第22話 婚約破棄からの魔竜の背に乗る方法
「ローズマリー=マリーゴールド!
お前との婚約を破棄する!」
わたしに呪いを掛けた張本人、ダイザーは、円盤状の乗り物に乗り込んで空の彼方へ消え去った。
魔竜リンドなら追いつけそうだったが、乗せてもらえなかった。
人間を背に乗せる事はプライドが許さないようだ。
「わしは人間の下僕ではない」と言われてしまった。
「人間を背中に乗せる」というは、リンドにとっては極めて屈辱的な行為なのだろう。
その後ダイザーの部屋で彼の正体と目的を知る事ができたが、午前0時になってしまった。
やはりダイザーの円盤を逃がす訳にはいかないが、リンドはわたしを乗せたくない。
この状況をどうするか?
「聞いているのか?! ローズマリー!」
選択肢はあった。気になるワードはあった。
下僕ではないから、わたしを乗せないと言うのなら。
「下僕にするしかない!」
「どういう事?!」
あ! しまった。
ゼイゴス王子が青ざめている。
どこの世界に、婚約破棄した王子を下僕にしようとする公爵令嬢があるだろうか。
「えーと、これはその、あれです。
解毒……、の事です」
「解毒?!」
「えーと……。そう!
気分的にリフレッシュしたい。
つまり、解毒した気分になりたい……、みたいな?
そう言う気持ちなんです」
「そんな言い方するか……?」
知恵を絞って考えてみたものの、自然な流れてフォローできたとは言い難かった。
「と、とにかく。 ユウちゃん!」
ユウちゃんが勇者の衣を携え、飛んで来た。
「そう言う訳で」
わたしは勇者の衣を肩に引っ掛け、王子に背を向ける。
「魔界三強をぶっつぶし、魔界を制圧してきます」
「な、何を言ってる?
ちょ……、ローズマリー?!」
一目散に玉座の間から走り去るわたし。
やるべき事は決まった。
魔竜リンドをわたしの下僕にする。
結局、魔界三強は一通りやっつけるしかなかったのだ。
「シャラーナ。来て」
玉座の間を出る前に、シャラーナにも付いてきてもらう。
そして、
「ぐわああああ!」
速攻で魔王ザンをやっつける。
勝負が始まるや否や、死なない程度に袈裟斬りに斬りつけ、喉元に刃を突きつける。
その場を動かず、手先の動作だけでユウちゃんを操作。
もはやルーティーン。
しかし、ダイザーの罠に備えるのは後回し。
その前にしなければならない事がある。
「魔界に戻ったら魔竜リンドが待ち構えているわ」
「何だって?
なんでそんな事を知っている?」
「とにかく、わたしが一人でやっつけるから、魔界に送って。
そして、しばらくしたらあなた達も魔界に戻って来て」
「てめえ一体、さっきから何を言ってやがるんだ?」
わたしはザンの胸ぐらを掴んだ。
「ダイザーはヤバい奴だから、あなたとリンドの両方の力が必要なの!」
「ダイザーの事まで知っているのか」
「早くしなさい!」
「痛え!」
締め上げる力を上げたら、ユウちゃんの先にザンの首筋がわずかに刺さる。
「くそ、分かったよ!
だけどよ、本当にいいんだな?」
首を撫でてから悪態をつき、魔法陣の準備をするザン。
「お前一人で魔竜リンドに挑むつもりなのか?」
「リンドが強敵なのは知っているわ」
魔王と互角の魔界のドラゴンの王。
さらに、剣で斬りつけても刃の通らない鱗に覆われた相手だ。
「それでも、わたしは彼を下僕にする。
そうしないとわたしは未来に進めない」
わたしの真剣な表情に驚くザン。
しかし、しばらくわたしを見詰めると、
「訳が分からんが、本気みてえだな。
おれがお前に負けたのは事実だ。
リンドに勝てたなら、ダイザーを倒すために力を貸してやるよ」
「本当?!」
「おれもダイザーの奴は気にくわねえからな。
それにお前の顔を見てると、なぜか元々仲間だったみたいな気がしちまう」
わたしがそういう態度で接してしまったのかも知れない。
何しろ共闘は3回目だ。
「準備はできたぞ、行け」
魔法陣が光り輝き、ザンは離れて行く。
ユウちゃんを鞘に収めたわたしはただその場に佇む。
「よしなに」
ザンに会釈すると、わたしの転移は始まった。
早々に魔王ザンの協力を取りつける事ができてよかった。
後はいかに魔竜リンドを下僕にするかだ。
わたしは単身、魔界に旅立った。




