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神様によるペナルティ  作者: ずごろん
第三章 夏休み編
108/217

79話 悪夢の始まり④

今回もまた2週間空いてしまい、すみません(・ω・`)

暗い話がずっと続くのもどうかと思って、書き切ろうとした結果がこれです……。


多少暴力的な表現があります。

苦手は方は注意していただけると幸いです。

「さて、どうしますか?大人しく投降していただけると手間が省けるのですが?」


僕と健吾の近くまで真琴と小野君が下がってきたのを確認した海老菜さんがそう言ってきたんだ。その言葉に


「この程度で投降なんかしないわよ!!」

「せや!この程度余裕や余裕!!」


真琴と小野君がそう返していたんだ。すると


「そう。残念ですわ。こちらの提案を受けていただけたのならば、多少の約束(・・)はさせてもらいますが、大人しくお返しするつもりだったのですが……」


海老菜さんはやれやれと肩をすくめがら言うと、


「こうなってしまっては仕方がありませんわ。それでは皆さん少しお灸を添えてあげてください」


満面の笑みを向けながらそう宣言してきたのであった。


その言葉を待ってましたとばかりに僕たちの方へ新たに出てきた人たちが突っ込んできたんだ。すると真琴が


「中山君!ここはあたしと小野が突っ込むから、あんたは京を死守しなさい!」


って健吾に向かって言ったんだ。それに対して健吾が


「さすがにあの人数は無理だろ!俺も一緒に……」


すぐに加勢するように言い返そうとしていたんだけど、


「あほか!あいつらの狙いは熱海やろ!これは攻める戦いやない!守る戦いや!そんくらいわかれや!!」

「小野の言うと通りよ!あたしたちはもう一回京が人質に取られたら負けなんだから、しっかり守ってなさい!」


途中で小野君に遮られ、重ねるようにも真琴に言われていたんだ。

確かに今の僕は完全にお荷物だもんね……。いや、今のように手を縛られていなくてもこんな状況になったら何も出来ないけど……。

2人にそう言われて、前に出たくても僕のために前に出られないからか、体をそわそわさせながら2人を見守っている健吾や僕のために前に出てくれている真琴や小野君には悪いんだけど、僕としては健吾が近くにいてくれた方が安心できるというかなんというか……。い、いや、別に深い意味はないからね?ほんとだからね?


…………

……


真琴と小野君が奮闘してくれているし、時折2人から抜け出してこっちへ来る人もいたんだけど、その都度健吾が倒してくれてたんだ。だけど、やっぱり戦況は厳しかった。僕がいなければ健吾も真琴と小野君に加勢出来て状況が変わっていたかもしれないけど、未だに僕は手の後ろで拘束されていて動けなくて、健吾にはずしてもらおうにも、そんな余裕がないんだ……。本当に僕というやつは……。そもそもこんなことになったのは僕のせいだし……。


自分の無力さを感じてしまい、思わず視線を下げていると、ふと頭の上に何かが乗った感覚があったんだ。何事かと思ったら健吾が顔は真琴達が戦っている方に向けたまま、手だけ僕の頭の上にのせてきていたんだ。そして、


「どうせお前のことだから、この状況が自分のせいだとか思っているんだろ?そんなことは決してないから安心しろ。悪いのはあいつらだ。それでも不安だったり怖かったりするんだったら目を瞑っていろ。その間には終わっているさ」


僕にそう言ってくれたんだ。その瞬間、また(・・)僕の心臓がドクンと大きく跳ねたんだ。さっき、そう、健吾が『助けに来た』って言ってくれたときと同じように再び心臓がドクンと大きく跳ねたんだ。健吾が来て安心しただけなはずなのに、どうして僕の心臓は落ち着くどころか、むしろ破裂してしまうのではないかってくらいの鼓動をしているんだろう?健吾に触れられているところから、この心臓の音が健吾に伝わらないかが不安で仕方がないよ……。


