表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様によるペナルティ  作者: ずごろん
第四章 二学期編
174/217

131話 状況把握④

すみません、体調崩してました。

ただでさえ花粉で体調がよくないところで

10℃近い気温の変化に体がついていきませんでした。

皆さまは体調にお気を付けください。

「……はぁ」


僕は携帯の画面を見ながら、何度目かわからない溜息をついたんだ。


「……はぁ」


もう一度溜息をついたところで


『そんなに気になるなら今からでもメールでも電話でもすればいいじゃないですか』


彩矢が僕にそう声を掛けてきたんだよね。


「いや、そうなんだけど、そうなんだけどね?」


今、僕は自分の部屋に居るということもあって、口に出して返したんだ。


スポーツ大会があったあの日からもう1週間経ったんだ。今日までに何度もペナルティ(彩矢)のことを伝えようとしたんだけど、丁度そのことを言おうとしたタイミングで、誰かが来たり、僕か健吾の携帯に着信があったりしたせいでまだ彩矢の紹介が出来ていないんだよね。


だから僕はもう最終手段として、電話で伝えようと思って携帯を手に取ったんだけど、ここまで来て電話で伝えてしまうのもどうなのかと思ってしまったんだ。そうなるとどちらがいいのかを悩んでしまい、携帯とにらめっこをしながら溜息をつくことになってしまったんだよね。

それで、何度も溜息をついていると、痺れを切らした彩矢が僕にそう声を掛けてきたって感じなんだ。


『私が貴方に会った日も別の理由でしたが、同じようなことをしていましたよね? 貴方は一度悩み始めると、誰が何を言おうとループから中々抜け出せなくなってしまうのですから、メールをするなら今すぐする、それが出来ないならまた日を改めることですね』


どうして溜息をつき続けているかの経緯について思い返していると、続けて彩矢は僕にそう言ってきたんだよね。


「うん……、そうだよね。健吾に電話してみるよ」


彩矢に言われたってこともあるけど、健吾に電話をして僕の家に来てもらえば誰かに邪魔をされることはないもんね。お母さんたちが入って来たとしても僕の事情を知っているから気にしなくていいし。


そう思い、また悩み始める前に健吾に電話をと、通話ボタンを押したところで


「京。健吾君が来たわよ」


健吾が来たことを知らせに来たお母さんに遮られてしまったんだよね。


「……え?」


ただ、呼び出そうとした相手がその前に来た予想外の事態に、僕は呆けた声で返したのであった。


…………

……


「よう」


僕の部屋に入って来た健吾は僕に向かって手を軽く挙げながらそう言ってきたんだ。


「う、うん。いらっしゃい」


まだ想定外のことからの動揺が治まっていない僕は少し言葉に詰まりながら健吾に返すと


「通してくれたから大丈夫だとは思ったんだが、本当に良かったのか? 都合が悪かったらまた改めるが」


僕の反応が都合が悪いものだと思ったらしい健吾が僕の様子を窺うように聞いてきたんだよね。だから僕は慌てて顔を横に振って


「ううん。そんなことないよ! ただ、今から健吾に電話をしようと思っていたところに健吾が来てくれたから少しビックリしただけで……」


健吾の勘違いを正そうとしたんだ。するとすぐに誤解は解けたみたいで


「そうなのか? でも何で電話を……って、あぁ」


安堵の表情を浮かべていたんだよね。その後、どうして僕が電話をしようとしたのかを疑問に思ったみたいだけど、すぐに何でかは察してくれたみたいだんだ。だから僕は


「うん。そろそろちゃんと話そうと思っていたしね。通学途中や学校の中じゃどれだけ場所を変えても邪魔されちゃったし」


健吾にそう返したんだよね。本当にみんな僕のことを監視しているんじゃないかって思いたくなるくらいタイミング良く誰かが邪魔をしにきたもん。いや、本当に悪気があったわけじゃないのは、わかってはいるんだけど、必ず邪魔されるとやっぱりそう思いたくもなっちゃうよね、うん。

