88.? ??? の中で
4年に1度の閏年なので、折角なので更新を。
そのために土日に更新しなかったというわけでは(ry
「こ……ここは……?」
気が付くと私は真っ白い空間にいました。
確か私は……あっ、バットの金属音を聞いてしまい、取り乱してしまいましたね……。健吾さんには悪いことをしてしまいました。気にしていなければいいのですが……。
そんなことを考えながら、改めてここがどこなのかを確認するために辺りを見回していると、
「やぁやぁやぁ。来たね来たね。思っているよりも早いご到着だったってことは……だ。さてはあの馬鹿運動場に行っちゃったね」
カラカラと笑いながらフードで顔を隠した女の人がどこからともなく現れました。まぁ、話し方と雰囲気で誰なのかはすぐにわかりましたが……。
「この場所は……、いえ、この空間と言った方がいいでしょうか? ここは貴女が作り出したものですよね?」
何もないところから現れたこともあり、そう思い至った私がそう尋ねると、
「たはは……。やっぱり君は察しが良すぎるね」
彼女は苦笑しながらそう返してきました。反応からするに、肯定ということなのでしょう。
「多少憶測部分はありましたが、大抵の方はお分かりになると思いますが……」
あれだけの前振りをしていたのです。これでわからないという方がおかしいでしょう。もちろん例外もいらっしゃいますが……。
そこまで考えたところで、私の考えていたことを代弁するかのように、
「京ちゃんは大抵じゃない方に入るんだけどねぇ」
彼女にそう言われてしまいました。今度は私が苦笑しながら
「そうですね」
とだけ返しました。
すると、彼女がハッとした表情を――フードに隠れているためわかり辛いですが――して、
「そういえば、普通に会話が続いていたからスルーしかけたけど、私が君と京ちゃんを区別しているっていうのはわかったんだ?」
私にそう問いかけてきました。その問いに私は
「えぇ。だって貴女は私が京に戻りたいと言ったときから私のことを京とは呼んでいないでしょう?」
そのように返しました。あえて笑顔を作って返すと、彼女はお手上げといわんばかりに両手をあげ、
「あーあ、そこまでわかってたかー。ほんっと君って察しが良すぎてお姉さん悲しいぞ? もう少し可愛げがある方がモテるよ?」
いらない一言と共に言葉が返してきました。
「余計なお世話です。私は……いえ、これは私の口から言うことではないでしょう」
売り言葉に買い言葉と、思わず言い返しそうになりましたがなんとか踏みとどまりました。やはりそれも面白くなかったのでしょう
「ほんっと君って京ちゃんとは全然違うよねぇ」
彼女は口を尖らせながら抗議の声をあげてきました。
「それはそうでしょう。私は京であって、京ではないのですから」
しかし私はそのテンションには付き合わず、淡々と返すと、
「ほうほう? その言い方からだと、君は自分がどういった存在なのか薄々感づいているんだ?」
私の表現の仕方に興味を持ったのか、彼女は真顔に戻って私にそう尋ねてきました。
これは私が辿り着いた答えを聞いてもらえるいい機会だと思い、
「私は京とはほぼ正反対の存在なのでしょう? 幾千万ある過去未来の分岐の中で、最も京から離れた存在と言った方が正しいでしょうか。京が非常に強く『僕』を否定してしてしまったがために私と入れ替わってしまったのでしょう?」
一息でそう言い切りました。一息で言ったために少し荒くなってしまった呼吸を整えながら、この推測があっているかどうかを確認するために彼女の反応を待っていると、
「そこまで考え付くって本当にすごいね?」
とだけ返ってきました。言葉の意味からすると、全てが正解というわけではなさそうですが、幾らかあっている部分もあったのでしょう。もう少し情報を引き出すことが出来ないかと口を開こうとすると、
「これ以上はネタバレになるからもう何を言われてもこのことは答えないよ? さっきのだって出血大サービスなんだから」
被せるように彼女にそう言われてしまいました。何がネタバレなのかはわかりませんが、顔の前で大きくバツを作り、これ以上は絶対答えないという姿勢を見せてくる彼女の姿を見て、これ以上は無理そうだと軽く溜息をついていると、
「それで、どうだった?」