そんなことを考えながら健吾を見ていると、健吾の手が僕の頭から離れたんだ。思わず声が出そうになったんだけど、声が出る前に真琴と小野君相手から抜け出して僕たちの方へ向かってくる人が見えたんだ。だから僕は出そうになった声を無理やり抑え込んでいると、


「今度は2人か……。普通に考えてこのペースで、この人数しか通してこない篠宮さんと小野がすごいんだが……。行ってくる」


健吾は最後の言葉だけ僕に向けて言った後、そのままこちらへ向かってきている2人の方へと向かっていったのであった。


…………

……


「くそっ……」


さっきまで健吾が2人を何とかいなしていたんだけど、そこにさらに1人、僕たちの方へと向かってきたんだ。それにすぐ気づいた健吾は悪態をつくながら対応しようとしていたんだけど……、


「よそ見してんじゃねぇよ!」


「ぐっ……」


視線を逸らした隙を突かれてしまった健吾は思いっきりお腹を殴られていたんだ。それを見た僕は


「健吾……っ!!」


思わず健吾の名前を呼んでいたんだ。真琴や小野君とは違って健吾は喧嘩が強いというわけでもないのに……っ!なのに健吾はすぐに立ち上がって、


「だ、大丈夫だ。心配しなくていい。俺が守ってやるから」


僕にそんな言葉を言ってくれたんだ。だけど、やっぱり体にはダメージが残っていたみたいで、僕が見てもわかるくらいに動きが遅くなっていた。そして、元々2人でもギリギリだったのに、3人に増えてしまったせいで健吾は組み伏せられてしまったんだ。

健吾は何とか拘束から逃れようとしているんだけど、2人がかりで抑えられているから動くことが出来なくて、残ったもう1人が僕の方へとゆっくりと歩いてきたんだ。


「ふぅ。これであそこで暴れてる2人組も大人しくなるだろ」


そう言いながら僕の所まできた後、


「おい!お前ら大人しくしろ!!」


と大声で真琴達の方に向かって言ったんだ。

そのことで僕たちの状況が真琴達にも伝わったみたいで、


「くっ……」

「ちっ……」


2人は悪態をついていたんだけど、抵抗することも出来ずに2人とも手を後ろで掴まれてしまったんだ。すると、この状況を待っていたとばかりに、


「ほら、やっぱりこうなったではないですか。だから聞いたんですわよ?大人しく投降しますかって?ヒヒヒ……」


いつの間にか後ろへと下がっていた海老菜さんが前へと出てきて、震える肩を手で抑えるようなポーズを取りながらそう言ってきたんだ。その後、肩においていた手を下ろしてから


「これでも驚いているんですわよ?まさか半数以上無力化されるとは思いもしませんでした。こいつらは本当に無能ですわねぇ。後でしっかりと教育が……っと、今はそんなことを言っているときではありませんわ……」


と独り言のように呟きながら僕たちの方を見てきたんだけど、丁度海老菜さんと目線があったときに、思わずビクッとしちゃったんだ。すると海老菜さんは


「さて、熱海京、どんな気持ちでしょうか?今のこの状況を作りだしたのは、他ならぬ貴女ですわよ?すべて貴女のせいなのです。それなのに、ただ傍観しているだけという……。私ならば余りの惨めさで死にたくなりますが、貴女はどうなのでしょうか?」


僕の方に笑みを浮かべながらそう言ってきたんだ。海老菜さんの言い方はあれだけど、確かにこんな状況になったのは僕のせいだもんね……。僕の……。

後悔先に立たずというけれど、軽率な行動の結果がこの現状を招いているんだもんね……。

何で僕は人のことをちゃんと聞けないのだろうと後悔していると、


「京。大丈夫よ」


真琴が僕にそう言ってきたんだ。


「大丈夫なわけないじゃない!!僕のせいで……」


だけど、|僕を安心させるためだけ《・・・・・・・・・・・》の言葉を言われたってうれしくない僕は思わず大声でそう返したんだ。それでも真琴は


「信じなさい。大丈夫よ」


と返してきたんだ。それにもう一度反論しようとしたんだけど、その前に


「ヒ、ヒヒ……。何が大丈夫なのか教えていただきたいですわ。貴女たちからすれば、この状況はまさしく絶望的な状況!一体どうやって覆すつもりなのか私に教えてくださいませ?」


