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マリーは10回婚約破棄される  作者: 隘路(兄)
第三部 銀河帝国編
30/71

第30話 婚約破棄からの銀河解放軍との出会い

 わたし達の乗った戦闘艇は宇宙解放軍の戦艦に収容された。

 メルテの着艦は実に滑らかで、車輪が床に触れてもほとんど震動を感じなかった。

 ゴーディクの着艦の時は意図的に機体を床に激突させられた。

 その時とは大違いだ。


 戦闘艇用の移動式の階段が近付いてきたので、わたしとメルテはそれを使って機体から降りる事にした。


 ……のだが、メルテが立ち上がった瞬間、艦内にどよめきが起こった


「オートパイロット?!」


 兵士達の目の色が変わる。


「帝国軍のオートパイロットじゃないか!」


 メルテを指差しての怒声が聞こえる。


「彼女に助けてもらったんです」


 帝国の戦闘艇なんだから、帝国のオートパイロットくらいいるでしょうよ、と、わたしは思っていたのだが、


「何て奴を連れて来るんだ?」


「罠だったのか?!」


「騙したな!」


 どうも解放軍の反応が尋常ではない。

 戦闘艇から離れて行く兵士達。


「どういう事?」


 オートパイロットの存在がそんなに問題なの?


「オートパイロットは自分の意思を機械信号に変換できるんだぞ!

 この艦のコントロールをハッキングされちまったら、いつ自爆させられるか分かったもんじゃない!」


 ハッキングという言葉の意味は聞いた事ないけど、艦のコントロールを奪える、みたいな事なんだろうか。

 どうやら帝国軍のオートパイロットは相当警戒されているらしい。


「みんな、こいつらから離れろ!」


 ついに銃を向けられてしまう。

 何とか誤解を解かなければ。


「わ、わたし達はあなた達に危害を加えるつもりはありません。


 その、ハッキングとか言う事など、絶対にしないと約束を……」


「ハッキングは終了しました」


「そう、終了を…………、ええっ?!」


 約束する間もなかった。

 メルテの瞳の幾何学模様が回転している。


「メルテ、何でそんな事するの?!」


「演算しました」


 そうでしょうね。

 でも聞きたいのはそんな事じゃない。


「やっぱり敵じゃないのか?!」


 解放軍の人々が色めき立っている。


「ま、待って下さい!

 自爆などさせません」


 銀河帝国と戦っているなら、仲間になってくれるかも知れない。

 ここで怒らせて、敵対してはいけない。


「メルテ、刺激しないで。

 第一、自爆したらわたし達だって危険でしょ?」


「安心して下さい。

 機関部の暴走から爆発までの間に、発進する事は可能です。


 演算しました」


 そんな演算してあるんだ。

 しかし、全然安心ではない。


「あの銃はビーム兵器です。

 あれを向けられている事の方が危険です」


 撃たれた後では回避できない、だっけ?

 それは確かに危険だけど。


「今すぐ銃を降ろさなければ、この艦を爆破します」


 銀河帝国と敵対している人達ならば

 何とか協力したい。

 しかし、爆破なんてしたら、それは絶望的だ。


「ハッタリじゃないのか?!」


 解放軍の一人が震えた声で言う。

 しかし、


「ブラフやジョークの事なら、オートパイロットにとっては理解しづらい概念の一つです。

 ハッタリではないので、信用して頂いて問題ありません」


 とのお墨付き。

 ハッタリであって欲しかった。

 緊張状態は続く。


「マリー、やっぱり爆破して脱出しましょう」


「絶対ダメ」


 彼らを殺させる訳にはいかない。


「これは命令よ」


 マスターの命令なら聞くだろう。

 そう思っていだが、


「マスターの生命が最優先です。

 銃口を向けられているこの状況を回避する事は、マスターの命令に優先します。」


 うーん。メルテを引き止める事は難しいみたい。


 艦を爆破させられるメルテと、わたし達に銃を向けている解放軍。


 どちらがいつ仕掛けてもおかしくない、危険な状況だ。

 緊張のあまり気が遠くなりそうだが、考えなければ。

 犠牲者を出さない、いい方法は……。

 何か……、何か……。


「銃を下ろすんだ、同士諸君」


 その時、急に男の声が聞こえてきた。

 よく通る声で、その場の全員が彼に注目する。


 テラスの上に現れたのは、わたしより少し年上くらいの青年だった。


「リーダー!」


 ボディスーツを着込んだ人間が多い中、皮のジャンパーと青いデニム

 スタイルは一際目を引いた。

 テラスからふわっと降りて来る。


「はじめまして、お嬢様方」


 わたし達の目の前まで飛んできた男は、恭しくお辞儀をした。


「解放軍を率いおります、ファーワールド=マカリスターと申します」


 男は膝まづいたまま顔を上げ、笑顔を見せた。


「リーダー、そいつは帝国のオートパイロットだ。

 危険過ぎる!」


 解放軍の兵士からメルテを指差して声が上がるが、


「レディは丁重に扱うのが僕の主義だ」


 爽やかな笑顔で答える。


 しかし、兵士達は銃を降ろさない。


「彼女達と接触するためにこの星域に来たんだ」


「わたし達と?」


「銀河帝国の高速艇からの通信を傍受したのでここに来ました」


 きっとゴーディクが戦艦との待ち合わせのために送った通信の事だ。


「高速艇が惑星グランドから発進した事も分かっている。

 帝国はあの惑星への総攻撃を計画している。

 銀河帝国が侵略する惑星ならば、守るのが我々の理念だ。

 そうだろう?」


 兵士達が顔を見合わせる。


「帝国の戦闘艇とオートパイロットのデータを得るチャンスでもある。


 ここはわたしに任せてくれないか?」


 相談が始まる。

 やはりリーダーと言うだけはあって、一目置かれているようだ。


「あんたがそう言うなら仕方ないけどよ」


 解放軍はようやく全員武器を降ろした。


「メルテ、あなたもハッキングはやめて」


「了解です。ハッキングを解除します」


 メルテの瞳の幾何学模様の回転も終わった。

 銃が降ろされたからか、今度はすんなり言う事を聞いてくれた。


 ほっと胸をなでおろす。

 どうにか最悪の展開を回避できたようだ。


「少し話を聞かせてもらってもよろしいですか?」


 にこやかな笑顔で話しかけて来るファーワールド。

 断る理由はない。

 わたしとメルテはファーワールドについて行く事にした。


 ちなみに解放軍の人々も、わたしと変わらない外見をしていた。

 帝国だけがそうなのではないみたい。


「こちらへどうぞ」


 通された広い部屋にはすでに人がいた。

 眼鏡をかけた細身の中年男性だった。


「彼はメクハイブ=デネット。

 わたしの副官さ」


「よろしく。


 ファーワールドとわたしであなた方の話を聞き、その後の処遇を決める。

 いいね?」


 笑顔の裏に鋭い視線を感じる。


 ここでうかつな事を言ったら、拘束でもされるかも知れない。

 発言には注意をしないと。


「まずは名前を聞かせてもらえるかな?」


「ローズマリー=マリーゴールドと申します」


「何だって?!」


 ファーワールドは驚愕して、椅子から立ち上がった。

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