いきなりそのような漠然とした質問が飛んできました。質問の意図がわからなかった私は
「どう……とは?」
質問を質問で返すと、
「目が覚めたときに健吾君が目の前に居た感想と、今日までの間ずっと健吾君と共に居た感想かな? 最初は記憶を失っていたけど、感情までは失われていなかったのはこっちで確認していたから、感想を聞ける機会を今か今かと待ちわびていたんだよ?」
彼女はニヤニヤさせながら改めて質問をしてきました。ですが、
「……先ほども言いましたが、私の口からは言うことではありません」
このことだけは私が言うべきことではありません。これは京ではなく、京の問題です。ですからハッキリと答えられないと答えたのですが、
「だよねぇ。ただ、今の答えから大体わかったけどね。そういうことにしといてあげるね? それで、今からの質問が本命なんだけど、どうする?」
答えはわかっているといわんばかりにニヤニヤしながら言い返されました。ですが途中で再び真顔に戻り、そう尋ねてきました。
「どうだけではわからないとは先ほども言ったのですが」
だだ先ほどと同様に主語も目的も何もない質問では答えようがないと私がそう返すと、
「うん、ごめん。わかっててやった。後悔はしてないから問題はないよね! こほん、それは置いといて、今回の質問はもう京ちゃんに戻るかどうかって質問なんだ。どうする? あのときのおまじないで君が寝るか意識を失えば戻れるようにはしていたんだけど……。後1回くらいなら延長出来るけど?」
何故か軽くサムズアップをしてから彼女はそう改めて質問をしてきました。
なぜサムズアップしたのかについて問うことを忘れる程度には大事な質問でしたが、
「延長をお願いします」
私は即答で答えました。
「へぇ? どうして?」
即答したこともあって、彼女はこちらの答えがわかっていたと思うのですが、それでもそう返してきましたので、
「あの出来後のまま健吾さんとお別れしたくなかったからです。まだ私は健吾さんにお礼を言えておりませんので、お礼だけでも『私』の口から伝えたいんです」
私は彼女も目があるだろう部分を見てハッキリと答えました。
この答えは彼女が望んでいたものだったらしく、
「うんうん。やっぱり青春ってのはいいもんだ。よし、それじゃあ送り返すけど、大丈夫かな?」
頭を上下に揺らして満足そうな感情を乗せて私にそう言ってきました。その後に私を送り返そうとしているのでしょう、手をあげようとしていました。ですが、手が胸あたりに来たところで、
「すみません、その前にお願いしたいことがあります」
私は待ったをかけました。すると彼女はあげかけた手をとめ、
「何だい? お姉さんは今上機嫌だから余程変なことじゃない限り叶えてあげることもやぶさかじゃないよ?」
そう言ってもらえました。それに安堵した私は
「それでは……。『私』がしたこと経験したことの記憶をどうか『僕』へ伝えさせていただきたいのです。私がいたことが幻ではなかったという証明のためにも」
お願いを彼女に伝えました。そのお願いに彼女は
「なんだそんなことか。それは元々するつもりだったから安心してくれていいよ? あっ、もちろん今こうやって会話している内容に関しては無理だけど、そこは大丈夫だよね?」
元からするつもりだったということを教えてくれました。
「はい。大丈夫です。これで最後に爆弾を仕掛けることが出来そうです」
ですので私は満面の笑みで返答すると、
「おぉー怖い怖い。まぁ、それくらいはしないと京ちゃんは自覚しそうにないもんねぇ。どっちに転ぶかはお姉さんは大人しく見守っていることにするよ」
彼女も私に笑みを返しながらあげかけていた手をあげました。するとただでさえ白かった部屋がさらに白くなっていき、気がついたときには私は気を失っていました。
かなりぶっとんだ展開になってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。
これでも最初に考えた内容よりも控えめになっているところが恐ろしいところ。
次話は
京(私の方)視点か、健吾視点のどちらかになります。
ならなかった方がその次の話になりますので、
もしどちらから見たいというのがあれば。




