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オタク気質が災いしてお妃候補になりました  作者: 森の木
第五章

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5-13 終わりは始まり

 アリーシアは部屋を片付けていた。

 正式にお妃候補に知れ渡り、アリーシアの創設したサンパウロ基金も順調に運営できている。今は母に大まかなことは任せていて、アリーシアは大きなことを決める以外はほかのひとに任せていた。それももうすぐ寄宿舎へ行き、勉強をする生活を本格的に始めるからである。兄もまだ寄宿舎で勉強を続けている身だ。ほぼ学校での学びは終わったが、研究などを深め、さらには生徒に教えることもしているという。

アリーシアは部屋を片付けながら、持って行くものを選んでいた。


 今年数えで16歳になるアリーシア。

 この部屋で過ごして日々は、アリーシアとして覚醒してからも年月を幾重にも重ねていった。お気に入りの本は出来たし、使いやすいペンや紙もある。好きな服もある。この部屋にはたくさんのアリーシアの「好き」がつまっている。それともしばらくお別れになるのだ。

 そしてアリーシアは、父や母、アポロとももしばらく会えなくなることも寂しかった。アポロは兄と姉が寄宿舎へ行くというので、自分も行きたいと思っているようだ。入る要件を満たせば、アポロの年齢でも入ることはできる。もしかしたら、アポロも来年には寄宿舎へくる可能性はありえる。そうしたら、寄宿舎生活はにぎやかなものになるかもしれない。

 

 アリーシアは、本棚から絵本を取り出した。これが最初の本作りだった。


「これから始まったのね。あっという間だったわ」


 アポロは何度もこの本を読んで、本嫌いだったのが、本が大好きになった。最近は難しい本も自主的に読むことがあるという。もちろん剣術に関しての本ならば、という条件である。アポロは着実に父にせまる勢いの剣術の腕前になっている。そのうち国で一番を決める剣術大会に、父が出してみようかと笑っていた。アリーシアはアポロが結構いいところまで勝ち進むのではないかと思っている。

 アリーシアはアポロの剣術を練習で受けるだけだったが、寄宿舎に入るための剣のテストではかなり優秀な成績だった。まだまだあら削りではあり、型などはまだまだである。しかし純粋な強さという面だったら、同期の生徒では圧倒的だった。地道に積み重ねたことが、形になっていくのを感じた。


 この世界でアリーシアとして、何ができるのか。それはわからない。

 ただ前世の心残りだったオタク活動をしたいという気持ちから、たくさんの仲間ができ、そして自分のやりたいことを形にして、成功する経験を学ぶことができた。これからは進む道はかわってくるが、自分が心からやりたいことを信じ、続けていくことが大切なのだという気づきがあった。

 前世では恋愛にネガティブな感情をもっていて、やりたいことをやりたいといえず人生が終わってしまった。生まれ変わったことはある意味でチャンスだったのかもしれない。

 早くに亡くなってしまったことは前世の家族には申し訳ない気持ちである。しかし今はアリーシアとして、楽しく幸せに今生きている。もしこの気持ちを伝えることができたら、いいのにと思う。

 そんな穏やかな気持ちでいられる瞬間が、とても幸せだ。


「マンガを作ったから、今度な二次創作でもいいわね。ライトノベルを書いてもいいかもしれないわ。旅行会社を作って、コラボツアーとか。お菓子屋とコラボして限定グッズも作ってみるのもいいかも。コラボカフェとかあったら行ってみたい! 」


 少し余裕も出てきた最近は、またサンパウロ様の妄想をしている時間ももてるようになった。マンガが作れたので、余裕ができたら二次創作を作るのも楽しいかもと思った。技術をほかの国から取り入れて、そのうちアニメや映画など、そういったものが作れたらもっと面白いだろう。アリーシアの野望はこれからもどんどん膨らむだろうし、もっと楽しんでいきたい。せっかくこの世界に生まれたのだから、楽しんで人生を終えたほうがラッキーである。


「今日もいいお天気だから、アポロとお茶を飲みながらサンパウロ様のお話をしよう」


 アリーシアは作業をいったん中断すると、お腹がすいてきたのでキッチンへおりていく。

 そして剣術の練習をしているアポロに声をかけて、ゆっくりすることにした。今日も屋敷から見える城は太陽の光に反射して、光り輝いている。


 明日もきっと晴れるだろう。

 中庭にあるサンパウロ様の像に、今日もわたしたちは見守られながら時は過ぎていく。




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