32話 GW【前半】④
【追記】指摘のあったところを修正しました。
いやぁ、結構広い部屋なのに机と椅子以外何もなかったらビックリするよね。
窓にカーテンがしてあるから外の景色も見えないし。
まぁ、部屋が広いこともかなりビックリしたんだけど……
「白いね……この部屋」
この部屋、壁も床も天井も白いんだよね。それ以外は白くないけど、ここまで壁が真っ白だとすごく広く感じるよね。まぁ実際広いけどさ。
「これでも白以外のものも取り入れたんですよ?昔は本当に白かったんですよ?照明とかテーブルとか、その他諸々全部白で統一していたんです」
部屋の白さに驚いていると、優花ちゃんがそう補足してくれたんだけど、何かその部屋、時間の進み方が他と違いそうだね……。
「とある外の世界と時間の流れが違う部屋を意識して作って満足していたのですが……、全部真っ白だと予想以上に精神的にきてしまいましてね……。1ヶ月もしないうちに今の部屋の様子に変わってしまいました」
「そ、そうなんだ……」
これはどれを驚いたらいいんだろうね。一部屋丸々それっぽく使ってしまう行動力になのか、合わないからってサラって買い換えられるお金があることになのか……。これは深くは考えない方がいいような気がしてきたし、そういうことにしておこう、うん。
「それにしてもどうしてこの部屋なの?てっきり優花ちゃんの部屋に行くものだと思っていたんだけど……」
「あぁ、それはですね……」
僕が最初に思った疑問について尋ねると、優花ちゃんはチラッて真琴の方を見てから
「私の部屋に行ってしまうと真琴がまずは遊んでから宿題をすればいいじゃないって言い出すに決まってるからですよ」
そう言ったんだ。あー……、確かに真琴ならそう言いそうだなぁ。でも、真琴は納得いかないみたいで
「なによ!むしろモチベーションをあげてからじゃないと出来るものも出来ないじゃない」
「……そのモチベーションをあげるのに付き合っていたら1日終わってしまいますよ」
反論したんだけど、優花ちゃんはため息をつきながらそう返していたんだ。あっ、これは経験があるやつだ……。だから最初はこの部屋に来たんだろうね。
「それでは、真琴が暴走する前に宿題を片付けてしまいましょうか」
「うん。そうだね」
真琴が何かまだ文句を言ってるみたいだけど、僕と優花ちゃんは宿題を取り出して取り掛かり始めた。
それにしても、この家は楽しそうだなぁ。優花ちゃんのお母さんは漫画のネタとか普段から使っているっぽいし……。って
「あっ……」
「はい?どうかしましたか?」
「いや……、僕たちだからよかったと思うんだけどさ。優花ちゃんのお母さんが普通に漫画のネタを使っていたじゃない?他の人が遊びに来たときに、そのことから優花ちゃんもオタクだってことがバレたらマズいんじゃないのかなって思って」
色々と流しちゃったけど、会って早速ネタを使っていたし、この部屋も元はあれみたいだしね。大丈夫なのかなって思って聞いてみたら
「あぁ、そのことですか。それなら大丈夫ですよ。前に私がそうであることを京さんには伝えてあるということを母に伝えてありましたからね。そうでなかったら母ももう少しまともな対応をしますよ」
「切り替えはハッキリ出来るのですよ」って優花ちゃんが言っていたけど、やっぱりそういうところもソックリなんだねって僕は思うしか出来なかったんだよね……。だから
「そ、そうなんだ……。それじゃあ宿題をやっていこうか」
もう気にしないことにしたんだよね。やっぱり下手に突っ込みすぎるのはよくないからね、うん。
「そうですね。真琴もそろそろ諦めて早く宿題をやりましょう」
「…………ハァ。仕方ないわね。それじゃ、さっさと終わらせて遊ぶわよぉ!!」
こうして僕たちは改めて宿題に取り掛かったのであった。
…………
……
「真琴。そこはこの公式を使うのが正解で……」
「何言ってるのよ。確かにその公式でもいけるけど、ここはこれを使ったほうが早く解けるわよ」
「そんなことは……。って、本当みたいですね……」
「そう言いながらも結局意地を張って自分の解き方で解く優花であった……」
「……今からだと消して解きなおすよりも解ききった方が早いので」
そう言葉のやり取りをしながら優花ちゃんと真琴がどんどん宿題を消化していっているんだ。何このスピード?僕が2問解く間に2人とも3問は解いているんだけど……。見せてもらうのは僕のプライドが許さないからしてないけど、速すぎない!?
