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神様によるペナルティ  作者: ずごろん
第四章 二学期編
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121話 2つ目の追加ペナルティ②

「あの後、健吾さんに気持ちを伝えましたか?」


僕そっくりの女の子は僕を見ながらそう尋ねて来たんだ。


「あの後……? そ、それに健吾に気持ちを伝えるって、何で君にそんなことを言われないといけないの!?」


だけど、気持ちを伝えること(それ)を他の人に指摘されるいわれもない僕は声を荒げながら言い返したんだ。だけどその子は、これ見よがしに溜息をついてから、


「そんなわけないでしょう。一時期とはいえ、私は貴方だったんですから。それに目が覚めてからはある意味またそうなるのですし」


僕にそう言ってきたんだよね。


「君が、僕だった? ……っ!!」


いきなり変なことを言われたこともあって、僕は言われたことをなぞるように呟いたんだ。そしたら、それと同時に僕はあることを思い出したんだよね。


「僕が記憶を失っていたときのっ!!」


そして思い出したことをそのまま口に出していたんだ。そんな僕の反応にその子はもう一度溜息をついて


「やっと思い出しましたか。それで、どうなんですか?」


もう一度僕に聞いてきたんだ。だけど、未だに気持ちの整理が出来ていない僕は健吾にそのことを伝えられるはずもなく……。だから何て言い返せばいいのかわからずに目を逸らしてしまっちゃったんだよね。


「……はぁ。悩むことは大いに結構ですが、早く決断しないと後悔しますよ? 今はまだ大丈夫のようですが、いつ健吾さんが久川さんのアプローチに傾くかわかりませんし」


だけど、今日何度目かわからない溜息が聞こえたと思ったら、すごく不穏な言葉も一緒に耳に入ったんだよね。だから思わずその子の方へと向き直り、


「大きなお世話……って、何で君がそんなこと知ってるの!?」


思わずその子に問いただしたんだ。確かに宣戦布告のようなものはされたけど、本当に健吾にアプローチしているなんて僕は知らなったし……。


「それはまぁ……、貴方の様子は見ていましたから。……一緒に健吾さんの様子も」


思わず凝視していると、その子は視線を僕から逸らしながらそう言ってきたんだ。視線を逸らした方を僕も見ると、ニヤニヤしながら僕たちを見守っていた神様がいたんだよね。狙ったわけじゃないけれど、僕たちの視線が集まったのがわかったみたいで神様は


「だってここで何もしないってわけにはいかないでしょ? それに当事者の京ちゃんは知らないのに彩矢(あや)ちゃんだけ知っているってことがあることも面白……じゃなかった、良いときもあるんだよ。ほら、先入観的なやつ」


僕たちにそう言ってきたんだ。途中で誤魔化そうと――全然できてなかったけど――してきたけど、それに突っ込みを入れるよりも気になる名前が出来た僕は


「彩矢……?」


その名前を呟いたんだ。すると神様は


「おぉ!! 京ちゃんよく気が付いたね。因みに彩矢ちゃんはこの子の名前だよ? 矢を彩ると書いて彩矢。矢は京ちゃんの元の名前からなんだよね。彩の方はまぁ……、ちょちょいとお姉さんがつけたって思ってくれればいいかなぁ」


いい仕事をしただろと言わんばかりに腰に手を当てて、身体を逸らしながらそう言ってきたんだよね。本当なのかどうなのかを確認するために、視線を神様から女の子――彩矢ちゃん――に移すと、


「……えぇ。この人が言っていることは本当ですよ。後、ちゃん付けは不要です」


彩矢ちゃ……彩矢は溜息をついてから神様が言っていたことを肯定し、僕の心の中を読んだかのようなことを言ってきたんだよね。それに思わずドキリとしていると、


「今貴方が思ったとおり、私は貴方の心を読めていますよ? この人も言っていたでしょう? 思っていることまでバレてしまうもう1人の人格を持ってもらうって」


彩矢は笑みを浮かべながら僕にそういってきたんだよね。

言ってきたことが本当じゃないと思いたいところなんだけど、今のやりとりで嘘ではないということがわかったわけで……。思った以上に辛いかもしれないと、これからのことに溜息をついていると、


「そうそう。京ちゃんが本当に(・・・)したいようにしないと駄目だよ? 自分の心に嘘ついちゃってたら彩矢ちゃんに体取られちゃうかもしれないからね?」


神様がそんなことを言ってきたんだよね。だから思わずギョッとしてしまいながら神様の方へ向いて、


「えっ!? そんなことはないってさっき……」


確認するようにそう尋ねたんだ。僕の聞き間違えじゃなければ体を取られることはないって言っていたはずだしね。だけど神様は


「うん。基本的にはそうだよ? でも京ちゃんの心が弱くなったりすると主人格が入れ替わる可能性があるってだけで。だから京ちゃんが自分の気持ちに嘘をつき続けて、精神的に弱ってしまうとそうなるかもしれないよってだけだから、京ちゃんがずっつ強い心を持ち続けれるなら大丈夫だよ?」


まるで言い忘れていたかことを付け足すかのように僕に説明してきたんだ。唯一安心出来そうだった部分を一瞬で取り払われてしまった僕は口をパクパクとさせていると、


「この人はこう言っていますが、余程のことがない限り私が身体の支配権を拝借することはないので安心してください。口出しはさせていただきますけども」


彩矢は僕の思考を読んだのか、僕に安心するように言ってきたんだよね。…………口出しすることは確定しているだけでも全然安心出来ないんだけど……。

今のやりとりでこれからのことに余計に不安になった僕は、あのとき軽く受け止めていなければ、結果は変わらなかったとしてもここまで不安にならなかったのではないかと後悔の念に駆られていると、


