章間㉝-2 最後の刻②
この話は分けたかったので、分けました。
当日中に2話投稿していますので、前話がまだの方は、前からお読みください。
Trrrr……。Trrrr……。
どうか出てくれますように……。
そう願いを込めながら、携帯を耳に当てながらコール音を聞いていると、
『もしもし、どうした? こんな時間に珍しいな』
まだ起きていていていただけていたらしく、電話を出てくれました。
「今、少しよろしいでしょうか」
電話に出ていただけたということは、恐らく大丈夫だとは思いますが、念のため確認をとると、
『あぁ、大丈夫……って、彩矢か?』
彼はすぐに京ではなく、彩矢であることに気付いてくれて、そう聞き返してきました。
「はい。そうです」
なのでそれに肯定で返すと
『そうか。それにしてもどうしたんだ? 普段の京なら寝てる時間だろ?』
夜分に電話を掛けたことに疑問を思ったのか、そう聞いてきました。
「はい、京なら寝ていますよ。―――――」
『そうか。それとごめん、後半聞き取れなかったから、もう一度言ってくれないか?』
「いえ、特に用事があるというわけではありませんが、健吾さんの声を聞きたくなってしまいまして」
やはり無理でしたか……。先ほど自分自身で試したことでしたが、例のことになると誰も認識出来なくなるようです。確認も改めてすることが出来まいたので、私は予め用意していた別の理由を伝えました。健吾さんの声を聞きたいということは嘘ではないですしね。
『ははっ! なんだそれ? 俺でよかったら全然良いぜ。今暇してたとこだし』
そんなことを考えていると、無事健吾さんから了承をいただくことが出来ました。ただ……
「ならよかったです。では、どんな話をしましょうか?」
健吾さんに電話を掛けようと思い実行しましたが、それ以上のことを考えていなかった私は思わずそう聞き返すと
『おいおい。本当に俺の声が聞きたくなっただけってか? そうだな……。今日の初詣は楽しかったか?』
健吾さんはもう一度笑った後、今日の初詣について聞いてきました。
「はい……、楽しかったです。自分の足で色々と観て回ることも出来ましたし」
もう……出来そうにないですが……
『ならいいんだが……。彩矢は終始京のことを気にかけていただろ? だから心から本当に楽しめたのか気になってな』
「それは……大丈夫ですよ。先ほども言いましたが……、自分の足であのように観て回るということが出来たのですから」
『ならよかったよ。実は篠宮さんたちのことを気にしすぎて、楽しめてなかったんじゃないかって不安だったんだ。次に会ったときにでも聞こうと思っていたんだが、丁度良いタイミングだと思ってな』
本当に……、この人は……
「ありがとう……ございます。すみません……、少し眠くなってきました……」
『いや、いいよ。彩矢も普段は寝てる時間だろ?』
「すみません……」
『構わないさ。それじゃあお休み』
「はい……。お休みなさい……」
「…………京を……、お願いします」
<最後の刻 END>




