第47話 婚約破棄からの母星への帰還
銀河連邦は一つのスキャンダルの話題で持ちきりになっていた。
連邦本部のある惑星リムスにおいて銀河帝国がテロ行為に及んだというのだ。
その実態は暗殺活動で、商人に偽装したオートソルジャー部隊によるものだった。
テロは、議会に出席する予定の銀河解放軍の要人と、銀河連邦議員であるジャーゼラ氏をターゲットとしていた。
現役議員を狙ったテロリズムの情報は銀河連邦中を駆け巡る。
銀河帝国の野心と脅威は、銀河連邦中の警戒を促すに余りあるものである。
そんなメッセージと共に。
「昨日の襲撃は世論の関心を得る事ができたようだね」
ファーワールドの持つ携帯型のモニターでは、昨日の事件の図解や、議員会館の現在の様子が写し出されていた。
「これなら銀河連邦は惑星グランドを助けてくれるかしら」
「すでに艦隊の集結に向けて動き出しているよ」
「本当!?」
「銀河帝国に警戒する動きは元々あったからね。
ジャーゼラ議員もうまく立ち回ってくれている」
これで何とか希望が見えてきた。
「では惑星グランドへ戻ります」
状況を確認したわたしは席を立った。
侵略対象の惑星の人々はその事実を何も知らない。
この脅威を伝えなければ。
わたしは銀河連邦の高速艇で惑星グランドに帰還した。
「シャラーナはどこかしら」
懐かしの故郷だが、ノスタルジーにひたっている暇はない。
まずは彼と合流したい。
「シャラーナとは誰ですか?」
そう言えばメルテにはシャラーナの事を話した事はなかった。
「ここに来るまで色々助けてくれた子。
とても頼りになるのよ」
考えてみればメルテにはこれまでの事をちゃんと話してなかった。
婚約破棄されてから魔界を巡り、ゴーディクの高速艇に侵入し宇宙へ。
わたしはメルテにここまでのいきさつを話した。
「話は分かりましたが、聞いたところ、マリーの行動力によるところが大きいと感じます」
「そう?」
「そのシャラーナの役割はわたしの演算能力があれば事足ります。
マリーにはわたしさえいればいいのです」
なんだかメルテがシャラーナに対抗意識を燃やしているが、わたしとしては合流したいなあ。
かつての魔王ザンの居城、デビルマウンテン。
わたし達は魔界に向かった場所だ。
シャラーナと待ち合わせするならここだろうと思った。
「目的地に巨大生物の存在を確認」
そして、その予想は正しかった。
デビルマウンテンに黒い竜の姿が確認できた。
「あの大きさの生物を刺激するのは危険です。
脅威になるかも知れません。
迂回して着陸しましょう」
「大丈夫。下僕だから」
「下僕、ですか?」
禍々しくも強大なその姿は、わたしの下僕となった魔竜リンドの姿だ。
わたし達は彼のそばに着陸した。
「来おったか、マリー!」
わたしがハッチを開け、手を振るとリンドは鎌首を持ち上げた。
そばには魔王ザンとシャラーナもいる。
「マリー様!」
「よう」
「久しいな、マリーよ」
魔王ザンと魔竜リンドも親しげに話しかけてくる。
二人はともに魔神官ダイザーと戦った戦友でもある。
「銀河連邦の支援は取り付けたわ」
「さすがです、マリー様」
「あなたの作ってくれた魔法薬のおかげよ」
本当に彼にはいくら感謝してもし切れない。
「宇宙の話を聞かせて下さい」
「そうね」
ザンとリンドを交えた三人に、わたしは現在の状況を伝えた。




