クテイによる魔法授業
「ということで、授業、する、よ?」
クテイは適当に拾った小枝をブンブン振りながら言う。
教師の持つ棒のつもりらしい。
「はい。クテイさん!」
ルキリヤは元気よく返事をする。
「ノォ! 今の私は先生……!」
クテイは棒をふりふり。
「……クテイ先生?」
「……クゥちゃん先生でも可」
にやりと笑って言う。
「……クテイ先生。授業を」
ルキリヤにしては珍しく表情を変えずに毅然と言う。
「……むぅ。まあ、いい。では、始めるよ」
クテイは少し唸った後に授業を始める。
「まずそもそも、略して、まずそも。魔法は何だと思う?」
「魔法、ですか? んー、そうですね、体の魔力を自分の意思で操って性質を与え、体外に放出することですかね」
クテイはすらすらと答える。
「ん。本の知識そのまんまだけど、まあ、いい。
それで、魔力にどういう性質を与えられるかは人によって違う。それが魔法適正のこと」
「魔法適正ですね。本で読みました」
ドヤァ
「例えば?」
クテイ先生は生意気な生徒に問う。
「えーっと、その人が魔力を火に変質させたり、水に変質させたり出来るかどうか、みたいなものですかね?」
ルキリヤは記憶を探る。
「ギリギリ及第点、ならず。大事なの言ってない」
クテイは棒をちょいちょいっと振る。
「ダメだし!? しかも及第点ならず!?」
釈然としないらしい。
「ん。魔法ってそれだけじゃない。例えば……」
そこからクテイの講義は暫く続いた。
***************
「――――ということで、かの宮廷魔術師グロスタはそう、土魔法と原子魔法の違いを定義付けして……」
かれこれ三十分以上この話は続いている。
ルキリヤの目は死んでいる。
「あの……」
恐る恐るルキリヤは申し立てる。
「―――基本属性魔法と重力魔法とは密接なかんけ…………ん?」
クテイの怒濤の言葉に区切りがつく。
「その話、まだ続きます……?」
死んだ目のルキリヤが聞くと、
「ん。まだ三百分の一位」
「!?!?」
「ってのは冗談だけど」
ペロッと舌を出すクテイ。
「つまり言いたいのは、魔法って自由性が高いって、ことなの」
クテイはここ三十分をまとめる。
「嘘!? そんなこと言ってたの!?」
ルキリヤは驚愕する。
理想魔法量子学うんぬんかんぬんは何だったの!? と言わんばかりだ。
ルキリヤ、実は頭がいい。クテイの話をけっこう理解していたりする。
「ん。すべてはそこに立ち返る」
クテイは目を細める。
「クテイさんって実は魔法オタク……?」
ルキリヤの呟きはクテイには届かなかった。
「それで結局、ルキリヤの適正は、何?」
クテイがこてんっと首を傾げる。
「さあ?」
ルキリヤはさらっと言う。
「……知らない、の?」
「ええまあ」
暫し沈黙。
「……なんで?」
「なんででしょう?」
またもや沈黙。
「いや、なんか魔法適正調べるより本読んでたかったんですよね。昔は」
耐えきれなくなったルキリヤが告げる。
「……気にならないの?」
「気にならかったですね。今は気になります」
「そか」
クテイは持っていた枝を脇に挟み、異次元から眼鏡を取り出す。
「これは特殊な魔道具。適正、わかる」
そう言い、クテイは眼鏡をかける。
「……」
ジーっとクテイはルキリヤのことを見る。
「……あの」
「ん。黙ってて」
「はい……」
またジーっと見つめる。
「…………ぷふ。ふふふ。アハハハ!」
ルキリヤは笑い出す。
「何?」
「いやだって! クテイさん、ひげ!」
そう、クテイのかけている眼鏡には何故かひげがついているのだ。
まあ、コスプレみたいで可愛らしいのだが。
「むー。ひげを舐めないで、よ? このひげに通っている魔力回路が使用者の魔力を……」
またクテイの講義が始まった。
「――ということ、なの。おーけー?」
クテイはひげのまま言う。
「ハイ。ひげはイダイデス」
ルキリヤの目は死んでいる。
「ん! 魔法適正わかった、よ!」
クテイが眼鏡を外し、言う。
「そ、そうですか!」
ルキリヤに生気が戻る。
「ルキリヤの適正は
………………風と水と氷、だよ」




