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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第8部「神鳴の封神者」
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第3章 8-4 神様は気まぐれ

 「な、なによ……」

 カンナは、やや黙っていたが、

 「なんでもない」

 微笑しながら云い、マレッティが何か云う前に、

 「じゃ、遠慮しないでご飯たべようっと」


 アーリーがカンナの肩を優しく叩き、ライバ、スティッキィも連れて四人で行ってしまってから、マレッティは不服そうに口をとがらせていたが、


 「あーあ、おなかすいた」

 自分も立ち上がって、後に続く。



 ガラネルとデリナは、にわかに参拝者が増えてこの三日はカンナどころではなかった。とにかくひたすら二人で朝から晩まで拝殿儀式を行い、新しい竜神村として再建した村もたったの数日ではその数の参拝者に対応できず、みな野宿だった。いや、参拝者たちが勝手に建物を建て、温泉まで掘り出して仮設の風呂まで作る始末だった。


 「参ったなあ……」


 食事をする暇も無く、仮神殿の裏の小屋で礼服のままデリナと二人、粥と漬け物の遅い昼食をとっていると、


 「たいそうな参拝客ではないか。賽銭もたんまり集まったか?」


 聴いた声がして、ふとその方向を見ると……あい変わらずストラの姿をした紫竜神がいるではないか!!


 粥を噴き出さんばかりに驚き、ガラネルとデリナがあわてて席を立った。


 「い、い、い、いつ、御戻りに……!?」

 「いまよ」

 「で、ですが、かような場所に……」

 「きにするな」


 無理な相談だ。しかも、いきなり竜神が顕現では人々のパニックがどれほどか、想像もつかない。ガラネルがパニックとなる。


 そこへ、最初に集まって紫竜神社の手伝いをしている村人が入ってきた。

 「宮司様、そろそろ、交代をお願いします」


 いま、参拝客の相手は近所の神社よりやってきた宮司へ代理を頼んでいるのだった。


 「宮司様?」


 デリナとガラネルが部屋の壁へ向かって深く拝礼しているので、村人はいぶかしがった。


 ギョッとしてガラネルが村人を見たが、村人は不思議な顔でそれを見返した。思わずガラネルとデリナがストラ竜神を見る。確かにそこにいて、にやにやしている。


 「どうされました?」

 どうも、村人には見えていないようだ。


 「()はまだ、身体へ戻っておらなんだからな」

 つまり、霊体というか、神体というか。実体化していないというか。


 「畏れながら御戯れがすぎまする」


 ガラネルは息をつき、適当に返事をして村人を下がらせた。村人はやや戸惑いながらも、ペコペコと頭を下げて行ってしまった。


 「忙しいのう。忙しいことはよいことぞ。賽銭はちゃんと管理しろ」


 やけに人間臭いことを云う。実際に人々と接する土着神というのは、こういうものなのだろうか。ガラネルとデリナが顔を合わせているうちに、ストラ竜神は消えてしまった。


 「なんだったの?」

 初めて竜神を目の当たりにしたデリナが、呆けたように云った。


 「さあね……神様は気まぐれなんでしょう?」

 「なによ、それ……」

 「でも、ま……」


 こちらへ帰ってきたということは、きっとカンナも目覚めているのだろう。

 「神業合(かみわざをわせ)が始まるわ」



 神々の戦いがどれほどの「被害」を周囲に与えるのか、想像もつかない。とりあえず、ごった返す参拝客をどうにかするべく、急いで仮本殿を移すことにした。理由は、簡単であった。神威が凄すぎて、あまりに近いと「障り」があると云うと、もとよりそういう信仰で生きているホレイサン人たちは面白いくらい素直に従って、


 「あっ……」


 という間に仮本殿やその他の建物を解体し、運び、また建てて、参拝客らも巻きこんで村落そのものを一里ほども湖から離してしまった。


 それをほとんど丸一日でやってしまったので、ガラネルもデリナも驚愕するほかはない。まるで蟻だ。


 「すごいわね……」

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