21話 オリエンテーション②
おかしい……
いや、もしかしたらおかしくないのかもしれないや。皆に料理が上手ってほめられて、それで天狗になっていたのかも。だから今日も皆が嬉しそうに食べてくれるって思ってたしね……。でも、今日はお弁当の蓋を開けても誰も反応してくれなかったんだ……。やっぱり、まだまだだってことだよね。自覚してても、やっぱり現実を突きつけられるとくるものがあるよね、うぅ……
僕は自己嫌悪のループに入っていて、他の皆も何も喋らないから、少し気まずい雰囲気が出始めていたんだけど、その空気を破ったのは真琴ではなく、優花ちゃんだった。
「え、えっと……。京さん、少しお尋ねしたいのですが、この料理は一体なんなのでしょうか?パイナップルとチーズ……ですかね?それがお肉に巻かれているように見えるのですが……」
その声にハッっと我に返った僕は、皆の目線を辿ってみたんだけど、優花ちゃんが聞いてきた料理に視線が注がれていた。あれ?やっぱりこの料理ってマイナーなのかな?健吾も初めてこの料理を見たときは散々言ってたもんね……
「えっとね?僕の家ではパイナップルチーズって呼んでるパイナップルとチーズを豚肉で包んだ料理なんだけど、やっぱり知らないかな?」
僕はそう言って皆の顔を見たんだけど、皆首を捻るだけだった。ま、まぁでもこれで好きになってくれたらいいよね!皆パイナップルが入ってるからって食べないとか言わないよね?中学のときに、お弁当に入ってたパイナップルチーズを見られて、何でパイナップルを料理に入れてるんだよって言ってきて、おいしいから食べてみなよって言っても断固拒否された記憶が……、うっ、頭が……
ま、まぁそれは置いといて、優花ちゃんたちはそうじゃないと思って、様子を見ていたんだけど、やっぱり中々手を出せないみたい。真琴ならとりあえずって感じで食べてくれるって思ってたんだけどなぁ。やっぱり食べ物だと少し手が出辛いのかな?
優花ちゃんが気まずい雰囲気を1回破ってくれたけど、やっぱり皆が手を出さないからまたその雰囲気が出始めたんだけど、
「何だ?お前ら食べないのか?まぁ、確かにこの料理をいきなり見せられたらちょっと戸惑うのは仕方がないと思うが……」
今まで皆の様子を見ていた健吾が唐突に口を開いた。
「やっぱりこれってそんなに手を出し辛い料理なのかな?」
僕からしたら食べれるだけ食べたい料理なんだけどなぁ。
「まぁな。いきなりパイナップルが入った料理を出されるんだぜ?俺も初めて都さんにこの料理を出されたときはかなりビックリしたもんだ」
まぁ、あのときはおまえがおいしそうに食べてたから食べようって思えたんだけどなって言ってきたけど、そこまでかなぁ。う~ん……
「そ、それならさ。健吾が食べて、皆においしさを伝えてくれたらよくない?僕が作った料理を僕がおいしいって言ったところで、皆信じてくれないかもしれないし……」
そう言ってシュンってした僕に、健吾は苦笑いしながら
「ばーか」
って言って、おでこを小突いてきた。うぅ、地味に痛い……。突かれたところを両手で押さえながら、ちょっと半泣き気味に健吾を睨むと
「だ、だからその顔はやめろって……っと、そうじゃなくて。お前が作った料理なんだから不味いわけないだろ。そろそろ自覚を持てって。後、俺が食ってないのはこの前に俺の分は作らないって言われたからな……」
…………そういえば、そんなこと言った気がする。で、でも、あの後、色々と助けてもらったし、それでチャラにしたつもりだったんだけど、僕が思ってただけで健吾に言い忘れたかな?
「この前助けてもらったし、その事はもういいよ?でも、健吾もお弁当持ってきてるだろうし、こっちはいらないん「いや、そう言ってくれることを信じて持ってこなかったぜ!」……アッ、ハイ」
何それ!?健吾に悪いことしたなぁって思った僕が馬鹿みたいじゃない!?
