表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガリウスの救世者  作者: たぷから
短編「仇討」
309/674

仇討 2-5 オーレアの力

 四つのガリアが力場を作り出し、それが目に見えてまるで空気の箱を作っているかのように空間を歪ませる。暗闇の中に、路地の壁をも巻きこんで、強力な防護の陣を張った。この壁を突破されたことは、これまでに一度もない!


 と、オーレアが大小の金銀の剣を交差した。

 刹那、こちらも空気が歪み、風圧を伴ってオーレアが消える。

 瞬間移動ではない。

 オーレアが超高速行動に入ったのだ!


 空気が潰れ、裂ける破裂音と共に、強固な四方防牙楯陣(よもぼうがじゅんじん)が完成する直前の隙間へオーレアが突っこんだ!


 四人のうち、前衛の二人が風圧と衝撃でふっとばされ、豪快に路地の壁へ身体を打ちつけて昏倒した。楯も何も、あったものではない。効果がたちまち消失する。


 「さ、下がれ、下がれ、なんだ、こいつ!」

 残る二人が慌てふためき、バーチィを後ろ手にかばって路地を下がる。


 オーレアが闇に白銀と純金の二剣を鈍く光らせ、それを再び交差させようとしたが、そのガリアの力に気づいたのかどうか、いま昏倒した一人がなんとか起き上がって、至近距離から楯で攻撃してきた。楯を構えて、突進気味にオーレアへぶちかましをかける。そのまま壁へ押しつけて、圧殺しようというのだ。四人陣形が崩れたため、この者は随分と久しぶりに自分のガリア本来の力を使った。すなわち、その円楯の圧殺の力を。


 オーレアが受け流しつつ、素早く身をひるがえして楯攻撃から逃れる。ボゴァ! と音がし、レンガの壁を崩しながら突進が止まった。確かに、あれへ挟まれたらオーレアと云えどもただではすまない。


 だがオーレア、そやつが振り向く前に、もう転身をかけてその無防備な背中へ長剣で斬りつけていた!


 「アアッ!!」

 悲鳴を上げ、のけ反る。次に、その脇腹へ金の短剣が深々と突き刺さった。

 そのまま、円楯遣いが横倒しに崩れた。


 「や、やられた……!」

 残った三人が、絶望の叫びを発した。四人がそろわなくては、あの防陣は遣えぬ。

 あっと云う間に、無敵の陣形が崩されてしまった!


 楯から小竜巻を発するガリア遣いが、再び超高速行動に入ったオーレアの衝撃をうけてよろめき、次の瞬間には胴をばっさりと斬られて、臓物を闇へぶちまけ、ほぼ胴斬りに切断されて転がった。


 「逃げろ、逃げるんだ!」

 バーチィを、とにかく逃がす。オーレアの攻撃は揺るがない。


 連続して小刻みに大小の剣を合わせると、超高速行動と通常行動が連続して起き、残像を残しながら次々に空間を渡って迫る。オーレア自身は、ガリアの力でその強力な超高速移動の衝撃に耐えられる。闇の路地を空気の引き絞られる圧搾音と共に、何人ものオーレアが二剣を振りかざして突撃してくる。楯遣いたちは完全に混乱し、ただ楯をかざして身を護る動きをするのが精いっぱいだった。


 「そおれッ!」


 そこへオーレアが剣をかざして吶喊(とっかん)した。二人とも、まるで、我々の世界で云う猛スピードのトラックにでもつっこまれたかのように、衝撃にはね飛ばされ、一人は空中高くぶっ飛んで壁へ激突し、跳ね返ると脳天から石畳に落下して絶命した。


 もう一人はガリアごと錐もみして数十キュルトはぶっ飛び、逃げるバーチィと用人を飛び越えて通りへ叩きつけられ、転がった。転がったまま、ピクリとも動かない。


 「う、ああっ……!」

 バーチィが絶望的なうめき声と共に、膝から崩れてしまった。

 「だ、旦那様、立って、逃げましょう!」


 云った用人めがけ、オーレアがこめかみから後頭部にかけて白銀の長剣を叩きつけた。急所を一撃だ。頭蓋骨が砕け、目玉と脳を飛び散らせて即死した。


 返す剣で、いともたやすくうずくまるバーチィの胸を貫いて、短剣も鎖骨のあたりへ垂直に刺しこんだ。


 同時に二剣を抜く。

 バーチィが、人形めいて横倒しとなった。


 素早くフードを取り、街路灯の明かりにバーチィ本人であることを確認して、オーレアはその場を去った。



 来るのが遅いので何事かあったかと捜索していたガイアゲン商会で死体を発見し、秘密裏にシュタークの本部へバーチィと用人を運びこんだ。ガリア遣いたちの死体は、ガイアゲンで回収した。


 バーチィ夫人のビーテルは夫の惨殺死体を見るや錯乱し、二度と通常の精神状態に戻らなかった。ガイアゲンでは、表向きにはバーチィの死を隠しつつ、資金繰りを助けるために商会の所有者変更手続きをすることにしたが、ビーテルの精神状態では無理であったし、何も知らないまだ十三歳の双子の娘たちも難しい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