海老菜さんが口をはさんできたんだ。すると真琴は


「あら?簡単よ?こうするの……よっ!!」


と言って、真琴は強引に掴まれていた手を振り払い、その勢いのまま自分を掴んでいた人を蹴り飛ばしていたんだ。小野君も示し合わしたかのように同じ行動をしていたものだから、それには海老菜さんもビックリしたみたいで、


「な、なにをしているんですの!?この状況がわかっていないんですの!?こちらには人質がいるんですわよ!?」


と真琴に言っていたんだ。だけど、


「人質?どこにいるのかしら?」


と満面の笑みを浮かべて返していたんだ。その真琴の態度に激情した海老菜さんが


「そこまで言うのなら、どうなっても知りませんわよ!!さぁ、やってくださ……い……ませ?」


僕と健吾を捕まえていた人たちに向かってそう言っていたんだけど、その人たちはすでに気絶していたんだ。そのことに、


「どういうことですの!?どういうことですのっ!?」


海老菜さんは頭を掻きむしりながらそう叫んでいたんだ――そう、真琴が海老菜さんたちの注意を引いた一瞬の隙をついて、僕たちは助け出されていたんだ。


「うふふ。ヒーローっていうのは遅れて登場するものなのよ?」

「ボクたちはヒーローって柄じゃないッスけどね……」


丁度真琴と小野君が自分を捕まえていた人を蹴り飛ばしたのと同時に空元君が僕の近くにいた人に体当たりを仕掛けたんだ。それに気付いた健吾を抑えていた2人が空元君の方を見て、その隙に村居さんがその2人を気絶させたんだ。そして、その勢いのまま、空元君が体当たりで押し倒した人も気絶させていたんだ。抑えつけられていた人が気絶したことにより解放された健吾が立ち上がったところで、海老菜さんがこっちの状況に気付いたって感じなんだ。

こっちでそんなことが起こったなんて知らない海老菜さんは


「貴方たちはなんなんですの!?どこから来たんですの!?どうやってこの場所を突き止めたんですのっ!!?」


村居さんたちの方に指を突き立てて、そう叫んでいたんだ。


「あら?人に指を指してはいけないって親に習わなかったのかしら?いつもなら指導してあげるのだけど、今はそんなことしてる場合ではないから、質問に答えてあげると、いつから京さんを追いかけているのが3人だと思っていたのかしら?それに、ここまで案内してくれた人だっているのよ?そんなこともわからないなんて、リサーチが足りないんじゃないかしら?」


だけど村居さんはただ淡々と返し、そのことに海老菜さんは一瞬言葉を詰まらせていたんだけど、


「ふ、ふん。たかが2人増えただけでこの状況を覆せると思ったら大間違いですわ!まだこちらには手駒はありましてよ!?」


そう言って、あの時と同じように指を鳴らそうとしていたんだけど、


「鳴らしてもいいが、おそらく無駄じゃと思うぞ?」


と全く別方向から声が聞こえてきたんだ。


声がした方こうに向くと、勇輝君が気絶した男の人を引きずりながら僕たちの方へと歩いてきていたんだ。


それをみた海老菜さんは「なっ……、なっ……」と言葉を漏らしていたけど、勇輝君もそれには取り合わず、


「偉そうに言っておったが、こいつ1人だけじゃろ?こいつがいた所にあったもので大勢いるように見せるつもりだったんじゃろうが、無駄に終わってしまったのぅ」


何事もなにようにそう返していたんだけど、恐らく最後の手札であったのであろうものが封じられてしまった海老菜さんは硬直したまま動かなくなったんだ。その様子を見た真琴が、


