第417話 弟子たちと合宿修行する配信(Side:ワット)
~~ワット店 レガリス~~
妾が放った密偵の報告により、ジュールの店が3週間の長期休業、さらには従業員全員と共に料理合宿をする事を突き止めた。
「ふむ、妾達とはやり方が全く違うようですなぁ」
妾達、ワットさんを店長としている私達は、ジュールの店とは違って、私を始めとした代表選手5人とワットさん――――選ばれた6人のみで、大会に向けて調整を行っていた。
ワットさんは大会運営ルールをしっかりと確認すると、「なるほど」と頷いていた。
「ワットさん、ルールの確認していたようですが……何かあったんですか?」
「このルールを確認していたのです。不確実ではない、正しいルールを知っておかないといけないなと思いますので」
妾の問いに、ワットさんはルールの一文を指で指し示しながら、そう答える。
【・食材は用意されたモノを使用します。
※なお、食材の持ち込みはお肉のみ可能です】
それは、この大会が肉料理で対決するからこそのルールだ。
当然ながら、普通のお肉は野菜や果物などと同じく、錬金術師ススリアが用意しており、最悪、食材を持って行かなくても大丈夫だとも、記載されていた。
「お肉の持ち込み可能、そういう文章でありんすよね? もしかして、貴重なお肉を用意して、料理大会で無双するという話をしてはる?」
「無双する、無双しないかは別として、準備をしっかりとしませんと」
ワットさんは「お肉には加工品というモノがあります」と、妾達にそう話し始める。
「ハム、ベーコン、ソーセージ。お肉を美味しく加工したモノは、色々とあります。
ただでさえ美味しいお肉を、さらに美味しくするために加工すれば、良いモノとなります。時間の節約にも繋がりますし」
ワットさんの提案。それは料理大会に備えて、美味しいハムやベーコンなどを予め作っておこうという案であった。
「なるほど! ハム、ベーコン、ソーセージなどのお肉加工品で、差をつけるでありんすか!」
「えぇ。料理としてのレパートリーを増やすのもアリですが、同時に食材としての差をつけるのもアリではないかと。特に燻製はいくらでもこだわる事が出来ますので」
ワットさん曰く。
燻製とは、お肉に木材の煙を付けるなどして、お肉に味をつける方法なんだとか。妾もそういう技術があるという事しか知らなんだが、ワットさん曰く、燻製は奥が深いんだとか。
100℃前後の高温で短時間――30分から1時間程度――で燻す、熱燻。
60~80℃の中温で数時間から半日ほどかけて、じっくり燻す、温燻。
15~30℃の低温で、長時間――半日以上――かけて燻す、冷燻。
ワットさんを作った製作者ススリアが、燻製するのに特化した燻製専用の魔道具を作っているらしい。それを使えば、妾達のハムやベーコンなどの肉加工品が、一段階上のモノが出来るから、できたら借りて来てほしいとの事だった。
「そうでありんすな! 同じ料理、調理法であろうとも、食材の価値で差が出てしまう事もありんすし! そうとなれば――――」
妾は早速、料理店に残していたチームの一部に連絡を取る。
料理店から何名かこちらにやって来てもらい、ハムやベーコンなどの加工事業に応援を求めるのだ。錬金術師ススリアと連絡を取って、その燻製用の魔道具を借りる事も忘れないようにお願いしておいた。
「では、ワットさん! 他に、向こうのチームに勝つアイデアはありんすか?! 妾、なんでもするでありんすよ!」
「……なんでも?」
「えぇ! 全ては、ワットさんの料理を、洋食を広めるためでありんす! そのためなら、妾はなんであろうとも、する覚悟でありんす!」
ふんすっと、鼻息荒くして妾の覚悟を示すと、ワットさんは「なるほど」と、納得していた。
「「「「私達からもお願いします!」」」」
他の4名の選手もそう言うと、ワットさんは納得されて、私達に色々な肉料理について教えてくれました。
鹿肉や猪肉などを使うジビエ料理、ハムを使ったサラダ料理、ベーコンやソーセージを使ったスープ料理など、様々な事を妾達に教えてくれました。
こうして3週間の間、妾達は合宿にて、料理のスキルアップをして。
肉料理大会の日が、やって来た――――。
(※)燻製
肉や魚、チーズなどの食材を木製のチップで燻す事によって、長期保存や、独特な風味や香りを付ける事が出来る。今回の肉料理大会において、ワットの料理店チームは肉加工品であるハムやベーコン、ソーセージなどを主軸とした料理展開を考えているため、錬金術師ススリアに燻製用の魔道具を借りに向かった
大会として出場するレガリスを含めた5人は料理に集中し、燻製加工チーム10人が張り切って、様々な燻製肉加工品を作り上げて、貢献した
(※)ジビエ料理
鹿や猪など、狩猟で捕獲される野生動物を用いて行われる料理。この世界においては、魔物を使った料理も、大概的にはこのジビエ料理に該当する
ワットは、どんな肉でも適切な処置をすれば食べられるため、そのための技術と心構えを弟子たちに教えた
ジュールのお店側は、お肉の切り方や焼き方を学ぶ
ワットのお店側は、お肉の加工品であるベーコンやソーセージを
中心に学ぶみたいですね
以前、ススリアが
燻製用の魔道具を作ったのを思い出します(*^-^*)




