112話 予想外の再開
次話を更新するときにサブタイトルを考えていたものに変更します。
タイトルを隠して~ってのをしてみたかっただけですので、
作者のわがままですが、サブタイトルは次の更新までお待ちください。
【追記】
次話を更新しましたので、タイトルを更新しました。
「京、次の土日のどちらか空いておらんかの?」
勇輝とのあの気まずい練習の翌日、僕の不注意で勇輝に見たくもないものを見せてしまったかもしれないという負い目もあって勇輝にどう接すればいいかわからなくなっていたんだよね。あのときに僕が何も気にしていない風を装えていればそんなこともなかったんだろうけど、変に意識しちゃったせいで好意で勇輝がダンスを見てくれたのにほとんど進歩なかったもんね……。勇輝と話さなくちゃと思いながらも踏ん切りがつかずにいると勇輝からそう声を掛けてきてくれたんだよね。
「え、えっと……。今のところは特に用事もないから大丈夫なはず……だよ?」
まだ心の準備が出来ていないところに張本人から話しかけられたことに戸惑いながらも、頭をフル回転させて予定がないことを何とか確認できた僕はそう勇輝へ返したんだ。すると、
「それなら……、そうじゃのぅ。土曜日に少々付き合ってもらいたい場所があるんじゃが、どうじゃろうか?」
勇輝は土曜日に遊べないかって誘ってくれたんだよね。勇輝とはちゃんと話さないとと思いながらも中々踏み出せなかった僕としては願ってもないお誘いだったけど
「うん。僕は全然良いけど……。勇輝は「ならそういうことで頼む。すまんな、次の授業の準備を手伝ってくれって頼まれておるから早めに行かんといけんのじゃ」いい……の……?」
勇輝が無理して誘ってないか聞こうと思ったんだけど、その前に勇輝はそう言って教室から出て行っちゃったんだよね。それをポカンと見送っていると、
「よかったじゃない。何があったかまでは知らないけど、話しかけたくても話しかけられなかった張本人にデートに誘ってもらえて」
真琴がそう話しかけてきたんだ。
「……やっぱりそんなにわかりやすかった?」
出来るだけバレないよう、バレないようにと意識していたつもりだったのに真琴にそう言われてしまった僕は真琴にそう聞き返すと、
「そりゃねぇ。あれだけしきりに丘神君の方へ視線を送っては逸らしてを繰り返しているんだもの。バレバレもバレバレよ」
真琴は呆れた表情を浮かべながらそう返してきたんだよね。そんなに酷かった!? と思って思わず真琴と一緒に僕のところへきていた優花ちゃんの方を見たんだけど、苦笑で返されちゃったんだよね。それで真琴の言っていたことが事実だということがわかってガックリと肩を落としていると、
「で? その肝心な丘神君とのデートだけど、どうするつもりなの? まさか今のギクシャクしたままでデートするわけなじゃないでしょ?」
真琴は勇輝と遊ぶことについてそう聞いてきたんだ。
「うん。それは大丈夫だよ。僕が勇輝に話しかけられなかったのは勇輝が僕に対して怒っているか不安だっただからだし。たぶん僕の思い過ごしだったみたいだから大丈夫だよ、うん。後、デートじゃないよ? ただ遊びにいくだけだよ」
だけど、大元の問題は勘違いだったみたいだし、ただ遊びに行くだけだと思っている僕はそう返したんだ。たぶん当日もゲーセンに行ったりするだけだろうしね。
だけど、僕の返事に真琴と優花ちゃんは
「はぁ……。だからそれでも2人きりっていうのが……、いえ、何でもないわ」
「まぁ、京さんですもんね。それよりも次は別の教室ですし、そろそろ移動しないと授業に間に合わなくなってしまいますので、向かいましょうか」
軽く溜息をついてきたんだよね。そのことに反論しようとしたけど、優花ちゃんの言う通り次の授業までの時間が残り時間が少なくなっていて、遅刻するわけにはいかないので僕は不完全燃焼のまま次の教室へと向かったのであった。
………………
…………
……
「久しぶりに着てみたけど……」
勇輝と遊びに行く当日、僕は中一のときの服を着ているんだ。勇輝は気にしていないようだったけど、それでもやっぱりあんなこともあったから女物の服で勇輝と出かけるのがはばかれた僕は男物の服で今着れる服を探した結果、今着ている服になったんだ。
それで、今鏡に映っているいる僕の姿を見ていたんだけど……
「やっぱり中一のときの服でピッタリって悲しくなってくるね……」
そう呟きながら肩を落としたんだ。やっぱりただでさえ小さいというコンプレックスの中でやっと伸びた身長――それでも周りよりは小さかったけど――がまた昔に元通りになったからね。
僕は1つ溜息をついてから、改めて服装に違和感がないかどうかチェックしていると、
「京、そろそろ準備しないと時間がなくなる……あら、懐かしい服ね」
いつものようにノックをしないでお母さんが入ってきたんだ。もはや抗議することも諦めた僕はさっきとは違う意味で溜息を1つついてから、
「うん、ちょっと思うところがあってね。それでどう? おかしいところとかあるかな?」
お母さんに前後が見えるように体を動かしながら尋ねると、
「まぁ、昔に着ていた服だしおかしいところはないわよ。ただ、さすがにその髪は少し違和感があると言えばそうかしらね?」
お母さんは顎に手を当てながらそう言ってきたんだよね。僕も自身の髪を手に持ちながら
「やっぱりこの服にこの髪は合わないよね……。やっぱり帽子の中に入れるとかしないと駄目だよねぇ」
そんな都合の良い帽子持っていたかなぁと思い返しつつそう返したんだ。するとお母さんが
「丁度いいのがあるわよ?」
そんなことを言ってきたんだ。
「へ?」
まさかそんな都合の良いことがあるなんて思っていなかった僕は思わず気の抜けた返事をしちゃったんだよね。そんな僕の反応にお母さんは気にすることなく、どこから取り出したのか、いつの間にかキャスケット帽を持っていたんだよね。
「これなら丁度髪を中に入れられるでしょ? 後、そろそろ時間もギリギリになってきたんじゃない?」
そしてその帽子を僕に渡しながらそう言ってきたんだ。お母さんの言葉に慌てて時計を確認すると、お母さんの言う通り早く準備しないと間に合わない時間にまで迫ってきていたんだよね。だから僕は慌ててそれでいて髪が傷まないように気をつけながら帽子の中へと髪を入れ、軽くおかしいところがないかをチェックしてから、
「え? あ、うん! お母さんありがとう!! それじゃあ行ってきます!!」
僕はお母さんに礼を言って家を飛び出し、そのときに「気をつけなさいよ」という声が聞こえた気がしたけど、僕は気にすることなく待ち合わせ場所へ向かったのであった。




