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IF 勇輝ルート

本編ではなかった、所謂勇輝ルート後のとある断片です。

条件としては、夏休みに京のもとへ辿りついたのが健吾ではなく、勇輝だった。

記憶をなくしている間、近くで面倒を見たのも健吾ではなく、勇輝だった。

その前提条件がある状態で、さらに複数の条件をクリア出来た場合に辿りつくルートのクリア(つき合い始めた)後の話です。

「ねぇ、この問題なんだけど……」


僕は勇輝の部屋で問題集を広げながら頭を悩ませていた。


去年の冬、勇輝からの告白を受けて付き合い始めてから、僕は医大に合格すべく勉強を始めた。勇輝はお兄さんの光輝さんと同じ道に進むために医大に進むってことを付き合い始めてから教えてもらったんだ。勇輝は医大に入るのも大変だから、別の大学でも良いって言ってくれたんだけど、やっぱり同じ大学に行きたいじゃない? だからこうして時間があるときは勉強をしているんだ。


「京、それならここをこうすれば……」


「なるほどっ! ありがと!!」


こうして勉強をしているおかげで、学校の成績も満点に近い点数は取れるようになったんだけど、やっぱりまだまだ勇輝に追いつけないんだよね。だからこうして勇輝にわからないところを教えてもらっているんだ。


「いや、構わんよ。それより、その問題を解いておるってことは丁度その問題が解き終われば一区切りつくじゃろ? 終わったら休憩するとしようか」


「うん、わかった。ここがわかればすぐ解けるから、少し待ってて」


勇輝から教えてもらった問題集なだけあって、今僕が問題集のどのあたりに取り掛かっているかを把握してみたい。勇輝の言う通り、丁度章の最後の問題だったから、僕は頷いて返事し、解き方のわかった問題を終わらせるべくペンを進めたのであった。


…………

……


無事問題が解き終わり、休憩をするために机の問題集を片付け、家で作ってきたクッキーを鞄から取り出していると


「それにしても……」


「うん?」


「もうそれ(・・)に見慣れてしまったと思うてな」


「あぁ、これ(・・)?」


勇輝は僕の目を、正確にはもはや身体の一部となったと言って過言では無い眼鏡を見ながらしみじみと言ってきた。勇輝と同じ医大に行くために必死に勉強をしていたら、どんどん視力が下がってきて、半年前から眼鏡がないと黒板もちゃんと視えなくなっちゃったんだ。だから今や日常生活でもずっと眼鏡をかけているんだよね。


「うむ。京がつけ始めたときは本当にビックリしたものじゃ」


「そうかな? つけ始める前に、黒板が視辛くなってきたと思うけど……」


「それでも、眼鏡をつけることは相談してくれんかったじゃろ?」


「それはまぁ……、勇輝を驚かせたかったからで……」


「ははは、確かにあれは驚かされた。まぁ、あれのおかげで、眼鏡をつけることで、京の魅力がさらに増したということがわかっただけで儲けものじゃったがな」


「もうっ! そんなことを言っても何も出さないんだからね!!」


「なぁに、こうして京の手作りのクッキーをもらえるだけで十分じゃよ。それじゃあ、飲み物を取ってくるから、暫し待っていていておくれ」


あの時のことを思い出しながらやり取りを何回かした後、飲み物を取りに勇輝が部屋を出て行ったのを見送った僕は


「もう……」


と肩の力を抜きながら呟いた。勇輝は本当にさらっとこんなことを言ってくるから心臓に悪い。今だって気を抜いていたら顔が真っ赤になっていた。こうして勇輝や僕の部屋でだったら良いんだけど、勇輝は恐らく無意識で言っているものだから、普通に教室だったりデートのときでも言ってくるものだから、その度に顔が真っ赤にならないようにするのに気を付けないといけないんだもん。昔に顔を真っ赤にしちゃったときの周りの視線を思い出すと、何とかして抑えなきゃって思うっちゃうんだ。だから少なくとも、部屋の中とそうじゃないときで意識を切り替えられるようになるまでは意識して抑えようって思ってるんだ。


それでも抑えきれずに頬に集まってしまっていた熱が少し抜け始めた頃


「またせたのぅ」


勇輝がお盆にコップを2つ乗せて戻ってきたんだ。勇輝がコップをお盆の上から机の上へ移動させたところで


「ううん。それじゃあ、食べよっか」


勇輝にそう提案したんだけど


ピコン―-


と勇輝の携帯に何かのメッセージが届いたんだよね。勇輝は携帯を手に取って届いたメッセージに軽く目を通した後、すぐに携帯の画面を閉じていたから


「返事しなくていいの?」


勇輝に確認すると


「あぁ、健吾からじゃったからな。急ぎの内容でもなかったし、後回しにしてしまっても構わんのじゃよ」


勇輝が送り主を教えてくれ、内容も急ぎのものじゃないって教えてくれたんだ。あ、そうそう。今も勇輝が言っていたけど、いつの間にか、健吾と勇輝がお互いを名前で呼び合うようになっていたんだよね。少なくても、僕たちが付き合い始めた後だということには間違いがないんだけど、本当に知らない間にそう呼び合うようになっていたんだ。2人にきっかけを教えてもらおうと思って聞いたこともあるんだけど、2人して教えてくれなかったし、何か言い辛そうにしていたから、僕は聞くのをやめたんだ。いつかきっと2人が話してくれると信じて。


「そっか。それじゃあ、改めて、いただきます」


「あぁ。いただきます」


だから僕は今回も内容には触れず、準備出来たクッキーを食べるために手を合わせた。まずはやっと手が届き始めた大学をしっかりつかみ取るために勉強しないとだしね。そのためにも気力回復は必要だと、そのために用意したクッキーを食べるために手を伸ばしたのであった。

読者の皆様、お久しぶりです。

今回は、作者が勇輝というキャラを出したときに、本編終了後に出したかったIFルートのお話でした。

今、このIFルートを1つの章として、もう少しここに辿りつくまでの話を掘り下げるか、京と健吾の2人がつき合い始めた後の話、所謂2年生編を書くかで迷っていたりするのですが、いかがでしょうか。

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