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オタク気質が災いしてお妃候補になりました  作者: 森の木
第五章

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5-7 父と兄からの話

「お兄様、失礼します」


「アリーシア、今日の仕事は終わったのかな」


 屋敷に帰るとアリーシアは外出着をそのままに、兄がいる書斎に移動した。兄は書類を見ながら手にはペンをもち、サインをしている。仕事中だとは思うが、要件を先に伝えようと考えた。


「ええ、最初に作った本の修正をしています。一般向けによりわかりやすくいものを考えています」


「わかった。さて何かほかに言いたいことがあるかな」


「ええ、お兄様は信頼しておりますが。少し気になることがありましたので」


「うん。じゃあ、仕事が片付いてからでいいかな。夕食のとき、お父様からお話があると思うから」


「お父様から? 」


「うん。アリーシアも着替えて、お茶を飲んできたらいいよ。疲れているだろうし」


「……わかりました。お兄様も、休憩はしてくださいね。無理をされるから心配です」


「アリーシアに心配されるのもいいね」


「お兄様ったら。ではまた夕食時に」


 お兄様の顔を見たら心配していたことも吹っ飛んでしまった。兄には何か考えがあったのかもしれない。アリーシアには思いもよらないことがあるのかもしれない。アリーシアは夕食までゆっくりしようと自室へ行き、着替えることにした。中庭を見れば、今日もアポロが剣の修行をしていた。







 「さて…、さっき話したことだけれど」


 夕食が始まり、いつものように父が城から帰宅し、母も家の仕事を切り上げた。アポロは剣の修行後、簡単に水浴びをして着替えをする。アリーシアもさっきまで書庫で本を読んできた。兄も仕事を切り上げ、いつものようにみんなで取り留めないことを話しながらご飯を食べる。

 夕飯も一段落してメイドたちがお茶を出してくれるのを見ながら、アランはアリーシアに聞かれたことを思い出し、話題を切り出した。アリーシアも兄が話をするまでは待っていようと黙っていた。


「はい、今日アトリエAで気になったことを聞きまして」


「うん。僕もアリーシアに確認したいことがあってね」


「わたしに? 」


「アラン、それは俺が話をしよう」


 黙っていた父が会話に入ってきた。父が改まって話をするということは、何か重要なことでもあるのだろう。アランとアリーシアは父に向き直った。


「アリーシア、国王様から内々に尋ねられたことがあった」


「国王様から? 」


「ああ、アリーシアは本を作り、そのお金で子どもたちのための基金を作るという話だ」


「はい、お兄様から助言をいただき、わたしもいいと思いました」


「国中からとても大きな反響があって、国王様にも侯爵家のアリーシアの名を何度か聞くようになったそうだ。とても感心されていたよ」


「それは恐れ多いですわ。わたしはみんなの助言を受け入れただけですもの」


「そこで、国王様の希望もあり、今後のお妃候補にアリーシアをどうだという推薦をいただいた。誉れ高いことだ」


「国王様から直々に……」


「いや、これはエンドリクからの推薦もあってのこと。まだ正式なことではないから、アリーシアの意思を確認してみることにした」


「お妃候補なんて……」


 アリーシアは言葉につまった。国王様からの話では、断ることはほぼ無理であるのはわかっていた。しかし父や兄はアリーシアが本当に嫌だといったら、断るに違いない。アリーシアは言葉に詰まった。いくら正式なことではないとはいえ、言葉をすぐに口にすることができない。


「アリーシア、お妃候補は気が進まないのは僕もわかってる」


「お兄様……」


「今回、本を作り、僕が販路を拡大したことでここまで大きなことになることは、想定外でもあった。けれど、想定内でもあった。ありえることだとは思っていたんだ」


「どうしたらいいのでしょう」


「アリーシアの気持ちだよね。ただお妃候補といえど、あくまで候補だね。今の段階だと、大臣の娘はほぼ候補になるだろうし、4貴族からも出てくるだろう。そうなるとアリーシアはお妃候補として6番目になるだろうね」


「はい」


「このままアリーシアの縁談は増えてくるだろうと思う。それまでは候補として名があったほうがいろいろと楽だというのもあるね」


「どういうことですか? 」


話し向きがかわってきた。アランは少し考えてから、ゆっくり話を切り出した。


「アリーシアはこの本の製作と、サンパウロ基金のことで国中の有名な令嬢になってしまった。だからこそ求婚者はあとを絶たないだろうね。そこでお妃候補になってしまえば、いったんは話もなくなるだろうということだ」


「なるほど、そのあとに気が進まなかったら候補であっても、お妃にならなければいいということですね。」


「そういうことになるね」


 アリーシアは考えてしまった。最初からお妃になるつもりがないのに、お妃候補になってしまってよいのかどうか。


「でも、アリーシアがどうしても嫌だというなら。そのときはちゃんと対応するから」


「お兄様、時間をください」


「うん」


「お父様も、少し考えたいです」


「俺もアランの意見には賛成だ。結婚なんて無理にしなくていいし、父さまも母さまと出会わなかったら結婚をしなかったかもしれない。アリーシアの好きにしていいと思っている」


「お父様、ありがとう」


 父と兄に礼を言うと、アリーシアは席を辞した。お妃候補になるか、否か。アリーシアは答えが出なかった。


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