表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マリーは10回婚約破棄される  作者: 隘路(兄)
第4部 因果時空決戦編
67/71

第67話 婚約破棄からの銀河を滅ぼす魔女

「この未来を避けるため、我々は様々な可能性を探りました。


 魔神の復活は魔神官を別人に入れ換える事で防ぐ事ができました。

 しかし、あなたが終末の魔女になる事だけは回避できなかった。

 必ずあなたは特異点の力に覚醒し、この銀河は滅亡するのです。


 この未来を変えるために、あなたが幽閉されない状況をつくるために、宇宙にお越し願いました」


 宇宙の滅亡を防ぐ目的は分かった。

 しかし、まだ納得できない。


「わたしがマリーゴールド公爵に拾われなければ、花嫁修業をしなければ済むんじゃないの」


 それならわたしは幽閉されない。

 魔女にもならないのでは?


「それは最も不幸な、最も回避しなければならない時間線です」


「どういう事?」


「貧民街にそのまま過ごしていた場合、あなたのストレスは第二次性徴期に最大になります。

 そして、その場で終末の魔女になるのです」


 貧民街に留まっても、どうやらわたしは生き延びられるらしい。

 しかしその生活は、ストレスが大きく、幸福にはなれないもののようだ。


「でも、そもそも惑星兵器なんて使わなければ、わたしは特異点の力になんて目覚めなかったわ」


 そう。これはあくまで彼らが仕掛けて来たがゆえの事だ。


「わたし達が介入するかどうかに関わらず、銀河帝国と銀河連邦の衝突は必ずあなたの存命中に起こります。


 あなたが宇宙に出ればその戦いに巻き込まれ、その際に終末の魔女になるのです」


「それは銀河帝国の侵略のせいでしょ!

 神様と崇められてるんだったら、侵略行為を止めさせればいいじゃない」


「その時間線も観測しています。


 銀河帝国が侵略活動をしない場合、両者の中間に銀河商業評議会が出現します」


 評議会………?


「無慈悲な圧政と搾取を強要する体制を特徴とし、加盟を断れば蛮族と認定し、討伐軍を派遣します。


 帝国と連邦の中間とは、つまり惑星グランドのすぐ近くです。

 彼らの侵略に激昂し、あなたは終末の魔女となります」


「そんな……、そんな……」


「もう数百通りほどの時間線を我々は観測しています。

 しかし、その全てにおいてあなたは終末の魔女となり、特異点の力を行使し、宇宙を滅ぼすのです」


 全知全能の存在のやる事は甘くはなかった。

 わたしに思い付く事など当然のように網羅されている。


「終末の魔女として覚醒したローズマリー様にはもはや理性はなく、会話は不可能です。

 この時間線に唯一、辛うじてあなたに会話が通じる瞬間があったのです」


 あの時の増大し続ける万能感を思い出す。

 高速艇のやって来たあの瞬間が、理性を失わないギリギリの瞬間だったと言うの?


「……それでわたしにどうしろと?」


 わたしが理性を失う前だったら、銀河の滅亡を防ぐ方法があるって言うの?


「もう一度あなたに、高次元因果律時空間干渉シークエンスを掛けます」


「高次元……、何?」


「あなた方が呪いとか運命シークエンスと呼ぶものの正式な呼称です」


 運命シークエンスをもう一回?


「婚約破棄の直後、王城に高速艇でお迎えに上がります。

 それにお乗り頂き、ローズマリー様には聖域にお越し頂きます」


「聖域?」


「本来は、銀河帝国の皇帝達が隠居した後に過ごすために開発された、安全で美しい環境の惑星です。


 そこで静かに過ごして頂きます」


「どうしてそんな事を?」


「ローズマリー様に終末の魔女になるような刺激を与えないためです。


 その惑星はブラックホールの重力にギリギリ引き寄せられない位置にあります。

 また、惑星は周囲の複数の恒星の重力の影響を受ける、複雑な公転軌道を持っています。


 誰かが侵入を考えても、それらの重力に阻まれ、辿り着く事はできません。

 時空を超越した我々だけが、それらの間隙を抜けられるルートを知っています。

 偶然に辿り着ける確率は、実に1億分の1程度しかない、宇宙環境の要塞です」


「一生ひとりで、その宇宙環境の要塞とやらに住めって?」


「はい」


「そのためにわたしの運命に手を加えたって言うの?」


「理性を失う前のローズマリー様に事実を正しく伝え、その上で時間を戻し、聖域にお住み頂き、生涯を終えて頂く。

 これがこの銀河の消滅を防ぐただ一つの方法なのです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