表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様によるペナルティ  作者: ずごろん
第四章 二学期編
157/217

115話 予兆

かなりの寒がりな作者には毎朝起きるのが辛い今日この頃。もちろん寒くなくても朝起きるのは辛いですが。

読者の皆様も体調面にはお気を付けください。

「はぁ!? 清水に会った!?」


健吾の自転車の後ろに乗せてもらいながら学校へ向かっている途中、ゲーセンで清水と再会をしたことを何気無く健吾に伝えると健吾が声を荒げながら聞き返してきたんだよね。急に耳元で大声を出されたものだから僕は体を跳ねさせちゃったんだ。そうすると自転車のバランスも崩れるわけで、


「おっとぉ!?」


健吾は急に崩れたバランスを戻そうとしていたんだよね。僕は落ちないように健吾を掴む手に力を入れながら昨日のことを思い出していたんだ。因みに今健吾の後ろに乗せてもらっているのは特に僕の調子が悪いとかそういうわけじゃなくて、昨日の夜に急に健吾から僕を乗せて学校に行くと言い出してきたからなんだよね。最初は特に送ってもらう理由も特に無かったから断ったんだけど、その後も色々あったんだけど、結局あの時は明日――つまり今日に健吾用のお弁当も用意して、それで中身を出来る限り健吾の好きな料理にするということで押し切られちゃったんだ。あのとき、かなり眠くなってきていて判断が鈍くなってきていたのもあったけど、何でごり押されちゃったんだろうと力を入れていた手の力を少し抜きつつ思っていると、


「ふぅ……。それで、大丈夫だったのか?」


健吾は僕にそう尋ねて来たんだ。それは僕の正体がって意味だということはさすがに察することが出来た僕は


「うん。顔をしっかりと見られたら危なかったかもしれないけど、勇輝が助けてくれたから大丈夫だったよ」


健吾が少しでも安心出来るようにと思って顔は見られていないことを伝えたんだよね。だけど、


「ふぅん。丘神がねぇ」


健吾はどこか疑うような声で返して来たんだ。その声にムッと来た僕は


「ほんと何だよ? もう駄目だと思ったときにスッと僕と清水の間に入ってくれて大丈夫だったんだから。あのときの勇輝は本当に恰好良かったなぁ。僕だったら……」


そのときのことを考えながら言い返したんだ。友達のピンチにすぐに駆け付けられるなんて()としても憧れるしね。だからこそ健吾にもそのことを言おうと思っていたんだけど、その途中で


「まぁ、京が無事乗り切れたならそれでいいさ。……ったく。何で……丘神のことを……」


健吾に遮られちゃったんだよね。最後の方は声が小さかったのと、風の音も相まってほとんど聞こえなかったんだけど、それでも何となく健吾が言いたいことがわかった僕は


「勇輝は健吾の紹介で仲良くなったってわけじゃないんだからいいでしょ?」


健吾にそう言ったんだ。清水含め、中学時代の友達はほとんど健吾の紹介で仲良くなったからね。それで仲良くなってきたときに下の名前で呼ぼうとしたんだけど、健吾にそう言われちゃったんだ。だから今でも清水たちは清水って感じで苗字で呼んでるんだ。だからこそ勇輝って呼び方には文句を言わせないって意味も込めてそう言ったんだけど、


「ん? あぁ、別に俺も止めはしてないだろ? そもそも止めるなら京が丘神のことを勇輝と(そう)呼び始めたときに言っているさ」


健吾から特に気にしていないって返事が来たんだよね。思っていた反応と全然違っていて、もしかしてさっきのは違う意味だった? と思い始めたところで


「それよりも少し不味いことになったなぁ」


健吾がそう呟いたんだ。その言葉が気になった僕は


「えっと、どういう意味?」


健吾に何が不味いのかを尋ねたんだ。すると、


「ほら、俺たちの学校はもうすぐ文化祭だろ? で、俺たちの学校の文化祭は在学生の紹介さえあれば誰でも入れるからさ、清水たちが招待状を寄越せって五月蝿(うるさ)かったんだよ」


健吾が説明してくれたんだ。だけど


「……えっと? 別に清水たちが来るのは問題無いんじゃないの?」


別に健吾が不味いと言うほどのことでもないと思うんだよね。そもそも今の姿になってからは会いたくても会えないもん。僕が京矢だって言えるわけもないし。偶に連絡は取っていて、会おうって言ってくれるんだけど、寿司職人を目指して頑張っているということになっているから会える場所にはいないってことで断っているんだよね。だからこそ当日は来てくれたら遠目に元気な姿だけでも見たいかな、なんて考えていると、


「……招待状を渡すこと自体は別に不味くはないんだ。招待状を渡せる時期になってすぐにあいつらに渡したしな。俺が不味いと思ったのは京のことだよ」


健吾がそう言ってきたんだよね。


「え? 僕?」


まさか僕のことを言っているとは思わず、っというよりもそもそも僕の何が不味いのかの見当もつかなかった僕はただそう返すと、


「当日にあいつらに京のことを紹介するつもりだったんだよ。京矢の従妹として京を紹介するつもりだったんだ。人間第一印象が大事だろ? だからこそ京と京矢が別人だってことを強調するつもりだったんだよ。そうすれば万が一もしかしてって思ったとしても別人だという第一印象が邪魔をして中々京と京矢が同一人物だって考えつかないだろうしな。だからこそそれまでに京があいつらと再会してしまうのは不味かったんだ。しかも一番察しが良い清水だろ?」


健吾がそう説明してくれたんだ。


僕は遠目で良かったんだけど、健吾は色々と考えていてくれたみたい。まぁ、僕が清水と会っちゃったせいで台無しになっちゃったけどね……。もう(京矢)に似た(女子)を見つけたってみんなに言っちゃっているだろうし……。それよりも健吾が言っていた第一印象だけど、まだ健吾には言っていないけど最初に京矢と間違えられちゃっているよね……。


勇輝が僕は女だ。京矢では断じてないってハッキリ言ってくれたから大丈夫だとは思うけど、健吾の言ったことが妙に引っかかった僕は嫌な汗が出始めたんだ。


健吾にそのことを伝えようかどうか迷っていると、僕が急に黙ったものだから、


「京? どうかしたか? まさか本当は清水と何かあったのか?」


健吾が心配したような声色で僕にそう聞いてきたんだ。だけど僕は咄嗟に


「ううん。大丈夫だよ」


そう返しちゃったんだ。


そう返しちゃった手前、中々やっぱり……って蒸し返し辛くなった僕はせめて気分を紛らわせるためにもお互いの文化祭の準備の進捗状況についての話題を振ったりしたんだけど、結局考えの片隅に引っかかってしまったそれはとれることはなかったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