「どうやらこれでネタ切れみたいね。それじゃあ、さっさと終わらせてしまいましょう?」


と言った言葉を合図にみんなが再び動き始めたのであった。


…………

……


「ふぅ。これで一段落かしらね」


あれから、海老菜さん側も抵抗していたんだけど、真琴たちがほぼ一方的に無効化していっていたんだ。人数が増えたと言ってもまだこっちの倍以上の人がいたはずなのにね……。それで、全員気絶させた後、未だに硬直したままの海老菜さんも気絶させたんだ。それから全員の無事を確認した真琴が手をパンパンと叩きながらそう言った後、


「それじゃあ、中山君。さっさと京を縛っているものを解いてあげなさい?」


って健吾に言ったんだ。それに健吾はなぜか少しばつが悪いときにする、頭の後ろをかく動作をしてから、


「そうだな。みんなすまない。それじゃあ京、もう少し我慢していてくれ」


僕へそう言いながら僕の後ろへと回り、僕の手を縛っているものを解き始めたんだ。それで、それほど時間も経たない間に


「これでよしだ。思っていたより雑な縛り方で助かったぜ」


解き終わった健吾はそう言いながら立ち上り、僕へと手を伸ばしてきて、


「京、立てるか?」


僕もその手を取ろうと手を伸ばし……「がっ!?」…………え?


「へ、へへ。ざまぁねぇじゃん?調子に乗るからこう……ぐぎゃぁ!?」


「え……?健……吾……?」


今……何が起きたの……?今健吾が僕の手を縛っていたものをはずしてくれて、僕が立ち上がるのに手を貸そうとしてくれていただけだよね?ほんの少し前も少し服の乱れとかはあったけど、元気に立っていたよね?


「なん……で……?」


なのにどうして健吾は倒れているの……?


「どうし……て……?」


どうして健吾が血を流していて、その横には血の付いた金属バットが転がっているの……?

周りで何かの音が聞こえ気がするけれど、そんなことには気にも留めずに僕はすぐに健吾の元へと駆け寄り、


「ね、ねぇ?健吾?起きてよ?寝てるふりなんでしょ?冗談なんでしょ?」


健吾の身体を揺らしながらそう聞いたんだ。だけど、健吾は全然返事してくれなかった。


「冗談なんでしょ?ほら?今なら怒らないからさ?ね?起きてよ……?ね……?」


きっと身体を揺らしたから起きないののだろうと、今度は頭の方を揺らそうと頭に手を当てたところで、何か(・・)に後ろから捕まってしまい、健吾から離されてしまったんだ。それでも僕は健吾に少しでも近づこうと手を伸ばしたんだけど、僕の手は空をつかむだけだった。


「健吾……健吾……あぁ……」


どうしてこうなってしまったんだろう……。ただみんなと旅行を楽しんでいただけなのに……。なのにどうして健吾は頭から血を流しているんだろう……?何で健吾はピクリとも動いてくれないんだろう……?


誰かにバットで頭を殴られたから……?海老菜さんがこんなことを企てたから……?


そんな考えが一瞬頭を(よぎ)ったのだけど、前へと伸ばした自分の手にべったりとついていた健吾の血を見た僕は察してしまったんだ。


いや、そうじゃないんだ。全て僕のせいなんだ。僕が青木君(よく知らない人)を信じてしまったからいけないんだ。僕がみんなの言うことを聞こうとしないで、1人になってしまったからいけないんだ。僕がいけないんだ……。僕のせいで健吾は目を覚まさないんだ。僕のせいで健吾が……。()の……せいで――


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


その叫び声が自分で出した声だとは気づかないまま()は意識を手放した――。

少し展開が駆け足すぎましたかね……?


基本一人称視点にしていると、このような状況のときの表現の仕方が難しいですね……(・ω・`)

淡々と書いてしまいますと、冷静すぎることになってしまいますし、逆にパニック状態になっていたら状況がわからないことになりそうですしね。

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