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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第8部「神鳴の封神者」
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第3章 6-2 激闘の後ろで

 湖を見下ろすような丘陵地へ着地し、スーリーが離したので草むらへ転がってマレッティはどっと両手をついた。


 そのとき、湖の上空で激しい炸裂がおき、湖面を照らしつける。カンナと神が戦っているのだろう。


 「カンナちゃん……!」


 スティッキィが立ち上がってそれを見守る。マレッティは目尻をひそませ、そんな双子の妹の後ろ姿を見やった。どこまでカンナへ心酔しているのか、見極められない。


 とはいっても、やはり自分もカンナの戦いへ眼をやらざるを得ない。規模が違う。ここまで爆風と衝撃が迫ってくる。


 (カンナ……)


 手で顔をおおい、激しい空中戦を見据えた。もはや、人の戦いではない。話を聞くに相手は神だ。正直、こうして実際に見ていてもそんなことは信じていないが、人間ではないというのは信じられる。人間でなければ、アレら(・・・)はいったい何なのか……マレッティの興味はそこへ移ってきていた。


 「アアッ……!」


 何人かの悲痛な声がする。おそらくカンナが、対岸の地面へめりこむまでぶっ飛ばされた。


 だがすぐさま反撃に出る。湖の上空へこだまする爆音を伴って、竜神へつっこむ。再び幾度かの激しすぎる人知を超えた干戈を交え、接近して押しあっているように見えたのち……一気に離れ、竜神が追撃。ついにカンナが圧倒されはじめた。


 「あれは、なんだ!?」


 パオン=ミが叫び、思わずミナモを見た。何か知っているかと思ったが、ミナモは真剣な顔で古い神と新しい神の戦いを凝視している。


 竜神の周囲に、無数の人魂……のような炎にも蛍めいた光の粒にも見える真紫の光が集まって、カンナへ向けて襲いかかっている。カンナが次々にその光を黒剣で払ってゆくが、数が多すぎる!


 その瞬間、戦いのさらに上空へ光が生じ、明らかに何人かの人物がその光の中から出現した。


 「!?」

 強大な爆炎に、

 「もしやアーリー様か!?」


 と、パオン=ミが叫ぶも、あとの数人は分からない。が、その爆炎が風に乗って消え去って、カンナやその数人もいなくなっていた。それどころか、戦っていた相手もいない。


 「あ……?」

 一同は茫然と、湖の上と砕けた島をみつめた。

 スーリーが、大きなくしゃみをした。



 見知らぬもの同士は紹介しあい、七人はさっそく今後の打ち合わせを行った。


 「その前に、もういっかい確認したいんだけどお、相手が神様ってほんっとうにほんとなのお!? なんか、カンナちゃんよりちっちゃくて……子供みたいだったわあ」


 マレッティが腰へ手を当て、半分ひきつったような顔で、ミナモへ向かって云った。言葉が分からなかったが、パオン=ミが通訳する。


 「確かに子供のような姿に見えたが……分からん。だが、神以外にあのような力は出せまい。直にやりあったバスクスへ合流し、聴いてみるが良い」


 パオン=ミとマレッティ、それにスティッキィが見合った。

 「……まるで、殿下は合流されないような云い方に聴こえますが……」


 「そのとおりだ」

 パオン=ミへ答え、ミナモは、再び静まり返った湖へ目をやった。


 「余は、ディスケル皇太子殿下を捜索せねばならん。これからの世に、必要な御方だ」

 「ディスケルの……」


 確か、カンナ達と共に聖地へ来ていたはずだが。パオン=ミは、ライバとスティッキィを見た。


 「……カンナちゃんの云う通りになっちゃったわねえ。皇太子殿下、無事に逃げられていたらいいけれど……」


 これはスティッキィだ。

 「なに、カンナちゃん、ああなるのを予言してたわけ」

 「予言というより、予感なんでしょおねえ」


 この双子が並んでいるのを初めて見るマラカは、興味深げに観察していた。


 「では、殿下は、湖へお戻りになられると」

 「宿場町近辺を捜してみる」

 「何も残ってないじゃなあい」


 マレッティが目を細めた。津波と地震による倒壊で、聖地の対岸にあった宿場町は跡形もない。

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