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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第8部「神鳴の封神者」
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第1章 5-5 迎賓殿の女給

 そのスティッキィの右手を、闇星(あんせい)の合間を縫って飛んできた天限儀(てんげんぎ)の鎖分銅がとらえた。


 右手が引っ張られ、スティッキィが堪えたが忍者の力にはかなわない。向こうも女……くの一(・・・)のはずだが凄まじい力だ。


 「こ、こいつ……ッ」


 歯を食いしばる。自らを護る闇星の群れから二つ、三つが鎖鎌へ襲いかかったが、忍者が鎌を振るとこちらも影色の刃が飛び道具のように出て、星を打ち落とす。これが鎖鎌の力か。


 ならばとスティッキィ、ひっぱっておいてその反動で一気に突きかかった。ただの突進ではない。突きと見せかけて裏カントル流の秘技である回転蹴りが炸裂! しかも大量の闇が目くらましとなる!


 だが体術なら忍者も負けていない。いや、それはもはや忍術だ。すかさず鎖分銅の鎖をゆるめ、歩を変えてぎりぎりで回し蹴りを避けるや螺旋を描いて鎖をひょい(・・・)とスティッキィの首へかけたではないか! しかも天限儀であり、鎖は自在に伸びる。スティッキィの蹴りの動作が終わった途端、後ろへ下がる。と、ギャウッ、と鎖がスティッキィの細い首を絞めた。


 「!?」


 スティッキィにしてみれば、蹴りが終わった瞬間に自分の首へ鎖が締まっている。いつ鎖をかけられたのかも分からなかった。


 「ガ、フッ……!」


 鎖を左手でつかみ、懸命に耐える。右手も鎖で封じられてい、それが引っ張られて手首へくいこみ、骨も折れんという激痛がした。その間にも鎖が蛇めいて自ら動き、ぎりぎりと首を絞めた。闇星が鎖を断ち切らんと鎖を襲うが、流石に墨糸のようにはいかなかった。切れない。


 鎖鎌が無言で合図をし、もう一人が動く。その無防備の背中へ大脇差が迫る!


 ヴァジュアア!!


 スティッキィが眩しさに眼をつむる。熱さと衝撃で、鎖鎌の忍者と二人してひっくり返った。


 カンナの雷撃だった!


 だが、それはスティッキィを援護したわけではない。大型重戦闘バグルスとの戦いで、ちょっと(・・・・)漏れた(・・・)稲妻がたまたまスティッキィを襲おうとした忍者をとらえたのだ! 大脇差しを持った忍者たちは衝撃と電撃で肉体が避け、焼け焦げて転がった。


 「ふぃみいいい!」

 カンナが猫みたいな声を発して、さらにバグルスと共鳴する。

 スティッキィは、あわててその場より逃げた。

 「あんたも、速く逃げた方がいいわよ!」


 言葉が通じずとも、鎖鎌のガリア遣いへ云う。そのスティッキィを、弛んだ鎖が再び戒めた。スティッキィ、ガクンと引っ張られ、バランスを崩す。


 「このバカ……!」


 スティッキィは忍者と対峙した。膝をついた姿勢から鎌を持って、忍者がスティッキィへ踊りかかる。スティッキィは思い切って仰向けに地面へ背をつけ、その姿勢から忍者めがけて蹴りを放った! 


 だが、ふだんは固い野外用ブーツで蹴りつけるが、いまは裸足であった。それでも踵を利用し、なによりガリアの闇の星がまとわりついて足を防御すると同時にその鋭い星の刃が忍者を襲った。


 たまらず鎖鎌遣いめ、仰け反ってそれを避ける。蹴りが覆面と面頬をかすってはがれ、忍者の素顔がかいま見えた。以外に愛らしい女性の顔が露出する。それを見てスティッキィ、ぎょっとした。どこかで見覚えのある顔だった……。忍者が顔をしかめながら腕で隠し、少し下がった。


 スティッキィ、思い出した。迎賓殿で働いている、ホレイサン人の女給ではないか。


 「さすがライバ……読みは大当たりというわけねえ」

 既に、使用人の中に忍者が紛れこんでいたのだ! 


 跳ね上がって起きたスティッキィが猛獣めいて闇星を繰り出し、その漆黒の刺突剣で突きかかる。忍者も分銅を螺旋に操って防御陣とし、スティッキィの星を砕いた。


 「とぉおおおああ!!」

 「ぬああ!!」


 分銅鎖の螺旋攻撃を闇星で防ぎつつ、スティッキィの凄まじい連続突きが忍者を襲う! 忍者が鎖鎌の鎌より影の刃を出し、それを受ける。


 「ハッ、トオォ、イェヤ!」

 「エイ、オウ、エイ!」


 ギャウッ、ガイッ、ギャィン! ガリアの刃がぶつかり合う独特の音が響く。ザアッ、と星が流れ、地を這って忍者の背後へ回る。同時にそれを追って鎖分銅も忍者の周囲へ防御陣を張った。さらに闇星が分散し、頭上からも忍者を襲った。さらに、四方八方から手裏剣めいて高速回転した闇星が忍者めがけて殺到した。

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