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神様によるペナルティ  作者: ずごろん
第四章 二学期編
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119話 文化祭④

読者の皆様、あけましておめでとうございます。

今年もゆっくりとですが、更新していきますので、気長に付き合っていただけると幸いです。

「やぁ熱海さん。今少し大丈夫かい?」


真琴たちから離れて、心を落ち着かせようと深呼吸しているときに僕はそう清水に声を掛けられたんだ。


「え? あっ、し、清水……君。どうしたの?」


いきなり声を掛けられたから、思わず昔のときみたいに呼び捨てで返しそうになったんだけど、なんとか君付けで返したんだ。だけど


「ははは。別に呼び捨てでもいいよ。そう、昔みたいにね(・・・・・・)


清水は苦笑いをしながら僕にそう言ってきたんだ。


「えっと……? それってどういう意味? 昔みたいって、今日初対面だよね?」


そのときの何か確信したような清水の表情を見て、嫌な予感がした僕の背中には大量の冷や汗が出始めたんだ。でもそれを悟られるわけにもいかない僕は頬を指でかきながらそう返したんだ。


「そんなわけないよね? 中学時代からの仲なのにそんなこと言われるなんて寂しいな」


そんな僕の態度に清水はやれやれと肩をすくめながら、少しずつだけど僕へ近づいてきたんだ。僕はそれに合わせるように1歩また1歩と下がりながら


「それって京矢従兄さんのことだよね? 僕と従兄さんのことを勘違いしてない? さすがにそれは失礼じゃないかな?」


変な勘違いをするなって言ったんだ。


「ふぅん。あくまでとぼけるんだ」


すると清水はそんな僕の返しが癪に障ったのか、目を細めながら指を1本立てて


「それじゃあ、そんな君にわかるように1つずつ言っていこうか。まずは1つ目として、どうして気になったのかについて」


まるで聞き分けの悪い生徒に言い聞かせるかのように僕の眼をしっかりと見ながら言ってきたんだ。


「ゲーセンで会ったときの君の姿が男子の服だったことも大きいけれど、やっぱり初めて会ったときの反応が初対面のそれじゃなかったことかな。どちらかというと会いたく無い知り合いに思わぬところで遭遇したような反応だった。初めて会ったときは俺がいきなり話しかけたこともあたし、誰か違う人と間違えられた戸惑いが強かったからだという可能性もあったけど、小糸との顔合わせのときも初対面の振りをしているようにしか見えなかった俺はこれは気のせいではなかったと確信したんだ」


清水はゆっくりと近づきながら続けてもう1本指を立て、


「2つ目、存在しない寿司屋」


そう言ってきたんだ。そして同じ速さで下がる僕に


「熱海……では分かり辛いから京矢でいいか。京矢が板前修業をしているという寿司屋を少し調べてみたが、そもそも存在しなかった。万が一ネットでは出ない可能性も会ったからちょっとした伝手を使って調べてもらったけど、やっぱりなかったよ。そりゃそうだよね。そもそも京矢が板前修業をしているという事実が無いんだから、下手に実在している店名なんて出せないよね」


清水はどうだと言わんばかりの表情を浮かべながらそう言ってきたんだ。確かに僕と健吾が適当に作り上げた話だから存在しないけど、そんなに早く調べられるものなの!? 清水が怪しいと思い始めて半日足らずで調べてあげてきたことに驚いた僕は何も言い返せず、それよりもどうすればこの場から逃げ出せるかを焦ってほとんど機能しなくなった頭で必死に考えていると、清水は3本目の指も立てて


「3つ目はダンスの振り付け」


これが一番の決めてだと言わんばかりに、まるで突きつけるように僕に向かって腕を伸ばしてきたんだ。そしてタイミングの悪いことに後ろを確認する余裕も無く、ただただ後退していた僕はついに背が壁についてしまったんだ。そうなると僕はそれ以上後ろに下がれないわけで、


「これは本当に決定的だった。熱海、君はあの曲での癖がまだ抜けていなかったんだね」


笑みを浮かべながら近づいてくる清水に恐怖を覚えた僕は首がちぎれんばかりに振って


「い、いや。あれはそういう振り付けで……」


違うと言おうとしたんだけど、


「知らない人にはそう映っただろうね。君の周りにいた人たちは君に合わせた踊りをしていたから。でもね? 分かる人には分かるんだよ? 君はあのとき、決まっていた踊りでではなく、無意識であの動きをしちゃっていたでしょ? 予想外だったみたいで少し焦っていたようだったしね」


清水はそれに被せるようにして僕の言おうとしたことを論破してきたんだ。


「そして最後に……」


ついに僕の目の前まで来た清水はそう言って一度言葉を区切ると、僕に突きつけていた手を下ろしたかと思うと、


「これは何だと思う?」


今日一番の笑みを浮かべながら僕に何かを見せて来たんだ。見せて来たものが何かがわかった僕は思わず


「ぼ、僕の携帯!!」


そう叫んだんだ。どうやったのかはわからないけど、清水の手の中に僕の携帯が握られていたんだ。


「返してっ!!」


取り返そうと手を伸ばしたんだけど、「おっと」という声と共に僕の手が届かない位置へ手を挙げられてしまったんだ。


「君の言いたいことはわかるよ? 俺がしたことは普通に犯罪だし。だからもし間違っていたら俺を好きなところに突き出していいよ。ここの守衛でもいいし、警察でもいい。どこへ連れていこうとしても俺は抵抗しないことを約束するよ」


僕が携帯を取り返せないところまで下がった清水は僕の携帯を片手で弄りながらそう言ってきたんだ。そして、


「さすがにプロテクトまでは外せないから中身は確認出来ないけど、それでも確認する方法はあるよね?」


そう言うと清水はもう片方の手で自分の携帯を操作し始めると、


「これ、君のメアドだよね? 駄目だよ? 電話番号を変えただけで安心しちゃ。普通なら偶然ってことで片付けられるかもしれないけど、こんな状況にまで持っていかれてしまうと……」


僕に見せつけるように僕のメアドを宛先としたメールを送ったんだ。そしてすぐに僕の携帯にメールの着信があったんだ。


「こうやってプロテクトがあっても確かめられちゃうよね? そして俺の予想通り、今の着信は俺からのようだ。これらが示すことはつまり……」


清水はそこで言葉を切ると、僕に指を突き立て、


「どうしてそんな姿(女の子)になったのかまではわからないけど、君は京矢だね」


そう言い切ったんだ。するとまるでその言葉に連動するかのように、いつの日かの強烈な胸の痛みを感じ、そのまま僕の意識は暗転したのであった……。

当初、清水のキャラはこんなキャラになる予定ではなかったのに、どうしてこうなった。

ちなみに清水は板前のところはハッタリを掛けただけです。そこまで調べられていません。

携帯も盗んだのではなく、京の携帯と同機種を用意しただけです。京に見えないようにその携帯にも届くように設定していただけです。まぁ、そこまでするのでも十分すごいですが。


また、ボツになった話ですが、ここで京が元男だと気付くの清水ではなく勇輝だったという展開もあったりなかったり。作者のスキルではどうしてもその展開に持っていく流れが思いつかずにボツになりました。

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