第456話 ススリア、手掛かりを得る配信
全身に包帯を巻いた大男。その者は、包帯を使って、こちらをグルグル巻きにして動けないようにして来た。
氷で出来たバケモノ。その者は、氷の息を吐き、こちらを氷漬けにして動けないようにしようとして来た。
薬品をバラまく、戦車部隊。その者は、薬品のシャワーを砲身から発射して、生きたまま彫像にしようとして来た。
そのどれもが、群れとなってこちらに攻め込んできていた。
そのどれもが、群れとなってバンブーエルフ達を襲っていた。
そのどれもが、倒しても倒しても、どこからか湧いて出て来る。
私は、バンブーエルフ達を救うため、これらのバケモノに戦いを挑んだ。こいつらの強さはさして強いという訳ではなかった。しかしながら、こいつらの攻撃は敵を倒すという事よりも、『敵を無力化する』、『動けなくする』という事に特化しているため、うっかり一撃でも貰ってしまうと、それだけでもダメだ。それくらい、バケモノ達は厄介だったのだ。
そして、なんでそんな特化すぎる性能になったのかについては、バケモノ達を倒して、それからバンブーエルフ達を救って逃げてから判明した。
――こいつらは、異様に回復能力が高いのだ。
例えるなら、骨が折れ、大量の血が流れて、他の種族であたら全治数か月はかかりそうな傷であろうとも、僅か数分のうちに傷が治癒っていくのである。
もはや異能としか思えないレベルなのだが、それが通常で備わっているのが、バンブーエルフ達という種族なのである。
なるほど、異常としか思えないような回復能力。案外、ピエームちゃんが快感のブラッドによる契約によって倒れた後に復活できたのは、私が頑張ったからと思っていたが、この異様な回復能力もりゆうの1つだったのかもしれない。
しかしながら、回復能力が高いだけだ。
走る分にはなんら問題ない。山歩きで慣れていると、彼らはそう言っていたけれども。
体力に関してはそう言う感じで問題はないのだが、戦力にはなりそうにない。武術や魔術など戦う力があるとかではなく、単純に気合いがないのだ。まぁ、隠れ里に住んでいるような連中に、戦闘バカみたいな戦闘意欲を期待するだけ無駄という感じだろう。
バンブーエルフの皆様に、状況を聞いた。
聞いたけれども、ほとんどは私と一緒だった。いつの間にか、この逃げられない、謎の空間に閉じ込められて、かれこれ3日くらい逃げ惑い続けているんだとか。
幸いなことに、食料に関してはバケモノと同じように無限湧きしているらしく、それを食べようとしては捕まったりしながら、何とか生き延びている感じなんだと。
そして、1つだけ。
私とは明らかに違う点が、バンブーエルフ達から聞けた。
「女?」
「えぇ。その女は、まるで竹かと思うくらい背が高い女でした」
そう話すバンブーエルフは、あそこら辺と、1本の竹を指差す。
あそこまでとなると……軽く3mはありそうだ。確かに背が高いと言えよう。
「その女がパンパンと手を叩くと、酷い耳鳴りがしたのです。村中に響くような、物凄く甲高い音でした」
「その音を聞いた後は?」
「私達はうるさいなと思って、ふと気づいたらこの世界に来ておりました」
なるほど。つまり、その背の高い女が、この謎現象を始めたという訳か。
「ちなみにだけど、その女がいた場所って、どこか分かりますか?」
私がそう聞くと、バンブーエルフ達は顔を見合わせた。
「確か、村の中央あたりだったような……」
「そう言えば、あの日、新しい竹祭りをしようとしてなかった?」
「そうだ、竹祭り! 竹で作った、神輿が傍にあった!」
「それだけ聞ければ十分です。ありがとう」
バンブーエルフ達の話から、その背の高い女が立っていた場所が分かった。恐らくだけど、その位置がこの謎現象の中心地点――この現象の核となる場所だ。
魔術であっても、魔道具であっても、どんなモノであったとしても、こういう風に空間を生み出す場合、その中央地点にモノをおいて展開するのが定石となってくる。
この謎現象世界、もしかするとその場所に行けば解除できるかもしれない。
少なくとも、何も手掛かりがないという状況からして見れば、何かしらあると考えて、動いてみた方が良さそう。
私はそう言って、バンブーエルフ達と分かれて、その場所に向かおうとするのだが――
「「「「おっ、おいてかないで!」」」」
ガシッと、縋りつくような感じで私の服を掴んで来たので、仕方なく彼らも一緒になって、その場所に向かう事となった。
一応、バケモノ達を見ても騒がず、慌てず、落ち着いて行動をとるようにお願いしておいた。あのバケモノ達はどいつも能力が特化すぎるだけで、索敵能力はかなり低いと見た。大声を出さなければ、背後をススっと通っても大丈夫でしょう。
だからこそ、落ち着いて行動するように頼んだのですが――
『グォォォォォォンンンン!』
「「「「ぎゃあああああああああああああ!!」」」」
「あぁ、もう! 騒がないでって、お願いしたばっかりなのに!」
……ススリアです。面倒な重りを付けられた気分です。
一番の敵は、無能な味方
それは歴史から見ても、証明されている
ほんとう、こればっかりは
どの世界でも共通項だと思います(;^ω^)




