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神様によるペナルティ  作者: ずごろん
第四章 二学期編
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122話 2つ目の追加ペナルティ③

すみません、遅れました。

「ん……」


ふと目が覚めると、久しぶりに見た保健室の天井が視界に広がっていたんだよね。周りに誰もいないことを確かめてから僕は、一縷(いちる)の望みをかけて


「今さっき神様と会ったことは夢だったりして……」


と呟いてみたんだけど


『そんなことあるわけないでしょう』


とどこからともなく僕の声と同じ声が聞こえてきたんだよね。誰もいないはずなのに声が、しかも僕のそれと全く同じ声が聞こえてきたこともあって、身体をビクリと震わせてから


「…………やっぱりそうだよね……、ってあれ? でも彩矢はどこに……?」


声の主である彩矢がどこかにいるのかと思って、辺りを見渡しながらそう尋ねると、


『はぁ……。あの人が言っていましたが、私は精神体です。貴方の身体を依代にしていますので、私の声は貴方以外には聞こえていませんよ? とどのつまり、貴方の心に直接話しかけていますっていうやつです』


彩矢は溜息をついてから僕にそう言ってきたんだ。だけど、それって……


「今、他の人から見たら僕は独りで話しているってこと……?」


完全に危ない人だよね。今は誰も居ないみたいだから大丈夫だけど、他の人がいるときに彩矢と話していたら、絶対周りの人に引かれちゃうよね、うん。

さすがに周りに人がいるときは話しかけてこないだろうけど、それでも彩矢と話をするときはどうすればいいのだろうと思っていると、


『それでしたら大丈夫ですよ? 私だけでなく京も――』


彩矢は僕の考えたことを読んだのか、何かを言おうとしてくれていたんだけど、その前に保健室の扉が開き


「京、起きたのかしら?」


真琴がそう言いながら保健室に入ってきたんだよね。


「へっ!? あっ、う、うん」


彩矢の言葉に耳を傾けようとしていたところに急に真琴が室内に入ってきたものだから、僕は少し声を裏返しながら返事をしちゃったんだよね。まるで何かを隠しているかのような反応をしちゃったこともあり、真琴に何か言われてしまうんじゃないかと身構えていると、


「そう。ならよかったわ。あっ、でも、今誰かと話していたのかしら? 中から話し声が聞こえた気がするんだけど……?」


真琴は腕を組みながら僕にそう尋ねて来たんだよね。聞かれると思っていたことを聞かれずに済んでよかったけど、より答えづらいことを聞かれてしまった僕は結局背中に冷や汗をかくことになりながらも


「いや? そんなことないよ? 今もここには僕と真琴しかいないと思うし。気がくと違う場所にいたから思わず何か言っちゃってたかな?」


今度は声が裏返らないように気をつけながらそう返したんだ。彩矢の言葉の続きも気になるけど、それよりも真琴に彩矢と話していたことがバレないことの方が大事だもんね。バレたら何言われるかわからないし。だからこれで誤魔化せていると思いながら返事を待っていると、


「あっ!! それよ、それ!! 本当にビックリしたんだからね? 帽子も被らずに日の出ているところに行っちゃうんだもの。確かにあたしたちもからかい過ぎたかもしれないけれど、逃げる場所くらいちゃんと考えなさい?」


「あはは……。心配かけてごめんね?」


真琴は僕に指を突き立てながらそう言ってきたんだよね。神様が言っていた意識を失うまでの過程の変化はこうなったのかと図らずとも知ることが出来た僕は真琴の言ってきたことを苦笑いで誤魔化してから謝ったんだ。すると


「……はぁ。本当に気をつけなさい? みんなの目の前で京が倒れたもんだから、ちょっとした騒ぎになりかけたのよ? 今も優花や丘神君たちがみんなを落ち着かせてくれているところだし。幸い京がすぐに目覚めたからこの騒ぎもすぐに落ち着きそうね」


真琴は溜息をつきながらも現状を教えてくれたんだよね。何があったのかは想像出来ないけど、少なくてもクラスのみんなに迷惑をかけちゃったことはわかった僕は


「あはは……。みんなにも謝らないとだね」


もう一度苦笑いをしてから真琴にそう伝えると、


「えぇ、それくらいはしなさいよ? 良くも悪くもあたしたちのクラスは特に京のことになると目の色変えるんだから」


真琴はげんなりした表情を浮かべながらそう言ってきたんだよね。それで、クラスのみんな以上に真琴たちに迷惑をかけてしまっていたことを改めて思い知った僕は


「えっと……、色々してもらってごめんね? 僕が不注意だったから……」


改めて真琴に謝ったんだ。すると、


「それはいいのよ。太陽に当たったのも少しの間だけだったのもあって大事にはならなかったし。あたしよりも丘神君にお礼を言っておきなさい。京をここまで運んだのは丘神君なんだから」


真琴はそう言ってくれたんだよね。倒れた僕を保健室(ここ)まで運んでくれたのは勇輝だったんだ。また後でお礼を言わなくちゃ。だけど


「うん。そうする。でも、真琴にも助けてもらったことには変わりないからね。やっぱりありがとうだよ」


真琴の言う通りに勇輝だけにお礼を言うのは何か違うからね。だから真琴に改めて気持ちを伝えると


「そう? なら気持ちは受け取っておくわ。それじゃあ、早速丘神君を……と思ったけど、今度は京が無事だったってことであの連中は騒ぎそうだから暫くは無理そうね……。だから先に中山君を呼んでおくわね」


「へ?」


真琴は満更でもない表情を浮かべながらそう返してきたかと思うと、少し悩む素振りをした後、そんなことを言ってきたんだよね。みんなに迷惑を掛けちゃっているのに、何で勇輝だけを呼ぼうとしたのかはわからないけど、それよりも急に健吾の名前が出てきたことに思わず変な声が出ちゃったんだよね。だけど、健吾には彩矢との話し合いが終わってから話そうと思っていた僕は健吾を呼ぶのを止めてもらおうと思って口を開こうとしたんだけど、


「別に遠慮することはないわよ? そもそも京が倒れたときにすでに連絡は入れておいたしね。中山君からも何かあったらすぐ呼んでくれって言われているもの」


先に真琴にそう言われちゃったんだよね。真琴は善意で言ってくれているのはわかっているんだけど、それでももう少し時間が欲しい僕は


「いや、でも……」


と断ろうとしたんだけど、


「遠慮する必要はないわよ。もう元気そうだけど倒れたんだから、そのくらいの我儘は言いなさい? それじゃあね!!」


「あっ、ちょっ!! 真琴!!」


真琴はそう言って、僕の静止も聞かずに保健室を出て行っちゃったんだよね。真琴を止めようとして空振った手を下ろして溜息をついていると、


『……とりあえず、健吾さんが来る前に現状について整理しておきましょうか』


真琴が入ってきてから黙っていた彩矢が僕にそう言ってきたんだ。


「……うん。お願い。……はぁ」


それに僕はそう返し、もう一度溜息をついたのであった。

まだ彩矢の方しかしておりませんが、次の話以降、京と彩矢の会話は『』としていきます。

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