「……ハァ。まぁいいや。それじゃあ折角だし、健吾が皆にパイナップルチーズが如何においしいか伝えてよ」
「おう。って言ってもまぁ、普通に食うだけだけどな。皆誰かが食うのを待ってただけだと思うしな」
そう言ってひょいってパイナップルチーズをとって口に運ぶ健吾。ど、どうだろ?おいしくないって言われたらどうしよう?僕好みにお母さんとは味付けを変えてるし……
「……ふむ。塩胡椒は使わなかったのか?」
「う、うん。僕は塩胡椒が無い方が好きだし……。ど、どうかな?」
「まぁ、これはこれでいいんじゃないか?パイナップルの甘みを活かせてると思うし。俺はこっちの方が好きかな。ほら、小野達もさっさと食ったらどうだ?そうしないと俺が全部食っちまうぞ?」
健吾の言葉でようやく皆がお箸を伸ばしてくれた。その事にホッとする僕。みんなも気に入ってくれるかな?
「あむっ……。おぉ!確かに美味しいわねぇ。でもパイナップルがここまで料理にあうとは……」
っと、真琴。よかった。気に入ってくれたみたい。
「そうですね。京さん、後で詳しい作り方を教えてもらってもよろしいでしょうか?」
っと、優花ちゃん。優花ちゃんも気に入ってくれたみたい。よかったぁって思いながら僕は「うん、もちろん」って返事をした。
「確かにうまいもんやな」
っと小野君。簡潔に言ってるけど、すぐに次にお箸を伸ばしてくれてるってことは気に入ってくれたのかな?
「ごめんッスけど、やっぱり料理にパイナップルはあんまり得意じゃないッス」
っと空元君。あっ、空元君はダメみたい。酢豚にパイナップルは無理ってなのと同じ感覚なのかな?僕はどっちでもいけるからよくわからないんだけどね……
空元君は残念だったけど、他の皆には好評でよかったよぉ~。それに、これ以外にも卵焼きにウィンナー、ちくわきゅうり、ブロッコリー、ひじき等々これでもかっていうくらい作ったからお腹一杯にはなってくれるとは思うけど、メインっていえるのを他にもう1つ作っておくべきだったと軽く反省。次からは気をつけよう、うん。
そう思いながらお弁当を食べようとお箸を伸ばしたときに、ふと視線を感じた僕はそっちの方向を見てみたんだ。そしたら、女の子の集団がいたんだよね。僕が見たときにはその子達は会話をしていたから、気のせいだったのかな?
そんなことを思いながら、その集団の方を見ていると
「京?どうしたの?」
そう真琴が聞いてきたから
「ううん。なんでもないよ」
って言って、お弁当にお箸を伸ばした。うん、やっぱり気のせいだよね。あっ、今日もちゃんとおいしく出来てる。よかったぁ~。朝ごはんでも食べてたから味はわかってるつもりなんだけど、お弁当にしたら何か変わるかもしれないし、自分で食べてみないとやっぱり安心出来ないからね……
こうしてお弁当がちゃんと出来ていたことを自分で確認した僕は、真琴たちとお話しながらお弁当を食べたのであった。そして、食べ終えたころにはあの女の子達のことは頭の中からはすっかり抜け落ちており、お弁当の後始末をし、下山したのであった。
ちなみに、降りは優花ちゃんたちと一緒にゆっくり降りたんだ。やっぱり山はこう楽しみながらゆっくり降りないとね!真琴は小野君と競争だって言ってすごい勢いで降りていったけどね……。僕達が麓に着いたときには勝ち誇った真琴と悔しがってる小野君を見つけて、あっ、やっぱりって顔を皆したみたいで、小野君がさらに落ち込んだりしたけど、まぁいつも通りだよね
…………
……
「それで、次はどこに行くの?」
山頂で休憩して、ゆっくりとはいえ、下山したから体力が少し心許ないんだよね……。出来ればあんまり動かない系の行事ならうれしいんだけど……
「え?何言ってるの?って、あっ、そういえば京は把握してないんだったわね。次はもうホテルよ?」
っていう真琴。
え?もう?
ちなみに、パイナップルチーズの作り方は
スライスチーズと缶詰のパイナップルを豚肉でまいて、
小麦粉、といた卵、パン粉の順でつけて
このときに好みで豚肉に塩・胡椒をつけて
最後にバターとサラダ油を1:1で混ぜたものをフライパンにひいて
蒸すように焼けば完成します。
え?どうでもいいって?
はい、知ってました(・ω・`)
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