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135話 話し合いの結果

「さあ、入るわよ、覚悟は良い?」


 フローゼ様が確認のために俺の方に振り返ってくる。俺の覚悟なんてとっくの前には決まっているので、俺は黙って頷く。


 俺の表情を見てニヤリと笑うフローゼ様は再び目の前にある扉の方を向く。この王宮内で1番大きな扉、玉座の間へと繋がる扉だ。


「取り次いでもらえるかしら?」


「はっ!」


 フローゼ様の一言に扉の前に立つ兵士は敬礼をし、中へと入る。そして直ぐに兵士が出てきた。当然だが許可は貰えたようだ。


 兵士により扉は開かれ、フローゼ様は堂々とその先へと進む。俺も臆する事なくフローゼ様の後ろへ着いて行く。中には既にフローゼ様が伝えていたのか、トルネス国王にアルバスト国王、フロイスト王太子、それから前にも見た事のある貴族たちが並んでいる。


「まさかフローゼから呼び出されるとは思わなんだ。それにアルノード男爵、貴殿のおかげで我が国で起きた問題を次々と解決する事が出来た。なんでも、オークキングも討伐したそうでは無いか」


 アルフレッドから聞いたのだろう。フローゼ様は「私聞いてないわよ?」って風に俺を見てくるが。そう言えば言ってなかったな。ギルドで手柄は全部アルフレッド達のものになっていたから。


「すべては仲間たちのおかげです。私一人ではかないませんでした」


「はっはっはっ! まあ良い。後でお主への褒賞の話もせねばならないな。それでフローゼたちは何用で我々を集めたのだ?」


「申し訳ありません、陛下。お忙しいところをお呼び立てして。実は私とアルノード男爵からお願いがあり参りました」


「願いとな?」


 あー、この雰囲気、トルネス国王もアルバスト国王も、フローゼ様と俺がここに来た理由を既にわかって聞いてるっぽいな。他にも鎧を着た将軍や1番トルネス国王の近くに立つ貴族の男性も。


「はい、私たちの願いは先日に捕らえられたミネルバの死刑の取り消しになります」


「うーむ、ホーエンハイド家の娘の死刑の取り消しか。だが、彼女は我が国の兵士を殺し過ぎた。その見せしめのためにも彼女を生かしておく事は出来んぞ」


「確かにミネルバはたくさんの兵士を殺しました。だけど、彼女は奴隷として、その上謎の武器で操られていただけです。その点をどうか配慮出来ないでしょうか?」


 フローゼ様の説得にトルネス国王は考え込む。しかし、そこに将軍が割り込んでくる。


「国王陛下よ。考える必要はありませんぞ。犯罪者を処刑しなければ、家族を失った者たちが納得しません」


「ふむ、確かに将軍の言葉も確かだ。だが、フローゼの言葉の通り全ての罪がミネルバ……ミネスティにある訳では無い。今回の事件の原因となったマンネリーに全ての罪があるのなら、ミネスティの罪を軽くする事は出来るだろう」


 トルネス国王はそれだけ言うと、チラッと俺を見てくる。これは俺からの言葉を待っているのか。多分さっきはじめの方でチラッと話した褒賞の話だろう。


「トルネス国王陛下、少しよろしいでしょうか?」


「うむ、なんだ、アルノード男爵よ」


「はい、私の褒賞の話なのですが、これはどのような物になるのでしょうか?」


「うむ、宰相よ。アルノード男爵の褒賞についてはどのようになっておる?」


「はい、アルノード男爵は、オークキングのとうばつ、親善戦の際のアルフレッド選手の暴走を止めた事、王宮への侵入者の撃退、そして今回の議題でもあるミネルバの捕獲です。

 これら全てに褒賞となると、トルネス国民であれば、子爵への爵位に相応しい土地となるでしょう。ただ、彼は既にアルバスト王国の貴族。なので爵位は不要と考えます。となると、金銭での褒賞となるでしょう」


「なるほどな。それらの褒賞を金銭になるとどれ程になる?」


「はっ、おおよそですが大白金貨10枚、1億ベクにはなるでしょう。1番はやはり王宮に侵入した賊を倒した事によります。彼がアルフレッドを守らなければ、マンネリーまで辿り着くことが出来ませんでしたので」


 これは、かなり大盤振る舞いしてくれたのでは無いか? 1億ベクなんて貴族でも中々お目にかかる事は出来ないぞ。だけど、それほどなら


「なら、私の褒賞にお金はいりません。そのお金を全て被害のあった人たちへの補償として下さい。その代わりにミネルバさんとヘレナさんを私の奴隷にして貰えないでしょうか?」


「だが、それをすれば被害のあった家族は金で犯罪者を助けたと思われるぞ?」


 そこに将軍が再び割り込んでくる。確かにその可能性はある。だけど


「将軍殿、1つ確認してもよろしいですか?」


「……なんだ?」


「今回のマンネリー商会での事件なのですが、マンネリー商会に突入する時に突然中から変異した人型の魔獣が現れたのですよね?」


「ああ、そうだ。私は生き残った部下からそう聞いている」


「なら、兵士たちはその魔獣がミネルバさんだと知らなかったはず。私たちも事前に出会っていたからこそ、気が付いたのです。それなら、兵士を殺した魔獣は討伐されたって事で話はつけられないのでしょうか? 事件の原因となったマンネリーは死亡で」


「……箝口令を出せば出来なくは無いが」


 将軍はトルネス国王の方を見る。トルネス国王の許可がなければ出来ないのだろう。そしてトルネス国王は


「将軍よ。それで問題は無いか?」


 俺の意見に同意してくれるようだ。将軍は最後に


「……兵士たちの補充を約束してくださるなら」


 と、折れてくれた。トルネス国王は直ぐに宰相に兵士たちへの箝口令を命令し、ミネルバさんの事が国民に伝わらないようにする。


 そして、次に財務相に、兵士の家族への補償金の準備と、余った分を軍備に補填する事を決めて指示を出す。


 そして最後に、俺の方を見て


「では、アルノード男爵よ、お主への褒賞はミネルバ、ヘレナの2名の奴隷をお主のものとする。ただ、ミネルバ、ヘレナともこの国の貴族だった者たちだ。特にヘレナは王宮で働いていた身。トルネスの不利益になるような事は話せないよう制約をつけさせてもらうが構わんか?」


「はい、構いません」


 俺が頷くと、トルネス国王も頷く。そして、話し合いはお開きとなった。ふぅ〜、何とかまとまって良かった。ヘレナさんにも良い返事が出来るぞ。

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