84話 デート
好みドストライクの小説を読むと、すごく作成意欲が上がりますよね。
まぁ、私の文章力が低いのもあって、文章を書こうにも中々文章がまとまらないですが……(・ω・`)
「……何やってるんだろうな、俺」
俺は塀にもたれながらそんなことを呟いていた。
今日は昨日都さん経由で約束した京とのデートの日なのだが……
「さすがに8時はないよなぁ……」
しっかりと今の京に合わせたデートプランも考えたさ。寝坊して遅くなってしまわないように、いつもより早く寝たさ。ただ、8時はねぇだろ、俺……。
さすがにこの時間にチャイムを鳴らすわけにもいかず、俺は何度目かもわからない溜息をついた。時間を調整するために家に帰ったのなら、親に何を言われるかもわからねぇしな……。ただでさえいつもより気合を入れていることに、家を出るときに散々からかわれた後だってのに。
……仕方ない、適当に時間を潰してくるか。喫茶店で2・3時間くらい時間潰してから戻ってくれば丁度いいだろ。そう思考をまとめた俺は、もたれていた塀から体を離し、桝岡さんの喫茶店にでも――それはそれでまたからかわれそうだが――向かおうと歩き出そうとしたところで、
「あれ?健吾さん?」
後ろからそう呼び止められたのであった。
…………
……
「半分冗談のつもりだったけど、まさか本当にいるとはね」
京に呼び止められ、そのまま家の中に招待された俺は、都さんに「もしかしたらもう来ているかもしれないから見てきてと京に頼んだら、本当にいたのね」と呆れが混ざったような笑いで出迎えられてしまった。それに俺は
「こんなに早くからお邪魔してしまってすみません」
素直に頭を下げたのであった。
「いやいや、責めているわけじゃないから安心して。むしろ早く来てもらえて感謝してるくらいよ」
だが、返ってきた言葉が感謝だった。どうして感謝されたのかがわからず、困惑していると、
「この時間だとまだ修矢が寝ているのよ。あの子休日だと10時を過ぎないと起きてこなくてね。いつもならぐーたら寝ているならさっさと起きて家の掃除とか手伝ってほしいのだけど、今日に限っては助かったわ」
そう補足してくれたんだ。確かに修矢さんに会ったら何を言われるかわからないもんな……。昨日都さんが説得して昨日のような態度は取らないようにはしてくれたようだが、ただそれだけなような気もするし……。
そんなことを考えていると、
「……わかってくれたようね。健吾君が察したように、昨日の態度は取らないわ。でもね、絶対不躾な視線を向けてくるはずよ。そんな視線に送り出されてるのがデートの始まりは嫌でしょ?」
「……そうですね」
都さんが少し茶目っ気を出しながらそう言ってきたんだ。だから俺も苦笑しながらそう返していると、
「え?え?デ、デート……ですか?わ、私と健吾さんが……?」
京から素っ頓狂な声が上がったんだ。それに都さんは
「えぇ、そうよ?男の子と女の子が2人きりで出かけるのよ?これをデートと言わないで何をデートというのよ」
しれっとそう返すと、京はみるみる顔を赤くして、
「わ、私着替えてきます!!」
その言葉を残して部屋を出て行ったんだ。あの反応からして、俺とデートをすること自体は嫌というわけではなさそうだな……。一緒に出掛けるだけならまだしも、デートってことなら嫌だと言われたらどうしようかと思ったが、杞憂に終わったみたいだ。
デートということが発覚しても断られなかったことにホッとしていると、京と俺の様子を見ていた都さんが笑いながら、
「2人とも気にしすぎよ。京の服も元々デートを意識した服装にしていたのに。健吾君も健吾君で、記憶はなくなったとしても、京は京よ?貴方の誘いを断るわけがないでしょ?」
そう俺に言った後、「それじゃあ、私は京を手伝ってくるから、少しだけ待っていてね」と言いながら都さんも京を追うように部屋を出て行った。
出て行った扉を眺めながら、都さんが言った言葉を思い出していたんだが、都さんが京なら俺の誘いを断るわけがないって言った意味はどういう意味なんだろうか?それはあいつが俺に好意を……って、それはないよなぁ。あいつは元々男だし、お互いにあの女子可愛いとかどうとかの話もしていたし。まぁ、俺としては京矢には悪いが、出来れば京のままでいてほしいが……。それはともかく、京の意思を尊重するならば、友達でって意味だよな。いや、でも精神は身体に寄っていくっていうのも何かで読んだこともあるし、もしかしたら……。いやいや、さすがにそれは……。
都さんの言った言葉の意味ついて、1人悶々としていると、
「お、お待たせしました……」
そっと扉が少しだけ開き、そこから京が顔だけを覗かしてきたんだ。そこで俺は慌てて思考を中断して、
「い、いや。全然待っていないから大丈夫だ。それよりも、どうしたんだ?」
部屋に入ってこようとせず、俺の様子を窺うような態度に怪訝に思った俺はそう尋ねたんだ。すると、
「お、お母さんにも大丈夫と言ってもらえたのですが、本当に私にこの服が似合っているかどうかが不安で……」
おずおずとそう言ってきたんだ。京に似合わない服なんてあるはずがないのにな。さすがにそんなことは恥ずかしくて直接言える気がしないが、一先ず京を安心させるような言葉を伝えようと口を開いたところで、
「ほら、結局は見せるんだから。さっさと見せちゃいなさい」
痺れを切らした都さんに背中を押される形で京は部屋へと入ってきたんだ。少しバランスを崩しながら入ってくる京の服装を見た俺は軽く目を見開いてしまった。なぜなら、今の京の服装は奇しくもゴールデンウィークのときと同じ格好だったんだ。
ただ、同じ人で同じ服だとしても、本人の雰囲気でここまで印象が変わるものなのか……。
記憶にある京との違いすぎる雰囲気に、思わず見惚れていると、
「や、やっぱり変……でしょうか?」
京は服の端を軽く引っ張りながら、俺にそう聞いてきたんだ。そこで、はっと我に返った俺は勢いよく顔を左右に振った後、
「そ、そんなことない!!と、とても似合っていると思うぜ」
面と向かってそう伝えた後、気恥ずかしさが勝ってしまい、思わず顔を横に向けると、丁度顔を向けた方にいた都さんがニヤニヤしながら、
「夏にはその服は暑いって言っても、京がどうしてもその服がいいって言っていたのよ。どうして何でしょうねぇ?」
そう言ってきてんだ。これはあれか?ゴールデンウィークのときに褒めたことが、記憶は残っていなくても潜在的なところには残っていたってことでいいのか……?
「お、お母さん!!それは言わないでってお願いしたのに……。えっとですね?ただ、健吾さんとその……デートをするならこの服がいいなと思ったんです……」
京も京で、顔を真っ赤にしながら、都さんに抗議の声をあげていた。そして、俺には最後は消え入るような声だったがそう言ってくれたんだ。これは俺の勘違いってわけじゃないよな……?それが例え自惚れであったとしても、似合っていると伝えたことが京の中に残っていてくれた嬉しさと恥ずかしさに自身の顔が赤くなっていることを自覚して、何も言えずにいると、
「おほほ。それでは邪魔者でここで消えるわね。あとはお若い2人でごゆっくり。ただ、余りゆっくりしすぎると修矢が起きてくるから、そこは気をつけてね」
都さんがわざとらしくおほほと言いながら、部屋を出て行ったんだ。残された俺たちは顔を見合わせ、お互いに顔を未だに赤くしながらも、確かに修矢さんと遭遇すると面倒だと思い、逃げるように熱海家を出たのであった。