だからこそ健吾が誰にも邪魔をされない僕の家まで来てくれたのは本当によかったと思っていると


「あぁ、そうだな。それじゃあ、早速で悪いんだが頼めるか」


健吾は携帯の電源を切りながら僕にそう言ってきたんだ。


「うん。本当はもっと早く言いたかったんだけど……」


僕も携帯の電源を落としてから健吾にペナルティ(彩矢)のことを伝えたのであった。


…………

……


「……なるほど。京ちゃん、いや、彩矢ちゃんの人格が今京の中にあるってことか」


健吾に彩矢のことを、実際に彩矢が表に出られること、鏡を用意すれば僕と一緒に話をすることが出来ることも含めて伝えると、健吾は呟くように僕が言った言葉をなぞった後、


「実際に京と彩矢ちゃんが入れ替わったところを見せてくれないか?」


健吾が僕にそう言ってきたんだ。


「うん、彩矢がいいなら僕はいいけど……」


正直に言うと、あの体が全く動かないのに視線だけが動く感覚は慣れていないこともあり、あまり好きじゃないけど、僕の意識がない間僕の代わりに色々としてくれていた彩矢も健吾の直接話したいだろうし、その気持ちを(ないがし)ろにしたくない僕がそう返すと


『京がいいのでしたらぜひ。ただ、その前に鏡を用意していただけますか?』


『え? う、うん。いいけど……』


彩矢もやっぱり健吾と直接話をしたかったみたいで僕にそう言ってきたんだよね。だけど、直接話せるのにどうして鏡が必要だと言い出した彩矢の意図がわからなかった僕は彩矢に肯定を返した後、


「ごめん、彩矢が鏡が必要だって言ってるから取ってくる。少し待ってて」


と健吾に一言断りを入れた後、鏡を取りに行ったのであった。


…………

……


「それじゃあ、変わるね」


鏡を用意し、彩矢と入れ替わる準備が出来た僕は健吾にそう言い、彩矢に身を任せるようにしたんだ。すると


「……健吾さん、お久しぶりです」


無事に彩矢に入れ替われたみたいで、僕の口から彩矢の言葉が発せられていたんだ。後はしばらく任せたらいいかなと思っていると


「すみません。お話の前に京にしていただきたいことがあるので、少し待ってもらえますか」


彩矢が健吾にそう言ったんだよね。今の僕に出来ることなんてほとんどないのに、なんだろうと疑問符を頭に浮かべていると


「以前の私のように、鏡の方に出てきてください。入れ替わるように感覚を言えと言われると難しいのですが……。そうですね……、今鏡に私たちの様子が映っていますよね? それを反射ではなく、自分の目で見たいと思ってください。そうすれば出来るはずなので」


彩矢はそんなことを言ってきたんだよね。てっきり彩矢だけが鏡の方に出られると思っていた僕は彩矢の言ってきた内容に驚いた後、本当に出来るのか半信半疑のまま彩矢に言われたようにすると


「あ、ほんとに出来た」


恐らく鏡の中に意識を移すことが出来たんだ。さっきまで彩矢の視線越しに鏡から見えていたことが窓みたいな枠から見えるようになったし。たぶん、これは鏡の枠なんだろうね。そんなことを考えながら、今の状態を確認していると


「これで大丈夫ですね。健吾さん、お待たせしました」


彩矢は健吾の方へと向き直ってそう言ったんだ。


「いや、大丈夫だ。聞いていたとは言え、本当に出来たんだな」


健吾は僕の方へとチラリと視線を向けた後、彩矢の方に視線を戻してそう言ったんだ。


「はい。やはり京には……、コホン。実際に見ていただいた方が分かりやすいと思いましたので」


それに彩矢が何か言いかけていたみたいだけど、咳払いをした後、健吾にそう言ったんだ。確かに百聞は一見に如かずっていうくらいだし、見てもらった方が分かりやすいもんね。何を言いかけたのかが気になることは気になるけど、折角2人の話が始まるというときに腰を折るわけにはいかないと思った僕は黙って2人の様子を見ていると


「あぁ、そうだな。ありがとう。すぐにわかったよ」


健吾は彩矢に微笑みながらそう言っていたんだ。


「い、いえ。健吾さんにわかっていただけたなら何よりです。それより直接私と話したいこととは……?」


彩矢はそれに少し動揺したような反応を見せた後、健吾にそう尋ねていたんだ。


「あぁ、それなんだが……」


すると健吾はそう言った後、夏休みのことについて、不要にグランドに近づいたことについて謝って、それに彩矢は笑みを浮かべながら言葉を返していたんだ。あのときのことは彩矢が詳しく教えてくれないこともあって、口を挿めない僕は2人の会話を聞いていると、ふいにその話が終わり、僕の方にも話を振ってくれたんだよね。それからは僕も一緒に話が出来るようになり、お母さんがご飯の準備が出来たと呼びに来るまで3人で他愛無い話を続けたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