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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第5部「死の再生者」
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第1章 5-1 ミヨン敗退~救出

 そこへ、怒りと憎しみに満ちた顔の亡霊どもがいっせいにミヨンめがけてとびかかり、ミヨンが牙が砕けんほどに歯を食いしばる。だが、飛んできたのはスティッキィのガリアから放たれた、闇色の星だった。数十という大小の闇星が鋭く回転し、怒濤の波となってミヨンの全身へ突き刺さった。突き刺さった星はさらに回転して、ミヨンの肉体を切り裂いて行く!


 たまらずミヨンが身を護るために力場を自らへまとわせ、スティッキィの星の動きを止め、次々に砕き、消し去って行く。が、閃光と、とてつもない輻射熱に我へ返る。カンナが、ついにその狂気じみたガリア「雷紋黒曜共鳴剣(らいもんこくようきょうめいけん)」を手にして、雷竜が変化した巨大な球電を剣へまとわせ、恐るべき表情で翡翠色の眼光も鋭く、ミヨンへむけて叩きつけんとしていた。


 「ガラ……」

 閃光に、すべてが消えた。


 ミヨンは一瞬で全身が炭化し、衝撃で砕け散り、建物ごと大爆発の中に塵となって消えた。


 轟音がパウゲン連山を揺るがして、まだ雪が残っている箇所では雪崩が起きた。(こだま)がはるか彼方まで轟き、ゴットやバソでも季節外れの雷鳴として聴こえたという。



 5


 夜が明けてきた。

 天気がよく、冷えこんで、空気が白く光っている。春先とはいえ、霜が降りていた。

 「ここにおります!」


 カンナの力によったものか、衝撃波か何かが楯となってスティッキィを護り、気絶したスティッキィが半分冷たい土に埋もれて、横たわっていた。教団の信者ではなく、反教団の立場で活動していた数少ない村人たちを連れ、パオン=ミが神殿の跡をくまなく探索する。


 「生きておるか!?」

 「はい、生きてます!」

 「助けてやってくれ!」

 「かしこまりました!」


 パオン=ミの指示で、スティッキィが担架へ乗せられ、救助された。

 「カンナは何処か!?」

 パオン=ミの太い声が、朝日に照らされる広大な荒れ地に響いた。


 スーナー村を探索している内に、この反教団レジスタントとも云える村の若者グループと接触することに成功したパオン=ミは、事情を聴き、自分たちを匿うことを条件に力になることを確約した。そして深夜に宿へ戻っだが既に誰もおらず、反教団の村人たちに連れられて急ぎこの場所へ向かっていた矢先に、荒野のど真ん中で大閃光と轟音、キノコ雲の大爆発というわけだ。


 村人も魂消(たまげ)たが、パオン=ミも改めて驚嘆した。人間のガリアで、あそこまでの破壊力が出るものなのだろうか。いったい、カンナとは……バスクスとは……ガリアムス・バグルスクスとは、なんなのだろうか。


 爆心地へ近づくにつれ、この寒さでまだ熱を保っているのに、さらに驚かされる。既に熱くは無いが、陽炎がたち、初夏のような陽気な空気だ。


 その空気の中で、人間の死体が転がっている。焼け焦げたもの、または爆圧でひしゃげ、破裂した死体、さらにはバラバラに手足や首の千切れたもの、そしてそれらの全てが入り交じったものと、様々だ。


 逃げ後れた教団の信者だろうか。


 例月の生贄の儀式には、教団の地位の高い主だったものが全て集まるしきたりで、一気にそれらが死んでしまった。反教団グループは、残った信者を改宗させ、あるいは追放し、村の指導権を握るだろう。


 「パオン=ミさん、こっちです!」


 一人が、突っ伏して倒れているカンナを発見した。パオン=ミが近寄る。若者が指を差したのは、硬い溶岩大地が吹き飛び、一部は解けて窪地になっているところで、窪地の底はまだ赤く溶岩のままだった。カンナは、その底地の辺りで、突き出た岩に引っかかっているようにも見える。


 迷わずパオン=ミは窪地へ下りたが、暑い。いや、熱い。カンナの周囲だけ、まだとてつもない熱さだ。


 火炎遣いのパオン=ミとて、たじろぐ熱さだった。カンナは大丈夫なのか……。


 パオン=ミはガリアである呪符をばらまき、ふだんは火炎として熱を発揮させるものを、描かれている呪文を逆に展開して効果を反転させ、熱を吸収した。咄嗟に考えた、自分の技の逆転の発想で、初めての試みだったが……。


 なんと、急激に気温が下がってくる。

 「我ながら、うまくいったわ……」


 パオン=ミは驚いた。自分のガリアで、冷気も操れるとは。火炎華符(かえんかふ)という銘を変えた方がよいだろうか。


 「カンナ、カンナよ、しっかり致せ」


 傾斜を下り、岩へひっかかって倒れ伏しているカンナのところまでたどり着くと、抱え上げた。パオン=ミも竜へ乗るためにむしろ軽身を保っているが、カンナの華奢さはそれ以上だった。いくら年少の少女とは云え、この軽さは異常ではないか?

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