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131話 遭遇

「ふぅ、ようやく動くようになったな」


 大怪我をしてから2日、ようやく怪我前までに戻るようになった。両腕の包帯も取れて、傷跡も殆ど分からないぐらいにまでなった。痛みも無いのだが、まだ握力が完璧に戻っていない以外は治っただろう。握力にかんしても纏で補うしか無い。


「準備は出来たか?」


 俺が自分の手を確認していると、ガウェインが扉を開けて入って来た。後ろには今回手伝ってくれるロンドルたちがいる。


 準備というのは当然ミネルバさんを助けに行く事だ。ヘレナさんのお願いを聞き俺はミネルバさんを助ける事にした。ただ、俺の傷が治らない事には始まらないので、2日かかってしまったが。


 今回手伝ってくれるのは、ガウェイン、ロンドル、メイリーン、ティリシアだ。アルフレッドはまだ監禁が解けてなく、ビーンズが身の回りの世話をしている。


 ヴィクトリアとクララはヘレナさんと留守番だ。みんなの後ろからその3人がやってくる。


「……申し訳ありません、私のわがままでみんなを危険な目に合わせて……」


「気にする事は無いですよ。俺たちが自分の意志で決めたのですから」


「ああ、俺たちも無関係って訳じゃねえからな」


 俺やロンドルがそう言うと、ヘレナさんは涙を浮かべながら頭を下げてくる。俺はベッドに立て掛けていた黒剣を腰にさす。良し、これで準備が終わった。


「気を付けて下さいね、レディウス」


「ああ、さっさとミネルバさんを連れて帰ってくるよ」


 心配そうに上目遣いで見てくるヴィクトリアに俺は嬉しく思いながらもそう返す。それにあまり怪我して帰ってくると、その内縛られそうだしな。


 離宮を出ると、1人の兵士が立っており、俺たちを案内してくれる。前もってフローゼ様に馬をお願いしていたのだ。案内された先には、俺たちの人数分の馬とフローゼ様がいた。


「来たわね、みんな」


「フローゼ様、どうしてここに? 確かに馬はお願いしましたが」


「何を言っているのよ。私の親友を助けに行ってくれる人たちに会うのは当たり前でしょ? ミネスティーー今はミネルバだったわね。彼女の事よろしくね。でも、あなたたちの命を優先して頂戴」


「わかっています。俺たちも無事に、ミネルバさんも連れて帰って来ます」


 俺たちはそのまま馬に乗り、フローゼ様に見送られながら王宮を出る。場所についてはロンドルが軍部にいる父親に最後にミネルバさんを見かけた場所の情報を聞き出してくれたので、それを参考に向かう。

 

 その先には偶然なのかどうなのかは分からないが、俺たちがオークキングと戦った山がある。もしかしたら山で力を蓄えているのかもしれない。


 数時間馬を走らせる事で俺たちは山に辿り着いたのだが


「おいおい、なんだありゃあ……」


 ロンドルが呆然とするのもわかる。その山には既に騎士たち討伐隊がやって来ていたのだが、黒い虫型の物体に襲われていたのだ。


「なんて数だよ。もしかしてあれって」


「ミネルバ殿のせい……なのか?」


 ティリシアたちも半信半疑だが、それ以外考えられないだろう。もしかしてあの魔武器は魔獣になるだけでなく、他の魔獣も生み出す事が出来るのか?


 騎士たちはこの魔獣もどきを放っておけるわけもなく、隊列を組み魔獣もどきを押しとどめている。だけど、そのせいで思うように進んでいないようだ。


「さて、どうするレディウス。あの数はかなり厳しいぞ?」


「当然行くに決まっているだろ。騎士の人たちには申し訳ないがこのまま耐えてもらうしか無い。その内に俺たちがミネルバさんを見つけて倒す。ミネルバさんを倒せば、虫たちも消えるだろう」


 アルフレッドの時も魔剣を破壊する事であの魔獣のような力は消えたからな。今回は魔槍のようだけど、能力は似たようなものだろう。


 俺たちは戦う騎士たちの横をすり抜けるように馬を走らせる。囮にしているようで、申し訳ない気持ちになるが許して欲しい。


 山の中でも馬が走れる道を探して駆けていると、さっきの軍隊からのはぐれが時折襲ってくる。一体一体はそこまで強くは無いが、この数が一斉に襲って来たらと思ったらゾクッとするな。負ける気はしないが無傷ではいられないはずだ。


 まれに飛んでくるはぐれを倒しながら山の中を進むと、以前オークたちと戦った洞窟の近くに出た。前は馬車だったので降りてきたが、今回は馬で入ったため歩きよりも時間を短縮する事が出来た。


 そして、オークがいた洞窟に向かうとそこは変わらずに穴が塞がれた洞窟跡が残っている。ただ、前と違うのはその塞ぐように残っている岩の上で、人型の蛾のような姿をした者が座っていたのだ。


 右手には漆黒の魔槍を握り、背中の羽は落ち着いたようにゆっくりと動いている。そして、蛾の人は何かを歌うと魔槍から黒い物体が出てきて形を変えて行く。あれが虫になるのか。


「あれがミネルバさんか」


 俺たちは全員馬から降りて武器を構える。そこでティリシアが


「先手必勝ね! アイスランス!」


 この離れた位置からミネルバさんに向かって氷の槍を放つ。それに気が付いたミネルバさんは右手の槍を振って飛んできた氷の槍を叩き落とす。


 羽をはためかせ空中に飛ぶミネルバさん。まずは地上に落とさなければ。

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