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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第59話 優勝賞品を貰いに行ったはずが困惑なのだが配信

 ----どうも、皆さん。

 ----「優勝にはなったんだけど、とりあえずもう1回ポーションを作り直してくれない?」と提案され、かなり困惑気味の錬金術師ススリアです。


 なにそれ、どうゆう事?


 詳しく話を聞いてみたところ、どうやら子供審査員達が私の作った改良ポーションをものすごーく気に入ってくれたらしく、その時点で"子供でも飲めるポーション"というお題は私の勝ちで、優勝決定。

 しかしながら、大人たちは飲んでいないので、ちゃんとした評価が出来てないのでもう一度作り直して欲しい、との事。


 まぁ、1回作るのも、2回作るのもそんなに変わらないかーくらいで、了承。

 既に脳内に作り方はあるので、秒で作って提出した結果----


「すまないねぇ、ススリアさん」


 ぺこりっと、偉い立場にも関わらず、さっと頭を下げるスピリッツ組合長。

 それに対して優勝賞品であるドラゴンの卵を貰っている私は、「気にしてませんよ」と答える。


「いやいや、これに関しては悪いのはこちらだから。----反省したか、2人とも?」


 ----と、スピリッツ組合長は部屋の奥を見る。

 


「むーっ!!」

「むむむーっ!!」



 部屋の奥には、天井から吊るされている芋虫----もとい、芋虫のように全身を糸で動けないように巻かれている錬金術師チョウゴ、そしてゼニスキー組合長の姿があった。

 

「反省は……まだしてないようだな、2人とも」

「びっくりしましたね、本当に」


 いやぁ、本当に驚いた。驚いた。

 炭酸入りポーションを提出して審査するやいなや、「この炭酸の技術について奥でじっくりと!」と錬金術師チョウゴが、「是非、一緒に売り出しましょう!」とゼニスキー組合長が、それぞれ私に迫って来たのだ。


「済まないねぇ、うちの錬金バカ(チョウゴ)商売狂い(ゼニスキー)が迷惑をかけて……」

「いえいえ、ほんとうに、大丈夫なんで」


 そう、このスピリッツ組合長のおかげで、大丈夫だった。

 この顔に傷跡がある、いかにも歴戦の戦士といった風貌の大男であるスピリッツ組合長は、元冒険者、それも【暗殺者】というトラップ技術に長けた男。

 彼の、目にも止まらぬ糸さばきでぐるぐる巻きにされたので、私には被害がないので問題なし!


「私としても、君のポーションには驚いたよ。まさか、泡で新食感を与える事で、飲みやすくするとは。おかげでそこまで味に違和感を感じずに済んだのが大きかったね」

「あの泡には、ハジける感覚と共に、甘みもありますからね」


 と、ここで私は、スピリッツ組合長に炭酸の原理を説明。

 まぁ、彼にも分かるように、簡単に、だが。


「----ふむ。薬効に影響を与えないように、泡の中に甘みを凝縮。ポーションの苦みを感じる前に、泡の中の甘みを口いっぱいに広げるという感じか」

「そうですね。めちゃくちゃ苦くても、それ以上に砂糖とかで甘く感じれば、良いかなぁって」


 ポーションの苦みは抑えられない。

 なので、ポーションの苦みよりも、もっと強い甘みを炭酸の泡の中に閉じ込め、飲むと共に甘みをより強く感じるように細工したのである。

 これならポーションの味はあまり印象に残らず、泡の中に閉じ込める事で薬効への影響を限界まで抑えることが出来た。


「まぁ、欠点としてはかなり糖分を摂取する事になるので、太りやすくなりますがね」

「ガーハッハハハ! そのくらいは仕方あるまい! なぁに、ポーションを使うのは主に冒険者、身体が資本の彼らなら運動で----」



「えぇ! それが味噌、大事、重要なのです!」



 バンッと、糸を口で噛み切って、ゼニスキー組合長がいきなり話に割り込んできた。


「ただ飲み物に、空気の泡を送り込むのだけの発明にあらず! その本質は、飲み物の中から味を変える事! 健康の観点から食べた方が良い、飲んだ方が良いと言われていたモノに、炭酸で新たな味と食感を加える事で、今まで食べてなかった食品の売り込みに繋がる!

 傷薬(ポーション)果実飲料水(ジュース)麦酒(エール)! 飲料業界に炭酸で革命を起こせば、同時にその飲料と一緒に頼まれる事になる食べ物の改良も出来る! 実に素晴らしい! それは革命的な魔道具! 是非、この私と商売の提携を願いたくっ!」


 ----うわぁ、びっくりだ。

 まさか、あのように簀巻(すま)きにされた状態で商売交渉されるだなんて、思いもしませんでしたよ。


「いや、実はですね……」

「調査しているので、既に知っていますよ。共和国のドラスト商会との契約があるんでしょう? 確かに契約には彼ら商会の助けが必要でしょうが、その前段階として交渉するくらいは別に----」


 「おいおい、あれS級の魔物でも封じる糸のはずだが……」とスピリッツ組合長が驚くくらい、ゼニスキー組合長はその熱意だけで、糸を引きちぎろうとしていた。

 ちなみにあの組合長、完全なインドア派で冒険に出た経験はないらしく、単なる気合いで元冒険者、それも一流のスピリッツ組合長の糸を千切ろうとしているのだそう。


「さぁ、一度、きちんと話し合いましょう!」

「そうはいきません、ニャアぁ」


 どう断ろうか迷っていると、バンっと扉を開けて入って来る人影。


「王都で大会に出るとお聞きしたため、帰りの乗り物代わりに我らがドラゴンをお使いになればと思って見れば……まさか、同業者から引き抜きを受けていようとは、困ったモノです、ニャア」


 入って来た人影----ドラスト商会のスコティッシュさんは、簀巻(すま)きになっているゼニスキー組合長に声をかける。


「商工組合(ギルド)の長、ゼニスキー。噂以上に強欲な商人だ、ニャア」

「ドラスト商会でも一、二を争う商人、猫獣人のスコティッシュ。えぇ、是非話したいと思っていた頃----これからの話について、一度、お互いに語り合いましょう」


「「ふふふっ!!」」


 うわっ、怖っ!!


 なんか一戦即発の空気を感じた私は、スピリッツ組合長に礼を言うと、その部屋をあとにした。


 ……うん、スコティッシュさんには、話が落ち着いてから送ってもらおう。

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