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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第8部「神鳴の封神者」
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第3章 4-4 反撃の狼煙

 「ですがアーリー、いくら先ほどの戦いの余波で混乱しているであろうとはいえ、ホレイサン=スタル内を我々が堂々と五日も歩けるとは思えません。どうやってカンナを連れて行きますか?」


 マイカも入ってきた。混乱しているからこそ、街道筋の関所は厳しさを増しているだろう。ダールとはいえ全員が異邦人である。無事にすんなり通れるとは思えない。


 「私のガリアを使おうか?」


 ショウ=マイラの黄金の竹杖は次元断層と断層内移動の力がある。ここまでも、断層の歪みを通ってきたのだ。


 「そうだな……だが、神代(かみよ)現世(うつしよ)の境目を通って、影響はないのか?」

 「影響って?」


 「相手に移動を勘づかれないか?」

 「そうねえ、その可能性はあるかも」


 そう、ショウ=マイラがあっさり云い放ったので、マイカも驚く。

 「では、ここも相手に知られていると!?」


 「ここはすぐ近くだから、逆に近すぎて分からないのよ。でもね、移動距離が長いと勘づかれる可能性はあるかも、ということ。わかるでしょ? ね? ね? もしかしたら、神代に帰っているかもしれないし」


 神代へ帰る?

 「どういうことだ?」


 「現世に来たばっかりだから、神通力の消費が激しくて、お休みになられているかも、ということよ。意識だけ神代に戻っていたならば、向こう側で襲われるかも」


 アーリーも絶句した。神とはいえ、現世へ来たら来っぱなしだと思っていた。そんなことがあるとは。マイカと眼を合わせる。そうであれば、是が非でも歩いてゆかねば。


 「もうめんどくせえぜ。いいから、アーリーは姉貴を背負って山んなかでもどこでも行きなよ。あたしが囮になるから」


 「なんだと!?」

 「アタシは姉貴と似てるんだろ? 敵さんは気配を感じて、アタシを襲うかもしれないだろ」


 「む……」

 確かにその可能性は高い。しかし、レラを一人で行かせるわけにはゆかない。


 「私とマイラが、レラと共に行きます。アーリーはカンナを連れ、湖の北街道を。我々は南街道を。両街道の行き着く先がシャクナです」


 「しかし……」


 「どうせ騒ぎになるんだろ? それなら、思いっきり暴れてやるよ。得意だぜ? 四の五の云ってる場合か?」


 アーリーがうなずき、立ち上がった。


 「だが、レラ、勝手な行動はやめておけ。カンナのためにならないからな。ショウ=マイラの指示に従え」


 レラは明らかにムッとしたが、

 「分かったよ」

 舌打ちしつつ、鼻息も荒くうなずいた。


 「きまりだわ! いざとなったら、私たちはこの杖で……ね! 短距離まで近づいておいて、消えちゃうから」


 ショウ=マイラが笑顔で金の細竹杖をふりかざす。

 そうとなれば話は速い。


 手分けして家捜しをし、芝や薪を背負う背負子を見つけるとそれへカンナを坐らせて紐で縛って固定し、アーリーが背負った。メガネは外して、カンナが大事にしている竜の角より造った特製のメガネケースへ入れる。食料になるものは干し肉や干し柿、あとは干した穀物(()(いい))があったので失敬する。簡単に最終の打ち合わせをし、そのまま、


 「では、五日後に!」

 「私たちは心配ないから、しっかりね!」

 二手に別れて、山を超えた。



 アーリーはその日の午後から夕刻にかけて一気に山を超えてしまい、再び湖を見下ろす高台へ出た。ガタガタに崩れ、分断されて複数の断崖絶壁の島と化した聖地を遠目に見やり、またその遠くへ落ちかける夕日を目にして、そのまま夜陰に乗じて山を下り、街道へ出ると北回りに走った。


 月が出て、深夜半には再び峠を越えて湖が見えなくなる。街道はそのまま緩やかに丘を下がって、平原をまっすぐ東へ続いている。これはホレイサンの皇都まで続いている。途中途中に明かりが集まっているのが見える。関所と宿場町だ。地震の影響でまだ騒然としている。

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