2人の問題の解く速さに心が軽く折れかけていると、
コンコン
って扉をノックする音が聞こえてきたんだ。
「はーい」
そう言いながら宿題を中断した優花ちゃんが扉を開けると
「は~い。お昼御飯よ~。こんなものしか用意出来なかったけど、よかったらど~ぞ~」
優花ちゃんのお母さんが優花ちゃんに手渡したのはサンドイッチだった。
「これなら手が余り汚れないからいいでしょ~?それじゃあ、ごゆっくり~」
それだけ言って優花ちゃんのお母さんは部屋を出て行こうとしたから、僕はすぐに立ち上がって
「あの、ありがとうございます」
「……ありがとうございます」
って言うと、あっ、僕の後に言ったのは真琴ね。それで、僕たちの声が聞こえたみたいで、優花ちゃんのお母さんはゆっくりと振り向きながらニッコリと笑いながら
「いえいえ、こんなのしか出せなくてごめんね~。それじゃあね~」
って、部屋を出て行った。
「……それでは、折角ですし、ここで一旦休憩してお昼を食べましょうか」
本当に渡すものだけ渡して去っていった優花ちゃんのお母さんのことに対して、「もう少し愛想良くしたらいいのに」とため息をつきながら、優花ちゃんがそう言ってきた。
僕からしたら十分してもらってると思うんだけどなぁ。そういう問題じゃないのかな?
でも、確かにお腹がすいているのは本当だしね……
「うん。それじゃあご馳走になります」
「そうね。いただくわ」
そういて、一旦宿題等々を隅の方に片付けてからサンドイッチを食べ始めたのであった。
…………
……
サンドイッチが残り半分くらいになったころ
「それにしても何か忘れているような……」
「えぇ、何か重要なことがあった気がするんだけど……」
2人が急にそんなことを言い出したんだけど、全くそんなことに心当たりがない僕はなんだろうと首を傾げていると、2人がこっちを見てきて
「「あっ!!」
って言うもんだから
「えっ!?えっ!?何!?」
戸惑いながらそう答えると
「京の眼よ!!」
「京さんの眼ですよ!!」
「え?僕の……眼?」
そう返ってきたから、僕もオウム返しに返した。僕の眼が何かおかしいところとかあったっけ?
「前のオリエンテーションのときに約束しましたよね?」
「あたしか優花の家で遊ぶときはそのコンタクトを外すって」
「コンタクトって……、あっ」
確かにそんな話していたような気がする……。でも、やっぱり不安だから
「……一応確認なんだけど、二人とも僕の眼を見ても怖がらないよ……ね……?」
「「もちろん(です)!!」」
確認したんだけど、二人ともすぐに肯定で返してくれたんだ。
だから、僕も意を決して、カラーコンタクトを外して、あっ、もちろん鞄の中に入れていた手鏡を見ながら優花ちゃんたちとは逆の方向を向いてだよ?
それで、コンタクトを外して、眼の色が元の紅い色になった僕は優花ちゃん達の方に振り返って
「どう……かな?」
肯定はしてくれたけど、それでも不安なのを隠しきれずに上目遣いになりながら尋ねたら
「…………なんで2人とも僕に抱きついているのかな?」
「そりゃあ、京が可愛すぎるのが良くないのよ」
「その綺麗な紅い眼に上目遣いは色々とヤバイです。普段も十分すごいですが、ここまで威力が上がるとは……」
2人は抱きつきながらそう言ってきたんだよね。怖がらなくてくれたのは嬉しいけど、やっぱりボディタッチはやめてほしいなぁ……。
「もう!わからないけど、わかったから2人とも離れてよ!!ほらっ!お昼もまだ残っているし、早く食べようよ!!」
って言いながら、なんとか2人を引き剥がすと
「もう!相変わらずつれないんだから」
「……確かに食事中に少し行儀が悪かったですね」
2人は名残惜しそうにしながらも昼食を再開してくれた。僕は2人がもう何もせずに昼食を再開してくれたことに内心ホッとしながら、サンドイッチを手に取ったのであった。
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