけてもらいながら旅をする。

 早速出発。二人での最初の目的地は港町ミランだ!


 そうして港町ミランに着く。そこでギルドの受付嬢の猫の獣人のシャルやら、Sランク冒険者のグランと出会う。

 そしてルキリヤも、風魔法の風刃を覚えて順調に強くなり始め、順風満帆かと思いきや、港で謎の魔物が暴れているという事件が起こる。

 駆けつけると、そこにはグランが植物型の魔物を足止めしていた。二人も加わり三人で戦うも、異常な再生力に歯噛みする。遅れてやって来たシャルの情報により、光魔法や聖魔法が弱点と判明。クテイが勇者の力を使い、神剣を召喚! さあ、ここからだ!


「な、なによ……アレ……!」


 遥か上空にて大地を見下ろす人影が一つ。

 悪魔由来の心優しき堕天使ことティルエさんだ。

 漆黒の天使の羽を広げ、(みずか)らの大きな胸の前で腕を組み、滞空している。


 羽ばたいている様子が見えないことから、魔法か何かの補助をしているのかもしれない。


 見ている先には神々しい剣を見事な剣技で(あやつ)り、デビルプラントを切り裂いていくクテイがいる。


「…………なんか困ってそうだから、助けてあげようと思ったら、完全に出るタイミングを無くしちゃったじゃない……!」


 どうやら偶然見つけた大事件に、助けに入ろうと思ったが、クテイが活躍してしまって出られなくなってしまったようだ。


「……まあ、怪我がなさそうでなによりよね……。

 本当によかった……」


 安心したように、ホッと息を吐く。

 この悪魔、マジ天使である。


「にしても、凄いわね。あの剣術の腕もそうだけど、あの綺麗な剣の方も……」


 ティルエの視線はクテイの持つ剣に向けられている。

 だが直ぐに目線をきり、少し離れたところを見る。


「いや、本当に凄いのは、つい最近まで弱かったのに、急成長しているルキリヤって子の方ね……」


 ルキリヤを眺めながら、思わず呟く。


 すると、



「……っ!!」 



 ティルエが何かを感じ取ったようで、即座に組んでいた腕を外し、自分の周囲を油断なく確認する。


 こんな所で気配を感じるのならば、それは空を飛ぶ魔物や、自分を狙ってくる敵の可能性が高いからだ。

 

「こんな所で、一体誰なのよ?」

 

 忙しなく視線をさ迷わせていたが、遂にその視線が一点に注がれる。


「……はと?」


 そこにいたのは鳩であった。ティルエと同じように翼を広げて空中で停止している。

 しかし、ただの鳩ではない。あまりにもリアルなために分かりづらいが、その体は紙でできている。



「驚かせてしまったかな? 申し訳ないね」

「喋ったぁ!?」


 紙でできた鳩が、口をパクパクさせると、男の声が聞こえてきた。


「おや? また驚かせてしまったようだね」


「そ、そりゃあ驚くわよ……」


 ティルエは警戒した相手が鳩のような使い魔で、しかも喋り、敵対の意思が無いようなので警戒を少しだけ解く。


 すると、鳩はまた口をパクパクさせる。

 

「これは俺の式神だ。まあ、お手製の使い魔みたいなものだよ」


「そ、そうなの……?」


 ティルエは式神を知らなかった。  

 だが、実際に目の前にいるのだから、そういうものだと割りきったようだ。


「で? アンタはどちら様かしら?」


 ティルエはまた腕を組み直し、フンと、傲岸な態度で鼻をならす。


「ええっとだね、あの子の関係者みたいなものだよ」


 鳩はチラリと下を見る。

 つられてティルエも下を見る。


「……金髪の方かしら?」


 もう一度言うが、ここは遥か上空である。

 ここから地上を傍観するなど、出来る方がおかしいのだ。

 それが出来る二人……いや、一人と一羽は、地上を見る。


「そうだよ。あの超絶可愛らくて、超絶強い、世界で一番魅力的な女の子の方だ!」


 鳩は心なしか自慢気に胸を張り、捲し立てるように言う。


「……アンタ、変態?」

「何を言う! 断じて違うからな!?」


 ティルエは鳩に少し引いている。

 クテイの話になったらいきなりテンションが上がったのだ。無理もない。


「そもそも俺はあの子の兄だからね」


「あら? そうなの?」


「そうだ。だから、私は変態ではない」


「いや、何がだからなのか分からないのだけど……」


「それを言ったら君だって悪魔らしくないだろ?」

「悪魔が善行したっていいじゃない!」


 間髪いれずに答えるティルエ。

 最早脊髄反射だ。言われなれているのだろうか?


「んー、止めようか、この話は。なんとなく不毛だ」


「そうね。……ところで、なんでアンタこんなとこにいんのよ? 使い魔とはいえ」


「ああ、それはクテイのことをちょいちょい見ているから……」

「ストーカー!?」

「いや、違うから! それを言ったら君なんてさっきからクテイ達が怪我をしないか心配そうにチラチラ見ているじゃないか! 悪魔なのに!」

「悪魔だって心配くらいするわよ! それにあたしは正しくは堕天使よ!」


「「…………」」


 二人は言い合うと、暫し黙り、

 

 

「「…………この話、やめよう(やめましょう)」」

 

 息ぴったりに話を切り上げる。

 

「今はあの子達を見守るべきだな」


「そうね……ところで、なんでアンタ使い魔で見てるのよ? 自分で来ればいいのに」


 ティルエは首を捻る。

 

「ああ……実は事情があってな。あの子にはまだ会わない方がいいんだよ」


「よくわからないわ」


「……そうか」


 そっちから聞いてきたのにっ、と鳩は拗ねている素振(そぶ)りを見せる。


「あら! 見て見て! あのクテイって子、動きがありそうよ」


「おお、マジか。見なければ」


 そうして、クテイ達の知らないところで、知り合い同士の邂逅があった。


 二人は固唾を飲んで戦いを見つめる。





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