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神様によるペナルティ  作者: ずごろん
第四章 二学期編
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106話 補講前のやりとり

「……健吾」


補講の教室に入るとすぐに健吾を見つけてしまった僕は思わずそう呟いてしまったんだ。だけど健吾は友達であろう男の子と話していたから僕の呟きには気がつかなかったみたいだったんだよね。そのことにホッとしながら、扉の前でジッと立っているのもあれだと思った僕は教室に入り、健吾には気がつかれませんようにと祈りながら健吾から出来るだけ離れた席に座ったのであった。


…………

……


だけど僕の祈りもむなしく、


「京、少しいいか」


友達との会話を終わらしたのであろう健吾がそう声を掛けてきたんだ。


「……なに?」


だけど、久川さんがいないから僕に話しかけてきただけだろうし、今は健吾と話したくない僕は健吾の方に向こうともせずにそう返したんだ。そのまま健吾を追い返そうと思った僕は何となく机の上に出して開いたままだった教科書を眺めて勉強していますオーラを出したんだけど、


「……話があるんだ」


健吾は僕の話を聞く気がない態度にもめげずに声を掛けてきたんだよね。僕はそれを無視して教科書の内容を見直そうとして文字を追いかけたんだ。正直全然教科書の内容は頭に入ってこなかったけど、意地で教科書に書かれている文字にかじりついていると、


「……京、こっちを向いてくれ」


健吾がもう一度声を掛けてきたんだ。僕はそれに対し露骨に溜息をついてから教科書を閉じて、


「……だから何? 僕は今補講の準備をしているんだけど?」


健吾にそう返したんだ。……僕ってこんなに嫌なやつだったっけ? そんな心の奥底に生まれた疑問を見ないように蓋をしながら健吾の反応を待っていると、


「あぁ、京にどうしても言いたいことがあるんだ」


健吾は真剣な表情で僕にそう言ってきたんだ。


「……久川さんのことだよね?」


それに僕は確認するかのように呟くと、健吾は頷いて返してきたんだ。……あぁ、やっぱり付き合うことになったんだね。さっきから見ないようと蓋をしても溢れ出てくる自分への問いかけとは別に、チクリと感じた胸の痛みも無理矢理振り払い、


「……そっか。おめでとう」


何とか健吾にそう伝えることが出来たんだ。こうして2人の関係を僕に伝えに来たってことは、とどのつまりこれからは余り関わらないようにしたいって伝えに来たってことだよね? 彼女持ちの男子の周りに()が居たんじゃ色々と迷惑かけちゃうもんね。あれからずっと避けてきたのは僕自身だけど、それでもこれからは健吾とはゆっくり話をすることも出来ないだろうし、最後の見納めにと健吾の顔を見たんだけど健吾はポカンとした表情を浮かべて目をしばたたかせていたんだよね。健吾が予想外の表情を浮かべていたことに思わず健吾の顔をジッと見ていると、健吾の表情はハッと何かに気が付いた表情へと変わり、


「あぁ……、そういうことか……」


ガクリと擬音がつくんじゃないかってくらい勢い良く肩を落としたんだ。そして


「京に1つ確認したいんだが」


ゆっくりと顔をあげながら僕にそう言い、顔をあげ切った後に、


「京は俺が久川さんと付き合い始めたって報告をしに来たと思っているのか?」


改めて僕にそう尋ねて来たんだ。その質問に今度は僕が目をしばたたかせ、


「……違ったの?」


思わずそう聞き返したんだ。すると健吾は視線を上へ向けて額に手を当てていたんだよね。健吾から答えが返ってこないのもあって、一体さっきの問いがどういう意図だったのかがわからずに健吾の様子を窺てっていると、健吾は再び僕の方へと視線を戻して


