4人の弟子
「ふふふ。冬の前に
帰って来れて良かったわ。」
「うん、そうだね、カトリーネ。
あれ? これ、何処で飲んだことが……
これって、何処の紅茶? 美味しいよ。」
「これは、ランタナ商会が仕入れてくれた
イグナーツ辺境伯領産の紅茶なのよ。」
「ああ、イグナーツの!確かに、祖父の家に
行った時に、飲んだことある味!」
ここは、なんと、本館に出来たばかりの
フォロス様のお部屋です。
フォロス様は、別館から、こちらの部屋に
移動したのです。わたくしは、フォロス様の
部屋で、のんびり過ごしておりました。
もちろん、まだ、婚姻前なので、アラン様、
アナベラも、同じ部屋にいます。
「ああ、そういえば、
フォロス様の直弟子が増えたと聞いたわ!」
「うん、他の3人と同い年の騎士見習いだよ。」
「あら? もしかして、アナベラの甥っ子、
チェスターくんかしら?」
「ああ、そうだよ。ブレイデン殿から頼まれて。
チェスターは、かなり、やんちゃな子だね。」
「ふふふ。ますます、賑やかになりそうね。」
トルコワ伯爵の曾孫のひとり、チェスター・
フォン・ロストーゼ・トルコワ。10歳。
濃い緑の短髪に黒目の、アリヴィアン様の
嫡男、ブレイデン様の一人息子くんです。
ちなみに、ブレイデン様は、お養父様の護衛
騎士をしたり、警備隊に所属したりしている
珍しく、自由な騎士ですね。
「ねえ、カトリーネ、驚いたんだけどさ、
チェスターの御生母は、ロストーゼ伯爵の
関係者なのかい? ロストーゼ伯爵領は、
ここから、かなり遠いはずなんだけど。」
「ああ、ブレイデン様は旅がお好きな人なの。
旅をしているうちに、ロストーゼ伯爵令嬢の
イーリス夫人と出会って、妻に迎えたのよ。」
「た、確かに、ステフリーシュ辺境伯領では
珍しい自由人な感じで、アナベラと兄妹な
はずなのに、あまり似ていないような………?」
「ふふふ。アナベラは、お養母様の侍女長に
鍛えられたから、かしらね。」
ロストーゼ伯爵領は、王都より、さらに遠い
場所にあるから、普通なら、行く機会は無い。
でも、アリヴィアン様の嫡男ブレイデン様は、
箱入り息子な騎士が多い辺境伯領で、珍しく
外の世界を知りたい、という騎士でして。
「イーリス夫人いわく、ロストーゼの森の中に
ある観光地で出会ったらしいわ。」
「ロストーゼの森に観光地?ああ、温泉街の!」
「ふふふ。その時は、お互いに、お忍び中で。
そしたら、恋に落ちて、身分を明かすことに
なって、そしたら、伯爵の嫡孫と伯爵令嬢、
お互いに、釣り合いすぎて感激して、恋仲に。
ロストーゼ伯爵も、ステフリーシュ辺境伯の
親族の伯爵家の、いずれ当主になる男ならば
良いってなったのよ! 面白いでしょう?」
「それは、、、まるで恋愛小説みたいだね?」
「ふふふ。 チェスターは、そんな自由人な
ご両親に似たのかもしれないわね。」
「私の弟子は、4人とも、個性が強くてね
いずれは、別々の教え方が必要そうだよ。」
「あら! まあ! そうなのね?」
10歳の少年見習い騎士が4人集まるだけなら
まだ、良いのですけれど、確かに、それぞれ、
個性的な性格をしていますね。
わたくしからしたら可愛いらしい4人の弟分。
昔は、わたくしに、よく引っ付いてきたので
最近は、ちょっと寂しいですよ。
「実は情熱家なカイルは、海軍向きだね。
父親のラグニース子爵に良く似ているから
正式に騎士になったら父親に教わると良い。
まあ、反抗期だったら、難しいけれど。」
「ふふふ。反抗期の時が一番大変そうよね!
父親相手だと、微妙な、その時は、海軍の
先輩方に、お任せしましょう!」
「うん、その可能性が高いかもしれないね。」
「やんちゃ坊主なチェスターは、警備隊向き。
街中で、何かあった時に、駆けつけていける
くらいの瞬発力、判断力があるみたいだから
アラン殿の父上レオン殿にも頼む予定だよ。」
「ふふふ。よく見ておられますね。」
「真面目なケイトは、護衛騎士向き。
ああ、こちらは、アラン殿の部下になって
アナスタジアの護衛騎士かい?」
「ええ、当たり! その予定よ!」
「常に、無表情なティムは、特殊部隊向き。
まあ、こちらは、いずれ王都に行くのなら
王都に行ったら、ラギが適任。それまでは
私が教えるつもりだよ。いろいろと。」
「まあ!ふふふ。悪い顔してらっしゃるわ。
さすがね、フォロス様。」
特殊部隊云々の話になりますと、、、
何故でしょう? フォロス様、怪しい………
陰のある雰囲気になるのですよね。
特殊部隊で、どう活躍してきたのかしら?
「えっ!? そんなに、悪い顔、してた?」
「それはもう、ニヤリって感じでしたわ。」
「ああ、カトリーネ………恥ずかしい………」
「うふふ。フォロス様、可愛いですね。」




