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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第5部「死の再生者」
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第3章 3-1 作戦待機

 「岩山の竜が、あんな森にいるのお?」

 竜のことはよく分からないスティッキィ、漠然と質問した。

 「慣らしてあるからのう」


 平然とパオン=ミが答えるが、カンナもスティッキィもぴんと来ない。が、どうでも良かった。竜は竜にまかせるというのだから。


 「とにかく、向こうもこちらの囮に対抗してもらわなくてはならんからして、こちらの動きを少し知らせておかなくてはな……例の猫のガリアはどうした?」


 「それが、さいきん見ないのよお。探せばいないんだから、あのガキ」

 「……まさか、気づかれたか?」

 スティッキィが唸る。

 「それは、わかんないけどお……」


 「ま、よいわ。キリペはどうだ? ガリア遣いの手は、あればある程よい。なにせ、ガリアを封じるバグルスを相手にするからのう。数で勝負ぞ」


 「キリペからは、もう返事をもらってる。協力してくれるって」

 カンナが、キリペへ手紙を書いておいたのだ。

 「他にガリア遣いを雇わないのお?」


 「調べてみたが、この街に、あまり使えそうなガリア遣いはおらんわ。おらんというのは、政府に使われているような輩は別という意味ぞ。自由に動ける、な」


 竜退治はサラティスからそれこそバスクが出張るので、ラズィンバーグには、あまり凄腕のガリア遣いはいないのだった。


 「モールニヤに云えば、だれか派遣してくれるかも……」


 「時間がない。それに、モールニヤ本人ならばまだしも、足手まといに来られても困るしのう。あのバグルスどもさえ足止めしておけば、ガラネルといえども、この三人ならば倒せる」


 パオン=ミの眼が光る。カルマとカルマ級が二人そろっているのだから、たしかにモクスルやコーヴがぞろぞろ来ても足手まといだろうが、


 (ついさっき、ガリア遣いはいればいるほどいいみたいなこと云ってなかったっけ?)

 カンナは、やはり不安がぬぐえぬ。


 しかし、それが何の不安なのか、自分でもよく分からなくなっているのだった。

 (早くウガマールへ行きたい……!)


 その偽りの無い想いが、集中力を欠き、この仕事で重大な失態をしそうで、それが不安なのだろうか。


 「とにかく、既に村々が動いておるはずぞ。その動きはユホ族の連中にも伝わるであろう。やはり、族長ともう一人を殺しておいて良かった。きっと、ユホの村は、動揺して統率がとれず、宗旨がえをするものも出て、動きが鈍いであろう。そこを突く」


 「ガラネルが、みなをまとめるんじゃなあい?」


 「さて、どうであろうのう。ガラネルの目的が、いまいち分からぬのよ……ユホ族に固執はしておるまい。まさか、既に逃げているとも思えんが、分からんぞ」


 「そおよねえ。カンナちゃんを連れて行こうとしてたもんねえ。なんのために?」

 「さあ……」


 カンナは、首をかしげつつ、よくよく考えた。ガラネルに、ずっと違和感があるのだ。


 そもそも、パーキャス諸島でも、ギロアがカンナを味方にしようとしていた。ギロアは、竜と人が共存する世界をこちら側(・・・・)でも作ろうとしていた。


 それはカンナ達がギロアを倒して頓挫せしめたが、今度は古い生贄の儀式を復活させた死竜教団だ。そして、やはりカンナを味方に引き入れようとしている……。


 目的が見えないようで、見えそうなのも、不安だった。

 (こういうとき、アーリーならどう考えて、どう行動するんだろう……)


 目をつむり、冷静に考えるが、何も思い浮かばない。

 「ま、数日はここで報告を待つ。待つもの仕事ぞ。族長たちがうまく動いてくれるのを祈るしかない」


 パオン=ミが重々しく云い、それから数日は本当に胃が痛くなるほどの想いで、報告を待った。スティッキィが気を利かせ、いろいろと手のこんだ料理を尽くしてくれるのが唯一の気晴らしだった。


 そして、四日が過ぎた。

 報告に現れたのは、なんとレストだった。

 「そのほう……」

 パオン=ミが殺気に満ちた眼をむける。


 「いやだなあ、僕は、裏切り者じゃありませんよ」

 いけしゃあしゃあと不敵な笑顔で、ガリアである猫を抱いたまま、また食堂の卓へつく。


 「局長殿がその方を遣わしたということは、そうなのだろうのう。しかし、我等は、其方(そなた)への警戒は解かぬ」


 「ご勝手に」

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