怪奇探偵、またの名を
「依頼の主はここにいる」
ついたのは少し大きめの民家だった。
ひとねがインターホンを押すと小型カメラが起動し、スピーカーから上品な女性の声がした。
『はい、どちらさまですか?』
「依頼された怪奇探偵だ」
『お待ちしておりました、少々お待ちください』
「えっ……」
『怪事件限定のシャーロックホームズ』の名前はどうしたんだよ……
そんな疑問とツッコミは俺の胸の中にしまいこまれ、俺たちは出てきた女性に通されて家へと上がった。
*
リビングでお茶を出しながら女性が頭を下げた。
「わざわざありがとうございます、シャーロックさん。貴方の事は祖母から聞いております」
シャーロックの名前はまだ使っていたのか。
「う……うん」
気まずそうに頷くひとね。恥ずかしいならやめろよ。
俺は小声でひとねに話しかける
「で、お前がわざわざ来た理由ってなんなんだよ、シャーロックさん」
「なっ……」
ひとねは頰を赤くして俺を睨む。
「シャーロックって名乗ってるのはお前だろ?」
追い討ちをかけるとひとねの顔が怖いソレへと変貌した。
「ちっ……覚えてろよ」
「……うおう」
ひとね、キャラ変わってないか?
「あ、あのう」
女性の声でひとねは顔をいつも通りに戻す。落ちつくためか茶を一気に飲み干して咳払い。
「そうだね、まずは状況の再確認をしようか」