「まぁ、そこらへんの折合は2人で決めてもらうとして、2人は今どういう状況だったのか覚えている?」


神様が僕たちにそう声をかけて来たんだよね。


「「どういう状況とは?」」


僕たちは口を揃えてそう返すと、


「京ちゃんがここに来た原因についてだよ? 今ここにいる京ちゃんはあくまで精神だけだからね。さて、ここで問題。京ちゃんの身体は今どうなっているでしょう?」


「えっ……? あっ……」


神様にそう返されたんだよね。そこでようやく神様の言っている意味がわかった僕は改めて思い出したんだ。そして


「今清水の前で倒れちゃったってことだよね……?」


どうして忘れてしまっていたのだろうかと言いたいくらい悪い状況に身体があることを思い出したんだ。あの探求心で出来ているような男の前で、謎の塊である僕が意識を失っていて無事で済むはずがないと、顔を青ざめていると、


「うん、そうそう。それでも京ちゃんたちが望むのなら、少しくらいは状況を弄れるけどどうする?」


神様が僕にそんなことを言ってきたんだよね。


「……はい?」


だけど、もう駄目だと絶望していた僕は何を言われたのかを理解出来ずに呆けたような返事をしちゃったんだよね。すると、僕がわかっていないことを神様は察したみたいで、


「京ちゃんが京ちゃん(女の子)になったときに、お姉さんが京ちゃんの戸籍は女に変えたでしょう? あれみたいなもので、今京ちゃんはしみ……何とかっていう変態さんに正体がバレちゃったせいで気を失ってここに来ているでしょう?」


「へ、変態って……。確かに大体合っていますけど……」


神様は改めて説明してくれたんだ。そして途中で僕に確認するように聞いてきたんだけど、神様が言っていたことを否定しきれず、清水のことを少しだけ不憫に思いながら返すと、


「その気を失ったっていう事実は変えないけど、その過程を変えられるとしたらどうする? 例えばダンスで興奮し過ぎて帽子も被らずに日の照っているところに出ちゃって、そのまま日射病で倒れちゃったとかね。そうした場合はなんと、清水君から京ちゃんの記憶を自然な形で消すということもおまけで付けといてあげようんだけど……。あっ、でも京ちゃんが約束を破ったことはお姉さんは覚えているから、追加ペナルティが無効になるってことはないよ? それで、どうかな?」


神様はそんな提案をしてくれたんだ。正直なところ、清水は僕からしても頼れる相手ではないし、正体がバレていることはデメリットしかないからね。チラっと彩矢の方を見ると、彩矢も同じようなことを考えていたのか、視線が合ったんだ。僕たちは頷きあって、認識を合わせてから


「「お願いします」」


神様にそうお願いしたんだ。すると神様はパンと手を鳴らしてから、


「はい、じゃあそういうにするね! さ、て、と、久しぶりの生京ちゃんも十分に楽しんだし、京ちゃんには目覚めてもらおうかな? あっ、そうそう。今回の記憶操作は京ちゃんの正体を元々知っていた人たちには効かないようにしておいたから気をつけてね」


「え? それってどういう……」


そう言うと、今度は神様は指を鳴らしたんだ。最後に不穏なことを言ってきた神様に言い返そうとしたんだけど、その前に上から光が差し込んできて、僕の意識はここから離れてしまったのであった。

~~京が去ってすぐのこと~~


あれ? 君はまだ残っているの? 早く行かないと京ちゃんが目覚められないよ?


えぇ、知っています。でも、逆に言うと私が行くまで彼が目を覚ますことはありませんから。


あはは、そうだね。でも、どうしたの? 何かまだ言い足りなかった?


そうですね。やはり貴女は酷いと改めて思ったことを伝えておきたかっただけです。恐らく私はもうここには戻ってこないでしょうから。


おや、それはどうかな? 京ちゃんがまたポカをしてここに来る可能性はあると思うよ? それに、君が主人格となる可能性だってあるしね。


そこは私がそうならないように注意を払うので、もう無いでしょう。彼……いえ、そろそろ彼女と言った方がいいかもしれませんね。彼女の前ではまだ言いませんが。彼女も少しずつですが、自分の本当の気持ちに向き合い始めているようですから、後1つか2つ進展を促すことが起きればもう大丈夫でしょう。それに所詮はペナルティの私は貴女が用意したこのゲームが終われば……


おっとぉ、それ以上は喋りすぎだぞ? そういうことはわかっていても言わないのが花ってやつだよ?


……はぁ。わかりました。それでは、言いたいことは最低限ですが言えましたので。


…………ふぅ。本当に行ったかな? 京ちゃんをそのまま反転させて人格を作ったのはやっぱり失敗だったかなぁ。まぁ、あれはあれで面白いから良いんだけどね。さてさて、これからは真逆な、ただ1点に関しては全く同じな2人は私をどう楽しませてくれるかな?




~~後書き~~


一応の補足ですが、彩矢は京がまだ自分の気持ちを整理しきれていないことを知っていて健吾に気持ちを伝えたのか聞いて来ています。

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