277話 妹の実力
ティリシアの合図と共に飛び出す俺とラティファ。俺は纏を発動し向かうが、ラティファはランベルトがしたように5属性の強化魔法を発動し、ランバルクがしたように5属性の魔法を放って来た。
火、水、風、土、闇の魔法が俺に降り注ぐ。あの2人を合わせたってのはあながち間違いじゃないって事か!
「明水流魔流」
俺に向かって飛んでくる色取り取りの魔法を、シュバルツを振り逸らして行く。ラティファは少し驚いたように目を開くが、直ぐに真剣な顔に戻る。
全身を5属性の魔法で強化したラティファの速さはかなりのもので、オーソドックスではあるが、これも魔法で強化した剣を振り下ろしてくる。
ガキィン! と、俺のシュバルツとぶつかり音を鳴らしてラティファの剣を弾く。ラティファは半歩下がり、俺はそれを追おうとするが、足下から魔力を感じ下がる。
次の瞬間、土の円錐が、俺目掛けて伸びて来たのだ。土魔法か。ドドドッと伸びてくる土の円錐を避けていると、左右から風の刃と火の玉が飛んでくる。
これもラティファの魔法か。流れるように魔法を放ってくるな!
羨ましくも思いながら避けるのが面倒になった俺はシュバルツに魔闘装を施す。魔力を貯めたことにより、シュバルツの闇魔法が発動し、黒い魔力がシュバルツを覆う。
「旋風流風車」
その場で立ち止まり迫る魔法に向かって回転し切る。闇属性の消滅により俺に向かっていた魔法は全て消し去る。
ラティファは消される魔法を見ながら悔しげに表情を歪めるが、この程度で折れたりはしなかった。魔法を放ちながら、自身の持つ剣に幾重にも魔法を重ねていく。
魔法主体での攻め方をやめるようだ。まあ、あのまま続けても平行線を辿るだけだったからな。
一瞬だけしーんと静かになった会場。ただ、それは本当に一瞬で次の瞬間にはラティファが力強く踏み出す足音が鳴る。
ラティファは真っ直ぐと俺に向かって来る。黒髪で魔法が放たないからと、距離があるうちは気を抜いているのかもしれない。
俺は向かって来るラティファに向かって風切を放つ。それを見たラティファは、俺の予想に反して慌てる事なく左右に動いて避ける。
……あー、それもそうか。銀翼騎士団には旋風流が使えるミストリーネさんがいるのだから見た事はあるか。
風切を避けて俺の前まで来たラティファは、顔目掛けて突きを放ってきた。それをシュバルツで下から打ち上げ、ラティファに向かって振り下ろす。
ラティファは半歩下がりシュバルツを避けるが、避けた方に向かって今度は振り上げる。避けきれないと思ったラティファは剣で受け止めるが、力任せにシュバルツを振り抜く。この程度で折れたり曲がったりするような柔な剣じゃないからな。
ラティファは吹き飛ばされ一度地面を転がるが、直ぐに片膝をついた状態だが体を起こす。このままラティファを攻めようと思ったが、彼女の剣に集まる魔力に気付いた。
そして、そのままその場から突きを放ってきた。当然ながら彼女の突きが俺のところまで届くわけがない。しかし、届くはずのない突きからは、剣の形に沿って魔力が伸びていき、俺の目前まで迫っていた。
俺はシュバルツで逸らすが、間に合わず肩を掠める。伸びてきた魔力の剣はそのまま俺の後ろ側の観客席の壁まで伸びていった。いやいや、ここから40メートルはあるぞ?
「はぁあああっ!!」
ラティファはその魔力で伸びたままの剣を、振り上げて振り下ろしてきた。俺は横に飛んで避けるが、途中で横に振り変えたため、俺の背後に迫って来る。
俺はギリギリしゃがんで剣を避けると、頭の上スレスレに通り過ぎて行くのがわかる。魔力で伸びた部分が端まで伸びていたため、ガリガリガリッと壁を削る音が響く。
「ふふっ、流石にこれには驚いてくれたようですわね。留学中、剣なんてリーチの短い弱い武器だ、と言った槍使いを倒すために編み出した技『剣槍』。私の魔力が続く限り伸ばすことの出来るこの技に、死角はありませんわ!」
そう言って剣を振るうラティファ。彼女の言う通り、自由自在に魔力で長さを変えられるため、容易に近づくことが叶わない。
俺も馬に乗っている時など、普通の剣では長さが足りず届かないので、魔力で伸ばす事はしていたが、ここまではしたことが無かった。
……いやー、これは思いもしなかった。伸ばそうと言う発想はあったが、ここまで伸ばす事は考えなかったからな。
ははっ、こういう事があるから、決闘は楽しいんだよな。俺の知らない戦い方を知ることが出来る。俺が通らなかったその人の軌跡を知ることが出来る。
「……なぜ笑って」
……俺は思わず笑ってしまったようだ。楽しくなってきたからな。ラティファの実力をもっと知りたいが、今のままでは引き出せそうにないな。
俺は一気にシュバルツへと魔力を流し、シュバルツから溢れた闇属性の魔力を身に纏う。
「魔天装黒帝」
俺の本気の力で彼女の実力を引き出そう。
13kmほどは伸びませんので笑




