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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第7部「帝都の伝達者」
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第1章 5-4 再びの銀の首

 タカンを後ろ手に庇い、火の鳥達が乱舞! それぞれがガリアのため自在に動く短矢に対し、こちらも縦横無尽に動いて、的確に銀矢を迎撃する。連続して爆破がおき、銀短矢を相殺する。湖面と砂浜が炎色に染まった。


 だがバーララの狙いは、最初からパオン=ミへ迎撃させることだった。爆炎にまぎれ、飛竜だけがパオン=ミめがけてつっこむ。パオン=ミ、両手を合わせて掌の中で符を合わせて大きめの火の鳥を造ると、竜めがけて放った。まっすぐに竜へ突き刺さり、体内から燃焼爆発して竜が粉微塵に燃えあがる。


 そのときには、岸へ下り立ったバーララが走りこんでタカンへ狙いを定めていた。

 タカン、対処できずに、声も無くただ腕で顔をおおうのみだった。


 一瞬、遅れた。


 呪符を構えたときには、バーララの銀矢がタカンめがけて発射され……たと思ったところで、岸辺のきれいな川砂がバアッと吹き上がり、隠れていたマラカが出現する。身にまとっていたガリアを解除して、圧縮。両手に小刀のようにして握った。


 あわてて射線をマラカへ向けたが、そのときにはバーララの右手首が、弩弓ごと切り落とされていた。


 「グゥウ!!」


 唸り声をあげ、右手首を押さえつつ、うずくまるとみせかけて左手にガリアを出して、バーララがタカンを狙う。


 が、バーララの視界に、炎が燃えあがった……。


 パオン=ミの火炎華符(かえんかふ)が土手っ腹へ突き刺さり、バーララは炎の花びらを上げて一撃で爆破され、跡形もなく燃え尽きた。


 さて、マレッティだ。マレッティを助太刀しなくては。


 見やると、しかし、マレッティはちょうどその最後の頭の顎から上をふっとばして、巨大竜に勝利していたところだった。



 三首銀亀竜(さんしゅぎんきりゅう)はその三つの首から轟々と火を噴く。竜はその胴体の中に可燃性ガスの元である粘性の高い液体のつまった臓器があることは分かっているが、この特殊な種類の竜はその巨きな胴体に三つの首から吐く分の巨大な臓器が納まっているのだろう。炎はマレッティめがけ、時に順番に、時に一斉に吐きつけられ、三頭の竜を相手にしているようだった。


 こういう相手には機動力で攪乱するのがもっとも手堅いが、このように要所へ陣取られ、かつ右手は湖、左手は山の斜面でこちらは動きがとれないという状況では、こういうたぐいは無類の強さを発揮する。


 あの炎に巻かれたら、歴戦のガリア遣いとて一撃でお陀仏だ。おそらく火竜のダールであるアーリーでなくば耐えられないだろう。あるいは、本気を出したカンナか……。


 竜の炎は、避けるのが基本なのだ。

 だが、いま、避ける余裕がない。


 となると、攻め続けるしかない。とにかく攻めだ。こちらを攻撃させる暇を与えず、ひたすら攻める。


 マレッティはガリア「円舞光輪剣(えんぶこうりんけん)」を振りかざし、ほとばしる光輪をばらまき続けた。炎を切り裂き、飛散させる。数の勝負なら自信があった。その意気昂揚たる精神力から沸き上がる光輪は、次から次へと無尽蔵に竜へ向かう。火炎噴射を遮断し、火炎弾を空中で霧散させる。さしもの三首竜がひるんで鳴きわめいた。その隙を見て、その長い首めがけて光輪を交差させる。また予備として直上から甲羅めいた背中へ幾つもの光輪を落とす。


 だが、並の主戦竜ならば一撃でその足を切断し首を落とすリングスライサーだが、なんと三首銀亀竜の銀色の鱗は陽光を反射すると同じくマレッティの光輪を全て反射してしまった。これにはマレッティも驚いた。


 逆襲で、火の玉と火炎放射が交互にマレッティを襲う。狭い岸辺に火柱が立ち、そこから逃げるマレッティめがけてさらに火炎放射だ。絶妙な連携攻撃を見せる。幸いなことにその泳ぎに特化した水掻きのついた貧弱な四肢が巨体を素早く動かさないので、なんとかマレッティは回避し続けられている。


 背後では、パオン=ミがバーララ達と死闘を繰り広げていた。あまり時間をかけては足手まといになる可能性もある。


 (どうする……マレッティ!)

 自問する。素早く情況を判断し、的確に動かなくてはならない。

 (狙うとすれば……あそこしかない……!)


 それは、銀の鱗の無い部分……つまり、目玉と口の中だ。炎を切り裂いて、あの真っ赤な舌の蠢く口中へこの光輪を叩きこまなくてはならない!

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