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機嫌の良い不死鳥
「よし、行こう」
地下図書館のいつもの部屋で簡単な料理を作っていると、ひとねがいきなり立ち上がった。
「……どこに」
「そりゃあ依頼だよ」
「へえ、自分で動くなんて珍しい」
いつも俺を代理にしていたからな……
「自己像幻視」
「……なんだよ唐突に」
俺のツッコミを無視してひとねは続けた。
「ある日目の前に自分と全く同じ人間が現れたら……君はどうする?」
「……は?」
「それが、今回の依頼だよ」
ひとねはパソコンを閉じて俺が使っている簡易コンロの火を止めた。
「なにすんだよ」
「それは晩ご飯に回してくれ、昼ごはんは変更だ」
「外で食べるのか?」
「ああ、今日は奢ってやろう」
そう言ってひとねは得意げに胸をはった。
「なんだ、今日はどうしたんだ」
「気分がいいんだ。さあ行こう」
ひとねは鼻歌を歌いながら部屋を出た。