「すまん、あの状況だったら勘違いしてしまうよな……。俺は久川さんとは付き合ってないぞ」


謝ってきたかと思うとそんなことを言ってきたんだよね。


「……え?」


だけど、いきなりそんなことを言われたこともあって僕は上手く聞き取れなくて――正確には理解出来なくて――もう一度聞き返したんだ。


「もう一度言うぞ? 俺は久川さんとは付き合ってない」


すると健吾は真っ直ぐ僕の視線に合わせるようにしてからそう言ったんだ。健吾が久川さんとは付き合ってない……って、ほんとに? 今健吾が嘘をつく必要なんて全くないし……。 ってことは本当に本当なの? 健吾の様子を窺ったんだけど、未だに僕を真っ直ぐ見ていたんだよね。健吾の態度から、健吾が本当のことを言っているのだということを理解した僕は


「……そっか」


安堵の溜息を漏らして、そのまま僕は椅子の背もたれに体を預けたんだ。今の今まで健吾に向けていた感情の正体にはまだ(・・)向き合えそうにはないけれど、それでも今は健吾との関係が壊れなかったことを喜ばないとと考えていると、


「あぁ。余計な誤解をさせてしまってすまなかった。それにそもそもお前を差し置いて誰かと付き合うなんて考えられないしな。それよりもだな……」


健吾は改めてもう一度謝ってきたんだよね。だけど、その後は何か言い辛そうに口ごもっていたんだ。何を言うつもりなんだろうと、今は何も考えられないくら脱力していた僕は呆然と健吾の言葉の続きを待っていると、


「久川さんと俺が付き合っていると勘違いしていたときの……、その……、京の反応って……」


言葉に詰まりながらも健吾がそう言葉を続けていたんだ。だけど、その途中で健吾が何を言おうとしているのかがわかってしまった僕は背筋をピンと伸ばしてから


「ご、ごめんね! やっぱり健吾が一番の"友達"だからさ! 久川さんに"友達"を取られちゃうと思ってあんな態度を取っちゃったんだ! だから、僕の方こそごめんね?」


無理矢理健吾の話している途中に割り込み、友達を強調するようにしながら謝ったんだよね。かなり苦しい言い訳みたいになってしまい、健吾に突っ込まれたらどうしようかと内心冷や汗をかきながら健吾の反応を待っていると、


「い、いや。俺の方こそ京に変な誤解をさせてしまったし、俺の方が悪かった……って言いだしたら終わらないよな。だから今回はお互い様ということにしようか。……そうだよな。京が嫉妬してくれるわけないよな」


僕の予想とは異なった返事が返ってきたんだよね。健吾の提案に乗れば色々と誤魔化すことが出来ると思った僕は、提案の後に健吾が何か呟いてけどそれを気にすることもなく、


「う、うん。健吾さえ良ければそれで」


言葉で肯定しながら頷いて返したんだ。僕の滅茶苦茶な言い分に健吾が何も言ってこなかったことは不思議だったけど、そのことを聞いちゃうと改めて聞かれちゃうかもしれないしね? だからこそ僕は話をそのまま流すためにも頷いたんだ。すると健吾は


「あ、あぁ。じゃあ、そういうことで頼む。それじゃあ向こうであいつら待たしているからまた後でな。後、今日は久しぶりに一緒に帰ろうぜ。補講が終われば特に用事がないし」


何かを振り払うかのように顔を左右に振った後、僕にそう言って健吾の後ろを指さしたんだ。すると健吾がさっきまで話していた男子が居たから、やっぱり健吾の友達だったみたいだね。僕が健吾を避けていた理由は勘違いだったことがわかって、断る理由もなくなった僕は頷いて返したんだ。すると、


「それじゃあ、放課後にな」


と健吾は言って健吾の男友達の方へ戻っていったんだ。僕はそれを見送った後、心の奥へ閉じ込めていた気持ちを落ち着かせるために、補講が始まるまで机に突っ伏したのであった。

中々良い表現が出来なかったのですが、京の心の葛藤が伝われば幸いです。


ちなみに健吾はこの後男友達に補講が始まるまでからかわれ続けました。

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