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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第8部「神鳴の封神者」
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第3章 3-1 神威

 「さて……我の役目は終わった。では、さらばだ」


 ヒチリ=キリアも、ガラネルの出て行った後に続いて、その場をさっさと立ち去ってしまった。残ったのは、元よりある大蝋燭の明かりと、恐る恐る顔をあげる審神者(さにわ)たちと、柱にくくりつけられてぐったりと顔を下に向けているデリナのみだ。


 神を本当に出したはいいが、これから何をするのか、どうなるのはいまいち想像がつかない。なんにせよ、あのような姿で現れるとは意表をつきすぎている。ガラネルが確かに、そのようなことを云ってはいたが。


 「と、とにかく儀式は成功した……呆気ないほどにな。真なる神が、この竜神の世をさらによくして下されよう……」


 長老が云い放つ。


 そして大量の血を吐いて前のめりに倒れた。一同、何が起こったのか理解できない。


 その眼が虚空めいて闇を反転して白く光らせたデリナが、暗黒の毒気を放ち、ゆっくりと顔をあげた。


 そのとたんに、大地震が小島を襲い、石室が一気に崩れた。

 


 3


 巨大な湖の対岸までふっ飛ばされたカンナ、そのまま土砂を巻き上げて地面へめりこむ。音響の防壁を造り、地層を砕いても勢いは止まらず、地面を穿って突き進み、カンナはゆるやかな丘陵斜面の途中まで突き進むと、そこから音響の大爆発を起こして反動で再び紫竜神めがけて吶喊した。楽しげに少女の顔をゆがめ、神がその眼を真紫に光らせる。そして大口を開け、竜神の息吹を吐いた。これも青白い紫色に輝く光線が一直線にカンナを襲った。再び音響がその光線をも弾いて散らす。拡散した光線が湖へ落ちて水蒸気爆発を起こす。そのまま黒剣を構えて音速で神へ向かう。……いや、ソニックブームが起きて音速を超えている。ドゴァア!! 空気の破裂する音がして、いま猛烈に爆発した湖の上に波が立つ。


 紫竜は「神威(しんい)」を盾にしてカンナを迎えた。神は人々のひれ伏す神威そのものが防壁として物理攻撃を防いでしまう。


 バリバリバリ……バギィッ!! 神威をものともせず、カンナが防壁を次々に突き破って進んだ。まさに神をも恐れぬ所業!!


 「生意気な!!」

 竜神が牙を剥き、その手を竜の爪でおおって迎え撃つ。肉弾戦!

 「ウアアアア!」


 カンナの共鳴が神へ向かう。球電と音響弾が数えきれぬほど出現し、一気に紫竜皇神を襲った。ニヤリ、と笑いガラネルの娘ストラの姿をした竜神が再び神威を振りかざす。数百もの階層となった神威がカンナの攻撃のことごとくを防いだ。カンナ、こちらも肉弾線とばかりにその隙間を縫って吶喊!


 バイン! ビイン! ギュヴァン! 空気が圧縮されて独特の音を出す。カンナの剣撃と竜神の繰り出す掌打が湖上の空中でぶつかり合う。


 「やりおるわえ!」


 意外な手応えに、楽しそうに竜神が笑った。逆にカンナは必死だ。いま決めないと身体がもたぬ。


 「そるぁあ!」


 竜の羽ばたきめいて竜神の掌打が残像を残し、神の打撃がカンナへ襲いかかる。カンナ、死に物狂いでそれらを黒剣で受け続けた。


 するとそれらの手から紫色の炎が上がり、カンナを取り巻いて燃えあがった。カンナは音響を発して霧散させる。だが続けざまに炎が襲いかかって来る。しかも竜神はその眼までも紫に光り、再び大口も開け、両目と口から竜の怪光線が発せられた。それへ加えて肉弾戦で攻撃が迫る。


 カンナが顔をしかめた。対応しきれない。

 「イイィエヤアア!!」


 とにかく気合を入れる。バンバンバン! 音響が炸裂した。光線が反射して次々に明後日の方向へ飛ぶ。その隙をついて、恐るべき炎をまとった掌打が振りかざされる。少女の姿をしているからと云って、侮ってはいけない。触れるだけでどのような目にあうか、想像もしたくない威力を秘めているのが見るだけで分かる。


 「そおれ!」

 竜神が楽しげに迫った。


 繰り出される重連攻撃を、カンナが剣先で弾くように受け続ける。竜神は踊るようにカンナを攻撃し続け、カンナはどんどん下がった。


 と、連撃の限界か、竜神の攻撃が一瞬止まり、硬直したように前ががら空きとなった。


 好機! その間隙をついてカンナが反撃する。が、それは神の誘いだった。サッと体をひるがえし、突き出された黒剣の剣身を、竜神が右手で鷲掴みにする。


 「……う……!」

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