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オタク気質が災いしてお妃候補になりました  作者: 森の木
第二章

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2-8 新年

 季節が巡り新しい暦が始まる。

 アリーシアの国では、特に誕生日という概念がない。地方によってはあるらしく、隣国のマリアンナの故郷では誕生日を祝う事があると聞く。しかしアリーシアの国では、個別に誕生日を祝うことがなく、新年がくるとみんな一歳としをとると考えるのだ。

 アリーシアの住む国も四季があるようで、中庭の花々が咲き乱れた季節が過ぎ、そして暑い時期がきて。さらには葉が色づく季節がきた。今は葉っぱが落ちてしまい、中庭はとても静かである。寒い季節がきたのだ。そういった中、新年を祝うことになる。


 新年を祝うといっても、城下町は広場などでお祭りなどがあるようだが、アリーシア達の貴族階級では特にない。静かに休みをとり、新年の休みが終わったら、新年の行事などがあるようだ。そういった意味で年始年末に貴族階級にイベントがないということは、民は日頃の労働から解放され、城下町は賑わいをもつのだと兄は語った。


 今年の新年は、アポロが3歳になる年である。実際生まれてから2年ではあるが、生まれた年を1年目として考えるため3歳となる。アリーシアも今年で9歳だ。兄は15歳になる。

 アポロは随分大きくなったため、新しい季節が訪れたら、兄は寄宿舎へ行くことが家族の話し合いで決まった。アリーシアも兄が熱心に勉学に励んでいるのをみて、兄と一緒に居たい気持ちと勉強に専念してほしい気持ちが両方あった。


 兄は季節を巡るたびに、美しく、そしてハンサムになっていく。高かった声もわずかに低くなってきて、たまに声が出しにくいことがあるようだ。前は美しい兄を間近で見るたび、きれいだなとドキドキしたものだが、最近は男性っぽさが出てきて違った意味でドキドキする。

 アポロも大きくなって、最近は遊びの延長で父と剣の稽古を始めた。言葉も達者になってきて、前はそんなにしゃべるのが得意ではなかったようだが、今は途端おしゃべりが大好きで、楽しそうに言葉を発する。「なんで?」「どうしてなの?」とたくさんアリーシアに聞くのだ。今話せるのが楽しいようで、アリーシアの後ろにくっついて、姉の真似をたくさんする。言葉の真似が一番多い。

 

 ほかにアリーシアが行くところにもついて行こうとする。

 例えば、アリーシアがサンパウロ様について調べるため宝物庫に忍び込もうとすると、アポロもついてくる。アポロは3歳児にしては大きいため、アポロがついてくるとメイドにばれてしまう。アリーシアが内緒で秘密の部屋として使っている空き部屋にも、一緒に付いてこようとする。空き部屋で特に何かをするわけでもないが、気に入った布や本を集めてその中で過ごすのも楽しいのだ。


 でもアポロが来ると勝手にいじられるので、正直あまり嬉しくない。


「アポロ、今日はついてきちゃだめよ? 」

 

「なんで? 」


「姉様には大切な用事があるの、だからアポロはついてきてはだめ」


「ふーん」


 アリーシアが秘密基地もとい、秘密の部屋にしている部屋に行こうとするとアポロはついてくる。アリーシアが後ろを振り返り、アポロの方を見るがアポロは楽しそうに笑うだけだ。


「アポロ、ついてこないで」


「ついていかないよ」


 そういってもついてくるのだ。ニコニコ笑って、無邪気で、好奇心旺盛なアポロ。秘密の部屋に行こうとしても、普通に入ってこようとするので扉の前で攻防は続く。


「今日は一人で遊ぶのだから、アポロはだめ! 」


「姉さま、ぼくも遊ぶの! 」


「いやよ、この前も私がつくったサンパウロ様のセットを全部めちゃくちゃにしたじゃない!! 」


 サンパウロ様のセットとは、アリーシアが見つけた屋敷内で見つけた不要の古着、それをサンパウロ様に見立てたドレススタンドに、衣装やアイテムをハンガーでつり下げ作ったセットである。そこで4貴族などのセットもつくり、もちろん王のセットも作った。

 しかしそのセットも、アポロがくると全部倒される。アポロからすると服を着ているお化けみたいに見えるらしく、父と訓練している技をかけようとするのだ。

 最初やられたときは我慢したが、それが何回も続くとアリーシアもいらつくようになった。一回本気で怒ってしまい、アポロが大泣きして、それを発見され、アリーシアが母に怒られた。あくまで秘密の部屋でのことなので、母にはアポロの罪状を説明できなく、アポロを泣かせた悪いお姉様になってしまった。


 しかも最近は、アポロもずるがしこい。泣けば誰かが来てくれて慰めてくれるので、率先して泣くのだ。最初は泣かないように気をつけていたアリーシアも、それが何回も続くと年長者の理不尽を思い出した。


 そうだ、これは前世でもあった。繰り出されるダメージは「お姉ちゃんなんだから」だった。年長者の理不尽とはまさにこれで、「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」の嵐である。

 もちろん年下の苦労もあるだろう。幸い兄はアリーシアに激甘であるし、アリーシアは兄が我慢した姿を見てはいない。だが兄だって辛いことはあると思う。


 アリーシアはアポロの成長が嬉しくもあるが、小憎らしくもあって、子どものアポロに何度も打ち負かされてしまうことが多かった。

 アポロはとても甘え上手で、天真爛漫だ。アリーシアもそんなアポロの笑顔をみて、怒っていたことも急におかしくなってしまい、アポロの屈託ない笑顔に一緒に笑ってしまうことがある。それは母もそうであり、父も、兄も一緒であった。


 そうして年末の忙しさが過ぎて、新年を迎えることになる。


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