280話 飲んだ次の日の朝
「……ここは……痛っ」
カーテンの隙間から部屋へと入る日の光が目に入り、目が覚めた私。ボーッとしながら見覚えのない天井を眺めていたら、頭痛が襲う。
余りの痛さに顔をしかめていると、少しずつではあるが思い出して来た。昨日は確か任務から帰って来たら、久し振りにレディウスと出会って、ラティファが変な事を言い決闘になったのだ。
結果はレディウスが勝ち、そのお詫びに確か個室のある居酒屋に連れて行って……っ! そ、そうだ。色々と話すうちに婚約の話になって……あぁぁぁっ!!! 酔った勢いで色んなことを話してしまった!!
とんでも無く恥ずかしい話をした事も思い出して両手で頭を抱えていると、パサリ、と掛け布団がずれる。そして、私が全裸なのがわかった。
「ーーーー!!!!!!???」
声にならない声を叫んでいると
「ど、どうしたんだ、ティリシア!!」
部屋へと勢い良く入って来たレディウス。レディウスは私の体を見て顔を赤くさせたまま固まる。私はその時点で何も考えられなかった。そのまま
「で……出て行けぇぇぇ!!!!」
と、魔法を放ってしまった。レディウスは固まっていたことと、まさか私が魔法を放つとは思っていなかったのか避ける事が出来ずに、もろに氷の塊を体にくらう。私は、レディウスの補佐をするロナが来るまで、布団から出る事が出来なかったのだった。
◇◇◇
「今回は誰が何と言おうとレディウス様が悪いです」
俺の前で腕を組み仁王立ちするロナ。その後ろには、顔を赤くしながらもロナを止めようとするティリシアの姿がある。
当たり前だが服は着ており、こちらで用意したドレスを着てもらっている。今日は非番の日らしいのでちょうど良かった。
「レディウス様?」
そういえば、ティリシアのドレス姿は結婚式の時以来だなぁと眺めていると、笑いながら俺の名を呼ぶロナが目に入った。笑ってはいるが、目が冷たい。俺は黙って頭を下げるしか出来なかった。
「ロ、ロナ、レディウスを許してやってくれ。元はと言えば、私が酔い潰れたのがいけなかったのだ。それに、私が馬鹿みたいに大声を出して、レディウスはただ心配してくれただけで」
「それでもです。レディウス様にはティリシア様が裸で眠っているのは知っていました。それなのに、躊躇うことなく部屋に入ったのです」
ここまでロナが怒っているのは珍しいが、独身の女性が眠っている部屋に何も言わずに入った俺が悪いので当たり前か。
「ティリシア、ロナの言う通りだ。ティリシアが部屋の中にいるのは知っていたし、その……格好の事も知っていた。それなのに緊急だからといって、部屋に入ってすまなかった。俺で出来ることなら何でもする」
俺はそう言いながら頭を下げる。ティリシアはあーやらうーやら言っていたが、ロナに何やら耳打ちをされて、顔を真っ赤にさせていた。何を言ったんだ?
「そ、それは流石に……」
「いえ、未婚の女性の裸を見たのです。責任を取ってもらわなければ」
何やら話をするティリシアとロナ。俺から少し離れた話をしているため、どのような話をしているのかはわからないが、とんでも無い事を話しているような気がする。
顔を真っ赤にして今にも湯気が出そうなティリシアと、真剣な表情で話をするロナ。そして、話が決まったのかティリシアの背中を押して俺の前まで連れてきた。
「さぁ!」
いつものロナに似合わずバシンッと強くティリシアの背中を叩く。ティリシアは緊張しているのか、背中の痛みは感じないようだ。物凄く緊張した様子のティリシア。ティリシアは普段見ないような表情で俺を見てくる。俺はそれを黙って見上げており、そして
「レレレ、レディウス!!」
「は、はい!」
「わーわ、私のは、裸を見たのだ! 未婚の貴族の女の裸を見たのだ!! せせせ、責任を取って、わわわ……うぅぅぅんっっっ!!! わ、私を娶れ!!!」
俺の顔に向かって指をビシッと突き出すティリシア。ティリシアの言葉に俺は固まる事しか出来なかった。
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