第3章 9-6 アーリーの魂胆
アーリーが声も無く二体の重戦闘型バグルスを斬竜剣の連続打撃で粉砕する。
デリナも、やおら立ち上がって小型バグルスを三体、その槍をなぎ払って撃退したが、デリナの攻撃の主力は毒であり、死体には効果がない。なぎ払うだけでは倒しきれずに、傷つきながらもバグルス達が立ち上がって再びデリナへ迫った。
「……!」
そのバグルスを、アーリーが斬竜剣一閃! 爆炎がバグルスを粉々に燃焼爆発させる。
その爆発の勢いに、力なくデリナがよろめく。精神的に、もう、弱っている。アーリーが走りより、デリナを片手で支えた。
「アーリー……」
デリナはアーリーの赤い視線より顔をそむけ、その手からも逃れた。
「今更なんのつもり。なんの魂胆があるの」
「お見通しか……」
「はっきり云ってちょうだい」
「デリー……聖地では、一時的に審神者をやっていたそうだな」
デリナが顔を上げる。しっかりとアーリーを見た。その話ならば、見ざるを得ぬ。
「それがどうかしたの」
「なぜ、審神者に?」
「さあ……たまたま数がそろってなかったのと、わたしにその素質があったらしいわ」
「他の審神者達はどうした」
「死んだわ」
「そうか……やはりな」
「だから何なのよ。はっきり云って」
「ダールの数を減らすわけにはゆかん。カンナのためにも……」
「?」
「審神者の代わりに、我らダールが神代の蓋を支えるのだ」
デリナの顔が、ひきしまった。
カンナとレラの接近戦から、ストラ竜神が逃れ続ける。ストラの子供の肉体では、確かに大きな長柄の戈は扱いづらく、いかに竜神といえどカンナとレラの接近戦用武器のガリア相手では不利だった。
しかも、まだ神の喉も回復していない。
(この少女の姿が仇となったか……)
それでも、竜神はストラの姿を留めていた。
「神様のくせに逃げるなんてよお!」
レラが加速する。
一気にストラへ追いついて、その長柄の間合いに入った。狙うのは、そのか細い手だ。レラの力でも、容易に指や手首を一刀両断できる。そうすればもう、武器は持てない。
ピシュウ!! 風切音がして、切っ先が寸分違わずストラの右手首をとらえた。瞬間、ストラの手首に分厚い竜の鱗が現れる。とうぜんガリアであるから、竜の鱗などむしろ軟らかい。それなのに、切っ先は少し食いこんだだけでがっちりと遮られた。
「なんてやつ……」
さしものレラも、寒心する。
「レラ、離れて!!」
バッ、バッ、バンバンバン、ドババババババッ……! カンナは音響破裂で推進するので、大きな音を発しながら回りこむ。
「そろそろ遊びは終わりにするか!?」
竜神が力任せに硬直するレラを竜の手で押しつけて離し、そのまま戈の柄を叩きつけ、振り回した。咄嗟に刀で受け流しの構えをして防御の姿勢となったが、凄まじい力で叩かれ、レラが振り回され地面へ落ちて転がった。受け身もとれずに身体を岩盤へ打ちつけ、うめく。
「贄共!!」
竜神の眼光が発せられる!! カンナが突進し、レラとの間に割って入ろうとしたが間に合わない。
「レラああああ!!」
レラが眼前から発せられる神の光線へ重力の凹レンズを作って、なんとかその光を拡散して逃れた。
その拡散した真紫の光線をまともにくらったのが、ガラネルの出した超主戦竜たちだった。
元より死体が動いており、生体のような強度はない。次々に死の光線に切断され、破裂し、爆発して再び死体へ戻る。ショウ=マイラとマイカをも光線はとらえたが、ショウ=マイラがマイカを抱え、次元の断層に隠れてそれをやり過ごした。
驚いたのはガラネルだ。しかし、竜神の成すこと。否やも何もない。こちらがそれへ対応しなくてはならない。
(残っている竜は……)




