章間⑳　見届けた者の呟き

最後まで耐えたかー。

いやぁ、途中で緩めてあげたとはいえ、最後まで耐えられるとは思わなかったなぁ。

やっぱり恋の力って偉大ってことがよくわかったよね。本人は自分の口からは言わないって言っていたけど、態度でバレバレだったし。

まぁ、あれも人格が入れ替わったときに感情が消えないようにしたのが悪かったような気もするけど、きっと気のせいだよね。あの子も満更でもなさそうだったし。

それにしても、面白かったなぁ。京ちゃんを女の子に変えたときに生まれちゃった人格とはいえ、表に出ることはなかったはずなのにねぇ。あっ、ちなみにここもあの娘が言っていた憶測とは違うことの1つね。

まぁそれは置いといて、あの娘が表に出るくらい京ちゃんが自分を否定したことも結構驚いたんだよ？　可能性としてあることは知っていたけど、かなり低い確率だったし。健吾君たちが京ちゃんを助けられない可能性の方がまだ高かったんじゃないかな？　そういう意味じゃあの……バットで健吾君を殴った男の子はいい仕事をしたよね。ん？　あの子がどうなったかって？　さぁ？　あんな子興味がないし。誘拐に傷害を起こしたんだから、警察のお世話になっているんじゃない？

どんな気持ちだったんだろうね。内側にあって、まともな自我もない状態だったのに、急に自我が芽生えて、京ちゃんが押し殺している感情が流れてきたときの気持ちって。

やっぱり一目惚れみたいだったのかな？　それともただ混乱しただけだったのかな？　あのときも名前も知らないし、顔も初めてみたのに『この人が好き』っていう感情だけが全面的に出てきて感情の整理が出来ないで混乱していたって感じだったし。

あの後健吾君が上手くフォローしたから関係は良好だったから、もしかしたらラブコメ展開を拝めるんじゃないかなって思ったんだけど、あの娘が察しが良すぎて、自分が何者なのかうっすらとわかっちゃったのはいけなかったね。まぁ、京ちゃんが京ちゃんだから、あの娘がそうなっちゃうのは仕方がないんだけど、もうちょっと積極性は欲しかったよね。京ちゃんはそういう面も疎いからってのもあったんだけど、それも思っていた方向とは違う方向になっちゃったからなぁ。

まぁ、別にいいんだけどね。あの娘は結局女の子だし。ただの男の子と女の子が恋愛するってのも、まぁ……、アクセントがあれば面白いけど、基本的には普通過ぎて面白くないもんね。やっぱりあれだよね？　元男の子が戸惑いながらどんどん体につられて、最後には……ってなってくれた方が見てて面白いよね！

そういう意味でも最後のあの娘の行動には感謝しないといけないかな？　思っていた以上に健吾君がヘタレだったのと、京ちゃんが想像していたよりも恋愛面では体に引きずられなかったしね。何回かいい感じになりかけたことはあったけど、なりかけたで止まっちゃっていたし。勇輝君も健吾君以上にヘタレだったから期待は出来なかったしね。でも、あのとき健吾君に宣言していたみたいだから2学期からは期待かな？　夏休みまでは大人しくしているって宣言したあのなんちゃってお嬢様も気になるところだし、私が一番見たい展開になってくれるように期待だね。っと、話がそれちゃったね。それで、あの娘に感謝することだけど、もちろん最後のあれだよね！　健吾君自身はそこまで変わらないかもしれないけど、あれをした記憶はもちろん京ちゃんへ引き継がれるから、京ちゃんから健吾君への態度には絶対何かしら変化が起きるから要注目ってやつだ。どんな風に変わるかな？　あのときのことが恥ずかしくて健吾君と顔を合わせられなくなるのかな？　それとも、さも何もなかったように振る舞おうとしてカッチカチになっちゃうのかな？　どうなるんだろうね？　いやぁ、楽しみだなぁ。

こんな楽しみを残してくれたあの娘にも何かしてあげようかなぁ。でも、あの娘が完全に表に出てくるのはあまり面白くないし……。んー……、あっ、そうだ。こうしてあげればいいかな？　あの娘にとってこれは嬉しいかどうかは微妙なところだけど、見てるこっちからすれば楽しいからいいよね？　アハハ♪

まぁ、一応準備はしておくけど、また京ちゃんの奥深くにいってしまったあの娘を無理矢理引っ張りだすんだから、何かきっかけがないと無理なんだけどね？　一番チャンスがあるとしたらそうだなぁ……、文化祭のときが一番可能性が高いかな？　それまでにも何回かはありそうだけど、そっちは可能性薄そうだしね。実質文化祭が最初で最後のチャンスかな？　京ちゃんが期待通りに動いてくれることを願うしかないね！

っと、話しをしていたら京ちゃんが目を覚ましそうだね。そろそろ黙って大人しく見ていようかな？

さぁ、京ちゃんは最初にどんな行動をしてくれるかな？　京ちゃんは時折私が予想していない行動を取ってくれるからね。本当楽しみだなぁ。

<見届けた者の呟き　END>