第49話 婚約破棄からの宇宙3回目
「ローズマリー=マリーゴールド!
お前との婚約を破棄する!」
ファーワールド暗殺を阻止したわたし。
しかし惑星グランド上空にゴーディク率いる大艦隊が10日目に現れる事が判明した。
10もの艦隊を集結させた総攻撃の構えだ。
対するわたしは、銀河連邦の協力も取り付け、魔王ザンと魔竜リンドも救援に駆け付けてくれた。
何とか対抗する手立ては間に合い、まさに総力戦に臨もうと思っていた矢先、運命シークエンスが発動してしまい、わたしは死んでしまった。
前回と同じく10日目の発動だった。
準備を整えてもダメと言う事は、10日でこの戦いを終わらせなければならないという事なのか。
そんなの、可能だろうか?
「むむむ……………」
「聞いているのか? ローズマリー!」
いやいや、できっこない。
シャラーナも1年くらいは見ておいた方がいいって。
そもそも、ファーワールドには戦力を集めるから時間を稼げって言われてるくらいだし。
未来の勝利のためにできる事をして、仲間に後を託す、なんて事も考えたけど、わたしは結局、過去に戻されるのだ。
未来を託して、毎回死ぬなんて馬鹿馬鹿しい。痛いし。
わたしの運命は誰にも託す事はできない。
と、なれば、10日で決着を付ける方法を見つけるしかない。
でも、そんな方法本当に見つかるだろうか?
「むむむむむむ………!」
「ローズマリー!
その態度は何なのだ!!」
うるさいなあ。
目の前でゼイゴス王子が怒鳴っているけど、それどころじゃない。
「別件でいろいろ取り込んでおりまして」
王子の方を見ずに答える。
「婚約の話を差し置いて、別件とは何だ?!」
立ち上がり、肘置きに拳を叩きつける王子。
「まあ色々」
この惑星が侵略される件です、とは言えない。
「ならばさっさと出て行け!
地の果てでもどこへでも行くがいい!!」
王子の怒鳴り声がするが、
「地の果てなんて近所でどうにかできる問題ではないのです」
「近所なの?!」
この惑星に籠もっていても、状況は変わらない。
「銀河の果てまで行って来ます。
また戻って来ますけど」
「どこまで行くだって?」
「むむむむむむむむむむ………!」
困惑する王子には答えず、わたしは玉座の間を去った。
そして、
「と、言う訳なんだけど、シャラーナ」
取り敢えず彼に相談するしかない。
ちなみにティアラ病の特効薬は、彼が来る前に火を止め薬瓶に詰めて置いた。
これでじっくり相談ができる。
「銀河帝国の大艦隊が来るけど、10日が期限なんですか」
さすがの天才魔術師も今回の難問には即答できない。
「でも、戦争が1日で終わる事はないと思います」
それはわたしもそう思う。
銀河中心戦線の戦いとは規模が違う。
「と、すれば戦いが始まる前に止めるしかありません」
「どうやって?」
「ゴーディクに総攻撃の要請をさせない、というのはどうですか?
魔界にいる間にどうにか倒してしまうんです」
一瞬、現実的なプランと思った。
しかし一つの問題に気付いてしまった。
「銀河帝国の支配領域はこの惑星の目前まで迫っているの」
この惑星は銀河帝国の侵略の途上にある。
ゴーディクを倒したところで侵略は止まらない。
その上、メルテや銀河解放軍との接触の機会を失ってしまって、かえって困った事になりかねない。
「これもダメですかね」
「せっかく知恵を絞ってもらったのに、ごめんね。
わたしもいろいろ考えてみるから」
先の見えない暗黒の宇宙への旅は、あと何回続くか分からない。
それでもわたしは、手探りで向かって行くしかないのだった。
☆☆☆
宇宙10日目。
惑星グランドに帝国大艦隊が迫るまさにその瞬間。
惑星と艦隊の間に跳躍反応。
出現して来たのは高高度プラットフォームだった。
「銀河帝国艦隊に告げます。
ただちに軍事行動を中止しなさい」
女性の声で銀河帝国に向けて通信が行われる。
想像だにしなかった急展開に銀河帝国軍は大混乱。
しかし、女性の声はさらに続けた。
「わたしはマリーマリー連邦共和国、初代大統領、ローズマリー=マリーゴールドです!」
急転直下に戦いは終わる。
今回の10日間で、わたしは惑星グランド侵略を止める事に成功する。




