表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガリウスの救世者  作者: たぷから
第8部「神鳴の封神者」
648/674

第3章 7-4 審神者達

 「審神者(さにわ)どもなんか、みんな死んだわよ」

 ガラネルの声が引き攣ったように据わり、紫に光る眼元も歪む。


 「なんですって……!?」

 さすがにマイカも息をのんだ。ショウ=マイラを見やる。ショウ=マイラも黙りこんだ。


 「?」

 空気が少し変わり、ガラネルも様子を見る。


 「……いいこと教えてもらっちゃった」

 ショウ=マイラの声も、少し変わっていた。

 「どういうことよ」


 「神代(かみよ)の蓋を支える七人が、全員いなくなったってことよ。聖地も滅んだし、もう二度と神代の蓋は支えられない……」


 「どういうことかって聞いてんのよ……!!」

 ざわり(・・・)、ガラネルの殺気がふくらむ。


 「ピ=パの審神者達は、ただの拝み屋でも神の口述家でもないの。ヒチリ=キリアは何も云ってなかった?」


 ガラネルが黙る。何も云っていない。もっとも、あの先代黄竜の性格からすれば、聴かれてもいないことをべらべら話すものではない。それは理解できたし、むしろその性格を好んでいたので、ヒチリ=キリアを責めるつもりはなかった。


 「本来は、我ら黄竜と碧竜のダールで聖地の蓋を開け閉めするとき……開け放たれた聖地の蓋を支える役目が審神者にあったのよ。その数は七人……紫竜神様を御顕現なさったとき、審神者達が無意識のうちにそれを行った。そうでなくば、神代の蓋などとても神が実体化するほど開けていられない……審神者以外の、人の力ではね」


 「ダールといえども人ということです」

 ガラネル、云っている意味が分からず、思案する。つまり、


 「そいつらがいなくなったってことは……もう神代の蓋をあんた達が開いても、対抗させる次の竜神は出てこられない。紫竜様は、いったん実体を現世へ顕現なさったから、あとは神の力で魂魄を自由に行き来させられる。そして竜神様を神代へ返そうとしているあんた達にしてみれば……」


 ガラネル、にやっとその紫色に光る眼をゆがませ、もう脱兎がごとくその場より消え去ってしまった。


 二人が、(ジッ)とその光の痕を見つめた。

 鵺の声が響いている。



 「馬鹿な奴ら、重大な秘密を私なんかにペラペラと……」


 日空竜は昼行性なので、夜間飛行は技術を要する。ガラネルはその技術を持っている一流の竜騎兵(ガルドゥーン)だった。そもそもアトギリス=ハーンウルムの紫月竜(しげつりゅう)は逆に夜行性なので、夜間飛行はアトギリス=ハーンウルムの竜騎兵の十八番なのだ。


 ガラネルは可笑しくて、上空で風を受けながら高らかに笑ってしまった。


 「しょせん、雲隠れして大事を何百年も先送りにしていた連中ね……! これで、万が一にもカンナの封神(ほうしん)は成功しない! 紫竜皇神様が直にこの世を統べ、それを奉ずるアトギリス=ハーンウルムの千年……いや、万年王国が誕生する!」


 勝利を確信し、楽しくてしょうがない。

 とはいえ……。


 あそこまでのダールが二人して、そんなうっかり(・・・・)で口を滑らせるだろうか? という思いもある。


 そこがさすがに、ガラネルだった。

 もう一度、意味を考えた。


 (あいつらが再び神代の蓋を開ける……こっちは、デリナとヒチリ=キリアがそれを妨害できる可能性がある……そうか……そのためにまだ二人とも生きているのかもね……カンナの役目は、開いた蓋へ竜神様を追い返して、封印をかけること……のはず……そのために、実は審神者達が必要だった……でも、連中はみんな死んだ……はず……いま残ってるのは審神者も兼ねていたデリナだけ……)


 どう考えても、向こうに不利ではないか。


 (何か対策をこれから考えるのかもね……! でも、そんな大逆転できるような状況には思えないわ! いくら黄竜と碧竜の秘儀があろうとね……)


 とにかく、ヒチリ=キリアが戻ったらいろいろ教えてもらうことが増えた。

 ところが、ヒチリ=キリアは戻らなかった。



 アーリーがパオン=ミ達と合流したのは、その翌日の朝である。


 スーリーをシャクナの近くの林へ隠し、パオン=ミとスティッキィは町の裏手の山から直接聖地の分社へ入った。すぐさまマラカが出迎える。既に話をつけてあるのだ。大したものだと思った。


 なんと、既にアーリーとライバが到着していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