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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第2部「絶海の隠者」
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第1章 9-3 猛攻、凍結粉砕

 シロンがメイス、ガリア「花弁紋硝子状氷砕棍(かべんもんがらすじょうひょうさいこん)」を投げつける。いや、その先端が飛びでて宙を舞い、マレッティを襲った。鎖分銅のような動きをして、シロンの手の動きにあわせ急に上空に躍り上がったと思ったら空へ溶け込み、見えなくなって直上からマレッティを襲う。


 マレッティが砂浜を転がりながらそれをよけた。バアン!! と破裂音がして、砂浜が大きく陥没し、しかも凍りついていた。


 浮遊する棍の先端が素早く戻ってゆく。


 「さすがに、いい動きだ、サラティスのカルマ」

 マレッティの目つきが変わる。


 「……ちょっとあんた、なんであたしがカルマだと!?」

 「死人が知る必要はない」

 「こぉのッ!」


 マレッティが地味な細身刺突剣、円舞光輪剣(えんぶこうりんけん)より光輪をまき散らした。風に乗って四方からシロンを襲う。岩石、いや、鋼鉄すら切り裂く、必殺のガリアだ。


 しかし、シロンがメイスを振りかざす。凍てついた力が、光の輪ですら凍らせ、連続して粉砕、いや、爆砕した。


 「……なんですって……」

 キラキラと反射して砕け散り、霧散した我がガリアを見て、マレッティは愕然とする。


 「お前もこうなるのだ。大人しくしていれば、苦痛無く死ねる。どうだ?」

 急に軽侮した目つきをみせ、シロンがつぶやく。


 「死ぬか、ボケ!!」


 果敢にもマレッティ、光をまき散らして眼眩ましとするや、すかさず反撃に転じる。


 「こいつ!」


 シロンが、思わぬ攻めにひるんだ。マレッティ、光を反射して分身を作るや、光の輪ごと突きかかった。後光めいて光を放つマレッティを迎撃してシロンがメイスを叩きつけたが、それは分身だった。攻撃は空をきり、体勢を崩す。


 「もらったあ!!」


 だが、それもシロンの分身だった。シロンは冷気で周囲の水蒸気を凍らせ、マレッティの光すらも利用して、咄嗟にマレッティの技を真似て分身を作り出した。


 「ぎょっ!!」


 氷の影を攻撃し、砕け、それが分身だったと知るやマレッティ、条件反射めいてその場から離れた。瞬間、凍気が爆発し、氷の粒が周囲に飛び散ってマレッティを襲った。


 血を流して、マレッティが砂浜に倒れ臥す。容赦なくシロンが追撃! が、マレッティ自身が猛烈に明滅して、またも幻惑をかけた。


 「……厄介な!!」


 たまらず、シロンが間合いをとる。マレッティは逃げるようにして岩場まで走ったが、シロンがまたもメイスの先端を飛ばし、弧を描いて岩をも凍結粉砕する。連続してメイスがマレッティを追って攻撃し、マレッティは岩を渡って冷気から逃れたつもりで、波打ち際まで追い詰められた。


 「う……」

 シロンが早足で近づいた。


 「カルマ、死ぬのだ!」

 体勢を整える間も与えず、マレッティをメイスの先端が襲う。

 「なめてんじゃないわよ!!」


 何十、いや何百もの大小のリングスライサーが重なり合い、楯となってマレッティの前に光り輝く。バギィン! と軋んだ音がして、その光の楯が一撃で凍りつき、粉砕される。勢いでマレッティは飛ばされ、海に落ちた。


 「……!」

 冷たい。とにかく冷たかった。しかも足が届かない。溺れる。


 だが、波に押されてマレッティは膝ほどの浅瀬に転がった。砂と海水にまみれ、咳き込んでなんとか立ち上がるも、恐怖と寒さで震え上がり、隙だらけだ。


 シロンが初めて、愉悦に口元をゆがめて必殺のメイスを飛ばしかけたそのとき、

 「……きました、きました!」


 あのちんちくりんの炎の鞭遣いが走ってきてわめいた。


 「チィ」


 シロンは舌をうち、急いでその場を離れた。駄賃に振り向きざまメイスを飛ばしたが、届かなかった。が、重い凍気だけがかろうじて届き、マレッティの足元を見る間に凍りつかせた。ぶ厚い氷に両足を捕らわれ、マレッティが動けなくなる。


 「な……!?」


 なぜか、ごっそりと水が引いて、海底が露出する。マレッティの足を戒める氷の塊だけが残った。


 鞭遣いはシロンの手を取ると、急斜面の上の突き出た岩めがけて鞭を振り、ガリア「竜炎息状鞭(りゅうえんそくじょうべん)」が伸び、先端が岩をつかむと、急激な力で二人を持ち上げた。シロンを丘の上に上げ、次に鞭遣いは鞭を楯遣いめがけて丘の上から振り下ろす。楯遣いは未だアーリーと打ち合っていたが、伸びた鞭がその胴体を絡めると、熱さも無く一気に持ち上げた。


 「なに……!?」


 アーリーが見上げる。そして気配に気づき、後ろを振り返った。入り江の向こうで海水が小山のように盛り上がっていた。海水がごっそりと引いて、その山に吸い込まれている。海水の山は真っ黒に蠢いて、音を立ててどんどん盛り上がった。さらに、火山みたいに頂上から水蒸気が噴出しはじめた。


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